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現代に蘇る最強集団。

東京事変「ニュース」に滲み出るらしさ

僕が初めて「透明人間」を耳にした時、とっくに東京事変は解散していた。

印象的なベースのメロディで軽やかにスタートした曲は、面白い動きをするギターや椎名林檎の繊細な歌声を巻き込みながらサビへと向かっていく。
サビになるとピアノのメロディが暴れ出し、クラップ音も入ってきてハッピーな感じが増す。
本来であれば曲全体を下の方からどっしり支える役割であるところのベースが独自の軽やかなメロディを奏でているこの曲において、土台として大きく機能しているのがドラムで聴いていて気持ちがいい。

聴いていて鳥肌が立ったのを覚えている。
それぞれのパートが役割をこなす事で出来上がっている音楽がそれまで自分の知っていた音楽だとすれば、東京事変の音楽はそれぞれの楽器が違うベクトルで最高に目立ちに行った結果、力の働く向きが同じになっているみたいな感覚があった。

もちろんそんな音楽は初めて聴いたし、勝手に椎名林檎のソロプロジェクトだと勘違いしていた「東京事変」というバンドはとんでもない最強集団だった事を知る。
気がついたらすっかり東京事変の虜である。

それから数ヶ月がたった2020年元旦。
「東京事変 再生」と題して突如、東京事変が8年の時を経て再び動き出した。
新曲「選ばれざる国民」を配信したり、ツアーの発表がされたりして、新年早々ハイテンションになってしまう僕がいた。

そして先日、新作EP「ニュース」がリリースされた。
「ニュース」は、全5曲の作詞を椎名林檎が担当し、作曲はメンバー5人が1曲ずつ担当しているとの事。
その前情報を手に入れてしまった、僕は聴くのが楽しみで仕方がなかった。

実際聴いてみると、期待通りにとても素晴らしい作品だった。
5つの違った視点で描かれる作品が1つにまとまる事で「1つのニュース番組」を見ているかのような感覚になる。
「東京事変らしさ」がどの曲からも感じられて、18歳の僕には「今この時代に東京事変がいるんだ!」という感動が大きかった。

1曲目の「選ばれざる国民」は2020年の元旦に東京事変の復活とともに発表された楽曲で、ギターの浮雲が作曲を担当する。
具体的にはどの層を言っているのかは定かではないが、「選ばれし国民」に対してのアンチテーゼを感じるこの「選ばれざる国民」は歌詞も特徴的だが、キーボードの「もわぁん」とした音色や細かいギターのメロディーが曲の持つ独特な世界観へと引き込む。

『圏外も炎上中刺し違える群衆
 善意ほど一瞬で殺意に変わる
 熱心なファン皆辛辣なアンチ
 センセーション飽き足らない
   〜選ばれざる国民〜』

前半部分の歌詞はSNSを指すような表現が使われており、この部分からも東京事変が現代に降り立ったことを感じる。

2曲目の「うるうるうるう」はキーボードの伊澤が作曲を担当する。
伊澤がこれまでに手掛けてきた「キラーチューン」や「絶体絶命」は、メロディーの美しさが特徴的で思わず口ずさみたくなるものが多い。
「うるうるうるう」もまさにその通りで、入りこそミステリアスな雰囲気で始まるもののサビのメロディーは流れる小川のように美しい。

『自称美しい人はより美しくそうでない方は
 それなりに皆、閏え!
 〜うるうるうるう〜』

椎名林檎の作詞センスも光る1曲だ。

3曲目の「現役プレイヤー」はベースの亀田が作曲。
僕が東京事変の中で一番好きな「透明人間」も亀田が作曲を担当する曲だが、「現役プレイヤー」も共通してベースのメロディーが美しい。
初めて「透明人間」を聴いたときのあの気持ちが蘇ってきた。

『新型の性能(スペック)万事快調
 真っ向を食らえ今日昨日までの記録(レコード)
 更新してしまえ
 〜現役プレイヤー〜』

東京事変は現在進行形で進み続けている。
紛れもない「現役プレイヤー」なのだ。

4曲目はドラムの刄田が作曲する「猫の手は借りて」。
この曲は「ニュース」の中で一番壮大な感じのする曲で、猫から見た人間の諸行をちっぽけに描いた作品だ。

日本語でも接続詞から次の単語をなんとなくで連想できるように、曲を聞いているとたまに頭の中で、「あーそう動いたら次はここに落ち着くよね」みたいな感覚になるときがある。
東京事変の曲はそれを裏切ってくるから聴いていてすごく面白く感じる。

とてつもなく分かりづらいと思うので分かりやすく例えるとしたら、「今からジャンプするからみてて」と言われて、ジャンプ力あるのかなこの人とか思いながら眺めてたら、相手がジャンプした後空中で5秒間浮き始めたみたいな感覚。

それを「猫の手は借りて」からすごく感じる。

ラストの「永遠の不在証明」は椎名林檎が作曲を担当する曲。
東京事変の曲には、「この人たち即興で演奏してんのかな」って思うくらいのノリの良さを感じる曲がたくさんある。「勝ち戦」などを聴くと特にそんなことを感じる。
「永遠の不在証明」はノリの良さを感じるどころか、曲の後半部分にノリノリのジャズセッションみたいなパートがあって興奮が止まらない。最強すぎる!!
ミステリアスな曲調の中で描かれるアウトローな世界観がたまらない1曲になっている。

本当に5者5様の曲が集まって出来上がった素晴らしい作品だった。
またこれが東京事変の曲としてまとまっているのは、編曲が東京事変のメンバー全員で行われているというところにもあるんだと思う。

そして何よりも嬉しく思うのは、自分が生きているこの時代に「東京事変」という最強集団が舞い戻ってきてくれたことだ。
しかも形を変えずに「現役プレイヤー」のままで。

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