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2017年8月22日

のほし (20歳)
30
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渇き切っているけど、泣いてなんかいない。

The Cheserasera『dry blues』によせて

The Cheserasera(ザ ケセラセラ)の『dry blues』というアルバムを聴いた。
脱力感と熱を持ち合わせたしゃがれた歌声に、前のめりなバンドサウンド。
その抒情的なメロディが愛おしくて、気付けば私は歩きながら口ずさんでいた。

「ロクでもなくても すぐに心を病んでも 生きてくれればいいから
元から間違いだったなんて 思わせないでね」
ー“I Hate Love Song”
1曲目の“I Hate Love Song”で歌われる失恋のことを思い浮かべていた。
本気で愛した俺の気持ちを返してくれ、そう言わんばかりの歌詞が続く。
「この目見て じっとして 嘘もつかないで
なんて言わないしもう懲りたけど
ふざけたラブソングが 耳につく事はないですか? ないんだろうな」
どうしようもない恋愛、胸糞悪い気持ち。
どうしてくれんのこれ?
分かんなくて叫ぶ。
このアルバムはラブソングアルバムだけど、よくあるラブソングとは明らかに違う。
君のことが忘れらないよ、とか泣いたりしない。
誰かを好きになったり、嫌いになったり、一生に一度と思った恋が終わっても、なんだかんだ元気に生きていくからだ。
テレビの中で微笑む美女は今日もきれいだし、ご飯だって美味しい。
わりと楽しい日々は続いていく。
その軽さがとてつもなく悲しくなったりするんだろう。
そんなことを思っていた。

あなたは今、胸焦がすような気持ちになったりしながら生きれてますか?
あー、私なんか俺なんか、って思いながらも、
友達の優しさとか好きな音楽に触れて、
叶えたかった夢を思い出して、
やっぱり頑張ろう、まだ頑張れるわ。
そう思えるあの瞬間に、The Cheseraseraの音楽は似ている。
だから彼らの音楽を聴くと私は元気が出る。
「なんだ、人生そんなに悪くないじゃん。」って笑いながら、渋谷・スクランブル交差点の人混みをすり抜けたい、そんな気分になる。
全てを諦めているようで、散々嫌った愛とか希望のような何かに満ち溢れてしまう不思議な感覚だ。
 

「笑顔に飽きて 喧嘩したって 夜はふたりで 同じ毛布で
名前を呼んで 髪がなびいて 歩幅は少し 遅く合わせて」
-“You Say No”
彼らの音楽の魔法にかかれば、僕たちの日々の滑稽さもなんだか温かく思える。

「退屈気取って 過ごした景色も失敗も全部 忘れないよって
そんな事を思える様な日々だったんだ」 
ー“春風に沿って”
眩しい日々が過去形で歌われてしまうことの残酷さ。

僕たちのなかで起きていることの全てをひっくり返して、裏も表も内側も全部、開けっ広げにしてしまう。
憶測とか嘘とか媚とか入り込む隙間なんてないんだ。
惰性で生きてる奴らとか、嘘でごまかしてる奴らとか、
ざまみろ、こっちは生き生きとしてやるよって、
彼らは絶望しているというより、泣いているというより、生きる希望に満ち溢れている。

もちろんどの曲も素晴らしいのだけど、
リードトラックの“Blues Driver”という曲がとにかく素晴らしい。
サビ前のBメロ、上がっていくメロディに何回だって胸を焦がす。
その感覚だけで私は、明日も頑張ろうって思えるんだ。

彼らはこれからもっと、羽ばたく。
その瞬間を見届けたいと思う。
私の文章なんて本当はどうでもいい。
The Cheseraseraの「音楽」が全てだ。
このなんとも言えない無力感が、彼らの音楽と通じるところがあるんだろう。

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