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教材としてのピンク・レディー

キング・クリムゾンは、いわば「高等教育」

教材としてのピンク・レディー
キング・クリムゾンは、いわば「高等教育」

登場人物

不肖わたくし、いい歳だけど青二才と言えば青二才(Yとします)
その先輩、だいぶ年長だけど子煩悩で取り乱している(Nとします)

N「だいぶ子どもが大きくなってね」
Y「よかったですね」
N「日増しにかわいくなるんだよね」
Y「本当によかったですね」
N「いや、ほんとかわいくてね」
Y「何だか針の壊れたレコードみたいですねえ」
N「え?」
Y「同じことを何度もおっしゃっている気が」
N「でも実際にかわいいんだよ」
Y「そうですか」
N「客観的に、かわいいと思う」
Y「…主観と客観の使い分けを、俺は先輩から教わったのですが」
N「とにかく、かわいい、かわいい」
Y「どんな曲を聴かせておられるんですか」
N「いい質問だね」
Y「あいみょんとかの、最近の曲ですか?」
N「あえて古典的な名作を聴かせている」
Y「たとえば?」
N「ピンク・レディーを聴かせている」
Y「…俺でさえ、あまり知らないアーティストですけど」
N「まあ世代じゃないだろうからね」
Y「でも『渚のシンドバッド』は好きです」
N「あれはロック・バンドがコピーしても面白いと思う」
Y「たしかにベースラインとか、作りがいがありそうですね」
N「そしてサビは全員でハモる」
Y「男4人とかで? 何だか妙なことになりませんかねえ」
N「とにかくピンク・レディーを聴かせているんだ」
Y「喜びますか、お子さんは」
N「メロディーに合わせて踊るよ」
Y「!」
N「幼子さえ躍らす魔力があるんだ、ピンク・レディーには」
Y「たしかに『UFO』のイントロなんかは…」
N「すごいことが始まりそうな気配がするだろ」
Y「それがお子さんの成長の暗喩というわけですか」
N「いいこと言うねえ」
Y「で、ピンク・レディーのほかには?」
N「キング・クリムゾンを聴かせてみた」
Y「!?」
N「それも情操教育の一環として」
Y「どうなりました?」
N「…泣きだした」
Y「無理もないような気がいたします」
N「まだ早すぎることが判明した」
Y「どの楽曲を流したんですか」
N「もちろん『21世紀のスキッツォイド・マン』だよ、まずは」
Y「…よりによって、それですか」
N「クリムゾンの奥深さを知るような大人になってほしいねえ」
Y「あのイントロで幼子が泣くのは無理もないような気もしますが」
N「たしかに教材としては早すぎた」
Y「いきなり激辛のカレーを食べさせるようなものです」
N「きみ、嫌いなの?」
Y「いや、カレーもクリムゾンも嫌いではないですけど」
N「我が子にも分かってほしいねえ」
Y「そりゃ俺は、いいトシですから魅力が分かりますけど」
N「もし将来、結婚したいという相手を連れてきたらね」
Y「何年後の話ですか!?」
N「あれを理解できる人間かを、親として確かめる」
Y「激辛カレーですか、クリムゾンですか」
N「カレーは俺も中辛がいいので」
Y「クリムゾンを知っているかを問いただすわけですね」
N「そうだよ」
Y「だって、お子さんのお相手なわけですから、今は幼子というわけでしょ」
N「まあ、そうだよね」
Y「結婚されるころには、クリムゾン、まさに『古典』になっているのでは」
N「古典を学ぶ謙虚さを備えているかを見る、親として」
Y「先輩、燃えていますねえ」
N「ダブルトリオ期とトリプルドラム期、どちらが好きかを訊く」
Y「…あまりに酷な質問では」
N「え?」
Y「どちらが好きも何も、知らない可能性さえあると思います」
N「きみはピンク・レディー、どっちが好き?」
Y「ミイさんとケイさんの比較ですか?」
N「そうそう」
Y「ふたりの女性を見比べて、どうこういうのは好ましくないかと」
N「急にオトナみたいなことを言い出したね」
Y「いちおうオトナです、少なくとも成人はしております」
N「でも『渚のシンドバッド』と『UFO』くらいしか知らないわけでしょ」
Y「まあ、そうですけど、激辛カレーは食えます」
N「ピンク・レディーを詳しく知らないうちは未熟者だと思う」
Y「そんなら言わせてもらいますけど」
N「?」
Y「あいみょんの『ハルノヒ』、別バージョンをお聴きになりましたか」
N「そもそも、あいみょんを聴かない」
Y「そういうのも『未熟者』と称して差し支えないと思います」
N「…」
Y「古きを温めているだけでは良くないと思います」
N「たしかに」
Y「気を取り直して、クリムゾンの楽器パート、一緒にハミングでもしましょうか」
N「いいねえ」
Y「俺はベース・パートをハミングしますんで」
N「じゃあ俺がサックスフォーン・パートね」
Y「まだ『渚のシンドバッド』をハモるよりは、妙なことにはならないかと」
N「男2人で歌う、ということを考えるとね」
Y「しかしクリムゾンを忠実に再現するとなると」
N「とても2人では足りないね」
Y「いつかお子さんにも加わっていただきたいですね」
N「いいこと言うねえ」
Y「まだ早いですからね、お子さんにクリムゾンは」
N「きみも壊れたレコードみたいになってきたね」
Y「幼子にキング・クリムゾンは早いです」
N「とにかく、かわいくてね」
Y「もう分かりましたよ、そろそろ失礼していいですか」

先輩、しばらく会ってないなあ。訪ねていくのが難しい情勢だしなあ。お子さん、大きくなったかなあ。

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