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ジェリーフィッシュが遺した珠玉の楽曲

そして届けられたThe Lickerish Quartetの新曲

年長の知己から「もとジェリーフィッシュの3人が、バンド『リケリッシュカルテット』としての新曲を出したようだよ」と連絡が入った。そのメンバーのなかに、偉大なるドラムボーカル、アンディー・スターマーはいなかった。それでも敬愛するベーシスト、ティム・スミスの名前は含まれていたので、私は楽曲「Lighthouse Spaceship」を聴いた。

その旋律やアレンジは、私にジェリーフィッシュを想起させ、その楽曲をコピーした日々を回想させ、そして、いかにアンディー・スターマーの存在が大きかったかを思わせた(もちろん「Lighthouse Spaceship」にケチをつけるつもりはないけど、やはりアンディーの打ち鳴らすドラムスは独創的だったのだと再認識させられた)。

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ジェリーフィッシュの楽曲を中心に(しかもアマチュアバンドが)セットリストを組み、ライブを敢行したというのは、ずいぶんとチャレンジングなことだったと、あらためて思う。バンドマスターは「お客さんの反応は冷ややかだろうね」と予想し、実際、ほとんどの招待客が(拍手してはくれたものの)声を合わせて歌ってはくれなかった。

それでも後日「ライブを聴いたあとで、ジェリーフィッシュのCDを買ってみたよ」というガールフレンドが(1人ではあるけど)いたので、私はジェリーフィッシュの売上に、かすかな貢献をしたことにはなるかもしれない。

そしてジェリーフィッシュの楽曲が「少数精鋭」というか、少ないながらも輝かしいものばかりだったので、どれを演奏するか選ぶことからして、とても楽しかったのだ。さすがに「全曲をジェリーフィッシュのオリジナルで」というわけにはいかなかったので、我々は次のようなセトリを組んだ(20年近くが経とうというのに、よく覚えているものだ、我ながら)。

1.ラヴ コネクション(Mr.Children)
2.星になれたら(Mr.Children)
(ここまではスリーピースで演奏、3曲目から5人で)
3.ファンクラブに入るなら(ジェリーフィッシュ)
4.セブリナとペーストとプラトンと(ジェリーフィッシュ)
5.ニュー・ミステイク(ジェリーフィッシュ)
6.半分裸の王様(ジェリーフィッシュ)
7.ノー・マター・ホワット(ピート・ハム)
8.(※メンバー紹介を兼ねたソロ回し)
9.ジェット(ポール・マッカートニー&ウイングス)

身勝手といえば身勝手というか、本当に「自分たちがやりたい曲」ばかりを選んだものだなと、今にして思う。1と2は、もちろん名曲と言えば名曲なのだけど、どうせMr.Childrenの曲をやるのなら、皆が知っているようなシングルA面の曲を選ぶべきだったかもしれない。そして7と9は、古典的な名作を選んだのだなと感じていただけるかもしれないけど、奏でたのはジェリーフィッシュによるカバー・バージョンである。

ただ、その手前勝手な選曲によって、Mr.Childrenの小品や、ジェリーフィッシュという存在を知っていただく機会を作れたのだとしたら、アマチュアバンドとしては「わりに良い仕事」をしたのではないかと、かなり自己弁護的に考えたりもする。

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平易なコードで弾けるよう「ニュー・ミステイク」は1音、高くし(よくボーカリストが歌いぬいてくれたものだと思う)、逆に「半分裸の王様」は半音、低くした(それはそれで歌いづらかったと思う)。それでも客席にいた、バンドマスターの(歯に衣着せぬ)知り合いが「残念だったのは音のバランスだけ、もっとメインボーカルを大きくしてほしかった、それ以外には何の物足りなさも感じなかった」と言ってくれたので、恐らくは大過なく演奏できたのではないだろうか。

もっともバンドマスターは、一夜あけて「こんなに真剣にライブの準備をしたのは初めてだけど、それでもやはり、ジェリーフィッシュの演奏が100点だとすると、我々のそれは、せいぜい50点というところだったと思う」と語った。それは我々の未熟さのみならず、ジェリーフィッシュの巧緻さ、大胆さを意味する発言だったとも思う。私自身は大きなミスをした覚えはないのだけど、たとえば「ニュー・ミステイク」の間奏(ベースはハイフレットをなぞる)を、いま弾いてみると、かなり危なっかしいので、恐らくは当日も、粗(あら)のある演奏をしてしまったのではないかと(今さら)冷や汗が出る。

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上記のセットリストに組み込まなかった楽曲群が、いかに優れているかは、ジェリーフィッシュの愛聴者ならご存知だろう。「憐れみの王様」のギターソロは速弾きではないのだけど、抒情性を感じさせるものだし、「ベイビーズ・カミング・バック」の展開(リズムキープが非常に難しい)は痛快なものだ。それこそを演奏するべきだったのではないかとお叱りを受けるかもしれない。それでも我々は若かったし、くり返すように、自分たちの聴いてほしい(知ってほしい)曲を届けようと、とにかく力を絞りはしたのだ。

このように私が過去を懐かしんでいる間に、もとジェリーフィッシュのメンバーたちは、きっと未来を見ているのだろう。「Lighthouse Spaceship」のベースライン(リズム)は、まるでギターのコードストロークのように奔放なものに(私には)聴こえるし、ハーモニーの鮮やかさは(アンディーという存在を欠いているのに)ジェリーフィッシュの楽曲群を上回っているようにさえ感じられる。

長い楽曲だけど、ピアノの音に乗った静かな時間帯を挟み、勇壮なイントロを一時、忘れさせるような展開が秀逸だと思う。個人的にはフェイド・アウトを選ばず「ファンクラブに入るなら」のように、最後の音をたなびかせずにピシャリと締めくくってほしかったけど、これはこれで「余韻」を残す、優れたアイデアだとも感じる。

そして思う。

かつてジェリーフィッシュを奏でた仲間たちと、もう一度、集まることができて「Lighthouse Spaceship」を奏でられたとしたら、我々は、どんなアレンジをするだろうかと。それは相も変わらず「50点」、あるいはそれ以下のものかもしれない。それでも私たちは、この楽曲の良さを知ってもらうべく、各自の情熱を持ち寄ることはできるかもしれない。

本文を読んだことで「ジェリーフィッシュって、どんなバンドなのかな」とか「The Lickerish Quartetを聴いてみるか」とか、「Mr.Childrenを愛聴する(ある)市民ミュージシャンが心を奪われる洋楽って、どういうものなのかな」とか考えていただけたなら、本記事を書いた目的は果たされる。

そして、今、どんな部屋に住んでいるのかを私が知らない、あの時、我々のライブを聴き、ジェリーフィッシュに興味を持ってくれたガールフレンドのCDラックに「こぼれたミルクに泣かないで」、あるいは「ベリーバトゥン」が残されているのだとしたら、とても有り難いと思う。あの時、会場にいて、よく知らない楽曲が奏でられることに戸惑いながら、そこに何かしら「興味深いもの」を感じてくれた全ての人のために、今後も(もと)ジェリーフィッシュのメンバーが、新たなる歌を届けてくれることを願ってやまない。

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