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B’z『We’ll be alright』君に贈るバトン

30年間の軌跡、そして31年、32年目へと繋ぐその絆

ボーカリストの稲葉浩志、ギタリストの松本孝弘からなる、日本を代表するロックユニット『B’z』30年間休むことなく走り続けてきた彼等だからこそ、真に伝えられる熱い思い、その言葉の意味、シンプルかつ明確なメッセージが深くこの胸に突き刺さる。デビュー30周年ベスト選曲ツアー『Pleasure 2018-HINOTORI-』その年の夏は、汗が滴り落ちるほど、猛烈に暑い日々が続いていた。そのツアーで歌われたB’zとファンとを繋ぐ太く切れない絆で結ばれた楽曲“Brotherhood”。B’zのライブジムで定番の“ultra soul”と並ぶほど、ファンの間では支持されている楽曲で、今もなお大切に歌われている。また、歌い続けることで、この曲に込められた想いやそこに秘めた可能性が形となって、B’zとファンとを繋ぐ1曲という枠を越え、その音が自由に飛び立ち、沢山の人の胸に勇気や多くのエネルギーを与えてくれているように感じる。

《BROTHER/生きていくだけだよ/ためらうことなど何もないよ/今更/どうか教えてほしいんだ/苦しい時は苦しいって言ってくれていいんだよ/baby,We’ll be alright/We’ll be alright》

(“Brotherhood”)

9月22日に千秋楽を迎えたこのツアー。

題された『HINOTORI』というタイトルに込められたその思い──死の淵から何度も蘇り羽ばたく不死鳥のような『B’z』力強く逞しく歩みを止めない彼等二人そのものを象徴し、連想させられる。それと同時に、これからもその意思を貫き通すというメッセージが込められているようで、その実直かつ真っ直ぐな姿勢に心から感銘を受ける。

それがまさか、このツアー中、稲葉浩志自身の身にそのタイトルを彷彿とさせる不運と言ったらいいのだろうか、運命、はたまた宿命かのような、それこそ30年目にして乗り越えなければならない高い壁がそこに塞がるとは、誰一人考えもしなかったことだろう。

『思うように声が出ない』それはボーカリストとして致命的で厳しい状態だったに違いない。これまでB’zはソロ活動を含め、30年もの間一度たりとも歩みを止めることはなかった。ただ音楽と誠実に向き合うこと、そして、今できる最高の状態のものをリスナーに届けること、それだけに徹し、歩み続けてきた。その根底には本物のプロフェッショナルとしての誇りやプライド、その証が強く刻まれている。また、より良い方向へと変化を怖れずに、新たなB’zとして今現在もリアルに輝き続けていること、そのことがどれだけ偉大なことか、絶対に忘れてはならない。だからこそ、聴いてくださる人達の為に、常に完璧な状態を追求しそれを保ち続けてきたストイックな稲葉浩志のその姿に、誰もが驚かされた。ステージで輝くその姿とは裏腹に、その喉に鞭打つかのように、一進一退のライブツアーがそこで行われていたのかもしれない。

《みんな生まれも育ちも違ってるし/ベッタリくっつくのは好きじゃない/いざという時手をさしのべられるかどうかなんだ/だからなんとかここまでやってこれたんだ/You know what I mean》

(“Brotherhood”)

9月1日福岡ヤフオク!ドーム公演での出来事だった。1曲1曲と演奏するごとに、伸びやかなその歌声が見る見るうちにかすれてゆくのが、素人目から見てもはっきりと分かった。そして、3曲目の演奏後に一度ライブが中断されることになった。かつてないトラブルに彼等も困惑したに違いないが、30年間当たり前のように見てきた完璧なパフォーマンスがどれほど凄いことか、改めて実感させられる場面となった。

そして、再度ステージに上がり、マイクを持った稲葉さんの第一声が忘れられない。

「皆さん、ごめんなさい」

潔く深々と頭を下げるその姿に、心揺さぶられた人がどれだけいただろうか、当然僕もその一人である。初めて耳にするその謝罪の言葉に、事態の深刻さがひしひしと伝わってきた。また、彼を取り巻く想像絶する重圧が、その肩にのしかかっていたことだろう。その後、スタジアム全体に静けさが漂い、誰もがその言葉に耳を傾けた。

「ちゃんと次に演る予定の曲、それをちょっと歌わしてください」

「皆さんに頼るつもりはありません。ひどい歌、聞かしちゃプロとしては失格ですけども、今日の僕の姿、見ててください。」

観客の不安を察するかのように、敢えて力強く一文字一文字噛み締めるように話すその姿が印象的で、今でも強く心に残っている。その姿、プロとしての生き様を、ただただこの目に焼き付けること、その一点に集中し、皆が不安と期待の狭間で固唾を呑んだ。

「OH!MY!裸足の女神よ!」

一瞬とはこのことか。緊迫したこの雰囲気を瞬時に掻き消すかのように、伸びやかなその美しい歌声がスタジアム全体を包み込んだ。その圧倒的な歌唱力は、瞬く間に会場を一つにして、彼の声を後押しする大歓声と手拍子が、より一層その熱量に拍車をかけた。また、その声援と共に、彼を必死に支えようとするバンドメンバーの絆が生み出すパワーとエネルギー、そして長年培われてきた一体感こそ『B’z』としての生き様そのものに感じられた。

「On!Guitar!頼りになるわ!」
「On!Guitar!Tak!Matsumoto!」

その言葉通り、松本さんあっての稲葉さん、稲葉さんあっての松本さん。一点の曇りもない固い絆で結ばれた、家族や親友、そういった垣根を越えた目には見えない愛情その証が、そこにはしっかりと刻まれていた。『B’zは二人で一つなんだ』と、幾度となく蘇る不死鳥のように、羽ばたく二人の姿がステージを輝かせ彩り、僕らリスナーの心を至極、最高に満たしてくれた。突然起きたハプニングさえも、あたかも映画フィルムのドキュメンタリーだったかのように思わせてくれる二人のパフォーマンス、その日の出来事が他の会場で行われてきたどのライブよりも『特別な日』にさえ感じさせてくれるその二人の姿に、身に染みて感動したのを覚えている。

そして、9月22日──。

約5万人もの人で埋め尽くされたツアーファイナルの舞台が味の素スタジアムである。そして、そのメインステージとは別に、会場のアリーナの一部に小さな四角いステージが設置された。稲葉浩志と松本孝弘がB’zとして二人だけで演奏する為にその舞台は作られた。そこで歌われたのが“Brotherhood”である。

メインステージの演奏を終えて、アリーナに設置されたステージへと向かう二人。大歓声の渦に包まれながら進むその足取りは軽やかで、その鮮やかな景色を見つめながら微笑む二人の笑顔に、自然と心が癒される。

ステージに到着し、マイクを持った二人から語られたその思いは、いつもと変わらず真っ直ぐで、愛に溢れ、体の芯から発せられているような、心のこもった厚い感謝の気持ちだった。何よりも30年間一度も休まず活動し続けてくれたこと、その軌跡、その生き様に、心から感謝の気持ちを伝えたい。その一心である。

「皆さんが俺たちにとって最高の『Pleasure』で『Treasure』だってことですよ」

(TOUR FINAL at AJINOMOTO STADIUM MC “松本孝弘”)

その投げ掛けられた言葉に、観客が拍手と大歓声で答えた。それと同時に会場全体が静寂に包まれ、観客の視線が一点に集中する。何度も繰り返し聴き込んだそのギターの音色、その聞き慣れたメロディが体全体に優しく染み渡るように流れてゆく。また、その音色にシンクロするように、壮大に火の鳥をイメージして作られたメインステージが、ブルーやピンクの眩い光でライトアップされる。その光景は美しく、この曲の背景にそっと花を添えているように感じられた。その後、二人が向かい合い、絶妙なタイミング言わば阿吽の呼吸で、息を合わせ、この歌が始まる。歌声とギターの音色が一つに重なり合い、強靭なハーモニーとなって、スタジアム全体を轟かせてゆく。そして、誰もが皆、その熱量、その特別な空気感を肌で感じ取りながら、二人が織り成す卓越した世界観に心震え、おのずと身を委ねてしまう。

普段のライブでは、冷静にクールにB’zのシンガーとしてステージに立つその姿が印象的である稲葉浩志。けれども、この時は何か違った。鬼気迫るようなその歌声、その気迫に、このツアーを通して彼が感じた様々な不安や悔しさ、その葛藤が、鏡のようにその姿に映し出され、滲み出ているように感じられた。また曲の途中、松本さんの肩にそっと手を回しながら、肩寄せ合い演奏する二人の姿がとても新鮮だった。一秒一秒曲が進むにつれて、抑えきれない感情に、目頭が熱くなる稲葉さんのその目から、大観衆への言葉では伝えきれない、感謝の気持ちが溢れ出ているように感じられた。また全身で力を振り絞り歌うその姿を、全力で支えるように、松本さんの指先にも力が入る。全身全霊、一音一音、正確に弾き熟す圧巻のギターソロに、会場全体がすっかり心を奪われ、その演奏に魅了される。そして、彼等二人が作り出す音楽に、魂が揺さぶられ、胸が高鳴り、大観衆の右手が空高く掲げられたのは言うまでもない。

「この『We’ll be alright』」

「この言葉、このフレーズを、何か必要としてる人をイメージして、そんなとこに届くようなそんな気持ちで、今この味の素スタジアムで、みんなで美しく響かせようじゃありませんか」

(TOUR FINAL at AJINOMOTO STADIUM MC “稲葉浩志”)

このツアーファイナルを共に祝うかのように、鮮やかに光る満月がスタジアムの夜空を彩り優しく照らした。その壮大な景色、美しく響く大観衆の歌声、彼等が一針一針大切に紡いできたその証、その絆がこの場所に投影され、燦然と美しく輝き続けていた。

《走れなきゃ/歩けばいいんだよ/道は違っても/ひとりきりじゃないんだ/baby, We’ll be alright…》

(“Brotherhood”)

そして、Pleasureツアーを終えて31年日に突入したB’z──。

稲葉さんの体調を心配する声がネットでもちらほらと見受けられたが、またすぐに新たなアルバム制作が始まった。僕らリスナーの想像を遥かに超える、精力的な二人の姿に衝撃を受けた。アルバム制作を終え、翌年の5月には『NEW LOVE』が発売され、6月には『B’z LIVE-GYM 2019 -Whole Lotta NEW LOVE-』と題された新しいツアーが本格的にスタート、さらに今まで長年一緒にライブツアーをサポートし、支え続けてきてくれたバンドメンバーも一新、31年目にしてまた新たなB’zとしてのスタイルを形成しようとするその姿勢に、驚きを隠せない。そして、Pleasureツアーでの鬱憤を晴らすかのように、新たなバンドメンバーとより一層パワーアップしたロックサウンドを鳴り響かせ、これまでになく絶好調な二人の姿に『胸いっぱいの新しい愛』を感じ、一段と彼等の未来に大きな期待を寄せた。

またその一方で、今までB’zと共に歩んできたサポートメンバーへの感謝の気持ちを忘れてはいけない。20年以上も前から歌い継がれてきた楽曲“Brotherhood”。この曲に込められたサポートメンバーへの熱い思い、一言では言い表すことのできない沢山の愛情が、この歌には詰まっている。今も目をつぶれば、脳裏に浮かぶバンド仲間達の勇姿、そこで生まれた伝説のライブの数々──。その一つ一つを、しっかりと胸に刻み、明日へと語り継ぎながら、これからもB’zの行く末をずっと見守り続けていきたいと思う。

《当然なはずの自由を根底から脅かされ/自分の家だけが唯一の居場所》

(INABA/SALAS “IRODORI” session)

2020年、B’zとして32年目の年──。

今年もB’zのライブジムを楽しみにしていた矢先、突如として自由に動き、楽しむことができなくなった。今は自分自身だけではなく、周りの人を守る為にも、娯楽といった娯楽を自粛する必要が求められる。心では『仕方ない』と理解しているつもりでも、ストレスが溜まり、不安が募る。INABA/SALASとして予定されていたツアーも延期された。そうした今だからこそ、音楽そのものが生み出す本来の力、底知れぬ可能性、その根底にあるそれぞれが自由に好きな音を楽しむことの素晴らしさを、改めて再認識させられる。

《かよわい絆ばかりじゃないだろう/さあ見つけるんだ/僕たちのHOME》

“First time playing HOME at home!”
(B’z “HOME” session)

絶え間ない努力を積み重ねて、常に音楽シーンのトップを走り続けるB’z。彼等にこそ伝えられる確かなメッセージが、そこには必ずある。二人が発信し続けるその想いを、今まさに生きる勇気その糧として、僕らもまた『必要としてる人へと届くように』伝えてゆきたい。

《We’ll be alright》=僕たちは大丈夫さ!!

“Brotherhood”=兄弟愛。
君と笑顔で再会できるその日まで──。

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