3894 件掲載中 月間賞毎月10日発表
この数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。

サンボマスターの花束と初めてその香りを知った花について

花屋に憧れた母が最期に教えてくれたこと

新曲「花束」を聴きました

会いたい人の顔が浮かんできます

そういう方が多いと思います、大事な人に思いを馳せながら聴く曲なのですね

本当の花束を選んでいる時と同じような気持ちになりました

今まで貰った花束の中で、わたしにも鮮明に思い出されるものがいくつかあります

わたしの母は花屋を目指していたことがあるくらいお花が大好きで、ラーメン屋に嫁いでからもよく店に花を飾っていました

レストランに飾ってあるような大きな花束が、油で汚れたカウンター席の隅、タバコの匂いの中でも華やかに咲いていました

それは父が花好きの母のために買ってきたものでした

絵に描いたようなラーメン屋の親父ですが、お祝いの度に決まって花束を贈るのです

花が飾ってあることがわたしにとっての日常でした

そんな母がわたしの結婚式に合わせてブーケを手作りしてくれたことがありました

幼い頃わたしが好きだと言ったガーベラが沢山入ったブーケ

都会の花屋に並ぶような八重咲きやグラデーションのガーベラじゃなくて、田舎の花屋で一生懸命集めたであろうピンクの単色のガーベラが何本も入ったブーケ

昔花屋さんを目指した女の子が、「娘がお嫁に行く時には絶対自分で手作りしてあげるんだ」とずっと心に決めていたかのように丁寧に作られたブーケ

本当に嬉しい花束でした、何枚も写真を撮ったものです

それから何年もしないうち、今度はわたしが母にブーケを贈ることになりました

海外に住んでいたわたしは、その日母にとって初孫となる息子を抱いて飛行機に乗っていました

まだ生まれてひと月の赤ん坊を抱いて、わたしはひとり帰国することになったのです

わたしは急いでいました

母は孫が無事に生まれるまで自分が癌であることを隠していました

久しぶりに会ったその顔は別人のようで、ひと目見ただけでは誰なのか気づかなかったほどに変わってしまっていました

こんな姿でも、メールではいつもの通りに明るく振る舞っていたんだ
自分の体より、妊婦だった私の体の方を気遣って

母になるということはどういうことか、その時にわたしはもう痛いほど分かりました
全て教わったのです、その一瞬で

母に何かを返さなければと思い出したのは、結婚式の時に貰ったあのブーケのことでした

その数日後、母の嫁入り道具の花束用のワイヤーを借りてブーケを作りました

袋には母の読みかけのブーケの本が入っていて、隅っこが折られていたのはあの結婚式のブーケのページでした

もう母が続きを読むことはないのか、嘘みたいだと、全身から力が抜けていくようでした

病室でわたしが見よう見まねで作ったブーケを渡すと、母はそれを嬉しそうに持ち「写真撮って」と言ってくれました

半分も入っていない500mlのペットボトルを「重い…」と言っていた母が、片手でブーケを持ちピースをしました

父の胸ポケットにはブートニアを刺し、病室で父と母の2度目の結婚式をしました

「あたしは誓いのキスまでさせますからね!」私が言うとワハハと照れ臭そうに父が母の頬にキスをしました

みんな笑っているようで、みんな泣いていました

それがわたしから母への最期の花束です

花束のPVにも、天国へ花束を贈りたいと願っている方が多くいらっしゃり、その名前も知らない方々のそれぞれの花束に思いを馳せながら拝見させていただきました

寂しさが薄れていくような感覚でした

そして何よりこの曲が、わたしにぬくもりは取り戻せるんだよと言ってくれている
これから生き続けていくわたしに向けて、サンボマスターがありったけの花を贈ってくれている気がしました

例えその花の名前を知らなくても、道端に咲くすみれが混ざっていても、そんなのお構いなしと言わんばかりのありったけの花束みたいな、そんな素敵な曲でした

母の死後、母が一番好きだったフリージアの花束を買ったことがあります

生前は「なんでこんな地味な花なんか好きなんだろう」と思っていたのですが、買ってみて初めて分かりました、本当にいい匂いのする花なんです

母が空から「ほらね」と言っているような気がして、嬉しくなりました

生きているわたしだけに分かること、そういう愛しいものを抱きしめながら日々を過ごして、いきたいです

  • 投稿作品の情報を、当該著作者の同意なくして転載する行為は著作権侵害にあたります。著作権侵害は犯罪です。
  • 利用規約を必ずご確認ください。
  • ハートの数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。
音楽について書きたい、読みたい