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桑田佳祐はナイトフライのジャケットのオマージュで雑誌表紙を飾った

桑田佳祐 ドナルド・フェイゲンの画像検索結果はナイトフライのジャケット。AORの頂点を極めた超名盤だ

Donald Fagen は、Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN 2017のヘッドライナーとしてDonald Fagen and The Nightflyersの出演が決まっていた、当時、首を長~くして待っていた。僕にとって、まだ観ぬ最後の大物と言っていいミュージシャンだ。Steely Danも観たいが個人的には、Donald Fagenのソロのほうに思い入れがある。が、直前に、Steely Danの相棒のWalter Beckerが急逝し、Donald Fagenは体調不良になり、FESそのものが中止になってしまった。残念だった。

今はSteely Danとしてツアーをしているので、是非、この騒動がおさまったら、来日して欲しい。

このご時世なので、家に籠って、音楽ばかり聴いている。録り溜めた、有料放送のライブか最新アルバムを聴いて、音楽の進化は凄いなぁと思いながらも、ついつい聴きまくった過去の名作も聴きたくなる。そんな中の1枚にDonald Fagenの『The Nightfly』がある。タイトルからして、格好良すぎる。そしてこのアルバム、ジャケット、音がノスタルジーで、聴けば一気に僕もノスタルジックになってしまう。なので、オッサンの今更のノスタルジックな話であるが、Donald Fagenの『The Nightfly』は絶対に一聴することを自信をもって薦められる超名盤である。

“桑田佳祐 ドナルド・フェイゲン”
で画像を検索すると、桑田さんがDonald Fagenの『The Nightfly』をオマージュした2012年発売の某雑誌の表紙の画像、そして本家本元のDonald Fagenの『The Nightfly』レコードジャケットが表示される(もう一人同じことをやっている人がいるのは驚いた。こちらが早いのかな、ノーコメントです)。
この雑誌を買った。レコードのジャケ買いの如く、雑誌の表紙買いだ。表紙を観ただけで、たまらなく嬉しくなってしまったのである。桑田さんとは約10学年違うのであるが、プロデビューして頂点を極めていた桑田さんもこのアルバムを聴いていたんだと思うと嬉しくなってしまった。そうそう、このジャケットは理屈抜きで、格好良くて、アメリカを感じ、こういう男になりたいと高校生の僕は思ったのである。

桑田さんの音楽は僕が言うまでもなく素晴らしい。僕は、桑田さんの、“照れ屋”、“普通の人”、そして度々言われる“精神的な童貞”な感じが大好きである。

「ヨシ子さん」(作:桑田佳祐)

R&Bって何だよ、Dear friend?
HipHopっての教えてよ Refrain
オッサンそういうの疎いのよ 妙に
サタデー・ナイトは
ディスコでフィバー

中略

EDMたぁ何だよ、Dear friend?
“いざ”言う時に勃たないヤツかい?
“サブスクリプション”まるで分かんねぇ
“ナガオカ針”しか記憶にねぇよ

現在のPOPミュージックについていけなくなったロック少年だったオヤジ達を励ます歌詞。こういう風に照れながら、こんなもんですオッサンはと堂々と言えるようになりたいなぁ・・・と憧れて爆笑して、無国籍、そしてEDM的な最新の斬新なサウンドに唖然としてしまう。こういう曲をシングルにしてしまうところがさすがだ。
そんな桑田さんだからこそ、Donald Fagenの『The Nightfly』をオマージュし、さり気なくギャグを入れて、パロディ化できるんだろう。多分、桑田さんもこのアルバムのノスタルジックな雰囲気に憧れ、そして、ジャケットのあまりに完璧な格好良さに一度やってみたかったのではないだろうか?

さて、Donald Fagenの『The Nightfly』である。
高校時代に最底辺の成績だった僕は、高三になってもさっぱり勉強せず、部活ばかりやっていた完全に反動で、映画ばかり観ていた。映画を観るお金もないので、地方TV局の視聴者プレゼントにせっせとハガキを送っていた。殆ど当たった。外れたのはナスターシャ・キンスキー、マルコム・マクダウェルの【キャット・ピープル】とクリント・イーストウッドの【ファイアーフォックス】ぐらいである(妙にこの時代の記憶は鮮明だ。観た映画も覚えているし、開放感に浸っていたんだな。大学のときは、楽しかったけど、初めての一人暮らしに慣れるのに時間がかかり、生活に追われている面もあったし、慣れた後は、刺激が強すぎて、覚えてないのかな・・・)。浪人は完全に(親にも相談せず)織り込み済みだった。

そんな時代の1982年は、僕にとっては自身の趣味を大きく変えた年だった。
夏(だったと思う)には、リドリー・スコットの【ブレードランナー】が公開された。あの雨が降りやまない、闇に包まれ、アジア系の変なコマーシャルのネオンが闇の中から浮かび上がる世界観は衝撃だった。近未来を描いたこういう暗~い映画好きはこのとき決まってしまった。だから、【バッドマン】はマイケル・キートンとジャック・ニコルソンの第1作目が最高だと思う。Princeがサントラだったからかな?

フェバリットシネマの【タクシードライバー】も雨が降っている。ロバート・デ・ニーロ演じるトラヴィスが街を流す深夜のニューヨーク。そこに、Tom Scottのサックスが流れる。僕が一番好きなサントラ盤である。都会は怖く飲み込まれそうで、不気味だったが何か惹きつけるものがあった。無意識に都会への憧れが僕の脳裏には刷り込まれていった。この映画、ファッションも格好良かった。M-65.The Whoの【さらば青春の光】もModsが格好いい。なので、ヴィンテージは買わないが、ミリタリールックは大好きである。某TVドラマで、M-51を主人公が着ているときブームになったのでやめた。振り返れば、OASISのLiam Gallagherが着こなしていたからなのだけど当時はそんなことも考えずにやめた。M-51はModsの象徴なのだ。

秋、Donald Fagenの『The Nightfly』が発売された。お金がなくて、すぐには買えなかったのだけれど、既に推薦で東京の大学に入学の決まっていた友人がこのアルバムを持っていて、彼がもう受験勉強から解放されていたので、毎日、彼の家にこのアルバムを聴きに家に押し掛けていた。この頃の洋楽ファンと言うのは妙な連帯感があって、アルバムを買うときにお互い被らないようにして、貸し借りしていたりする。

レコードジャケットは、モノトーンでDonald Fagenがターンテーブルとマイクを目の前に煙草を片手にボタンダウンにネクタイを緩めたDJに扮している。これは絶対に、深夜のFM放送で、JAZZをかけていると妄想は膨らむばかりだった。今このジャケットを観ると、Miles Davisの『Kind of Blue』の「So What」をかけているような気がする。絶対JAZZ。Modern Jazz。アルバム全体がジャジーだから。未だに妄想の膨らむ素晴らしいジャケットだ。

田舎で、バンカラな男子校に通っていて、女の子と付き合ったこともない体育会系で、家ではKing Crimsonを聴いていた僕は、東京が怖いので、地方の国公立に進学し、女の子とお付き合いしたいとなんとなく思っていたのだが、友人の家で『The Nightfly』を聴き続け、彼の東京生活への憧れを聴いていると少しずつ東京に進学しようかなという気になってきた。

Donald Fagenの初ソロアルバム『The Nightfly』は、田舎の少年の人生を変えたのである。東京に行って、こんな粋な男になりたい。今、現実の僕は、痩身のくせに腹が少し出っ張った見事なおじさんである。なれるわけはないし、努力もしていないのだがDonald Fagenには、(やはり、当然)なれなかった。

『The Nightfly』は、アルバム全体がノスタルジックな雰囲気で包まれている、シニカルなSteely Danとは異なっている。歌詞もやはり違っていて、Donald Fagenが少年から大人になっていく自伝的なコンセプトを持っていて、アメリカの栄光の時代に少年時代を過ごした楽観性の中に、既に見え隠れしていたアメリカの影も描き込まれている。少年時代を振り返る大人のロマンチックなアルバムである。

一番衝撃だったのは音のクリアなことだ。聴いたことのないクリアな音で、一音一音が音の粒のようになって聴こえることに驚いた。異次元の未来の音だった。当時のThe Rolling Stonesのモコモコした音とは違っていた(この時代のThe Rolling Stonesの録音は味があって今は好きである)。

後々知ったのだが、このアルバムは世界初と言っていいデジタル録音のアルバム。そのデジタルの音をアナログ(LPレコード)で再生させるという、アナログ技術の頂点を極めていた時代にデジタル技術を持ち込んだ画期的なアルバムである。“80年代のレコードの音”を最初に実現したことになる。
が、80年代のチクロ(死語だ。完全に。これは僕より上の世代の人しかわからない)まみれで、人口甘味料でデコレイトされた体に悪そうな音ではない。

Steely Danは、ご存知のように、様々なミュージシャンに演奏させ、ベストなテイクを選び、編集するというスタジオアルバム作りの長時間化、そして究極形を体現したバンド(バンドだったのに行き過ぎて、故Walter BeckerとDonald Fagenいがいのメンバーをクビにして、二人のユニットになってしまった。クビにしたMichael McDonald、そこにBoz Scaggsを加えて、Donald Fagenの3人がツアーをする。このときのツアーは映像化されている。オープニングのThe Isley BrothersのThat Ladyのカバーから格好良すぎる。来日したので、行っとけばよかった)である。その頂点が『AJA』である。

『AJA』の手法をデジタルな録音で実施したのが『The Nightfly』である。
当時はノスタルジーを感じる超アナログ的なサウンドにしか聴こえなかったのだが、今、聴いてみると、デジタル感一杯で、かつ、これほどテクノっぽかったのかと驚いてしまう。
このテクノ感は、多分、ドラムはベストテイクの何小節かをループさせているんだと思う。ジャストなリズムかどうかは僕に聴き分ける能力はないが、ビートは平易で、抑揚が少なく非常にデジタルなグルーヴである。そしてシンセサイザーはふんだんに使っている。当時は気が付かなかった。

この反動で、なんと11年後になる次作のソロ『KAMAKIRIAD』は、グルーヴが跳ねている。が、そんなデジタル感がしても『The Nightfly』はAORの頂点を極めた名盤である。アナログ、デジタルを融合させた時代の生んだ奇跡の名盤だ。

『The Nightfly』を聴き込んでいたころ、受験の佳境にはいるというのに、ひとめぼれで、2年間ずっと好きだった1学年下の女の子と付き合うことが出来た。その女の子は、来年、進学は東京にするという。それまで迷っていたが、僕は東京に進学することにした。浮かれていたのである。なにせ、はじめて女の子とデートしたのである。

初恋のテーマ曲として僕の頭のなかは、A面最後のナンバー「Maxine」が常に鳴り響いていた。もう全くラブソングなんて聴くこともない僕(50歳過ぎのオッサンがラブソングなんて聴かないか(大笑))であるが、最高のラブソングを選曲することになったら、恋の始まりは「Maxine」で、恋の終わりを10ccの「I’m Not in Love」で締める。
「Maxine」は都会の若者のラブソングだと思った。都会に行かないと俺は後悔すると思った。

ピアノのイントロと最初のDonald Fagenの多重録音によるコーラス、バックで静かに流れる、オルガン、JAZZっぽいギター、途中から入ってくるホーンセクション、そしてサックスのソロからエンディングのコーラスとDonald Fagenのボーカルが完璧なロマンチックなラブバラードである。

「Maxine」(作Donald Fagen)

Some say that we’re reckless
They say we’re much too young
Tell us to stop before we’ve begun
We’ve got to hold out till graduation
Try to hang on Maxine

   中略

You’ll be my senorita
In jeans and pearls
But first let’s get off this highway

We’ll move up to Manhattan
And fill the place with friends
Drive to the coast and drive right back again
One day we’ll wake up, make love but ‘til then
Try to hang on Maxine

本当に珍しいDonald Fagenのストレートなラブバラードである。ヒップな文学を学ぶインテリ大学生のDonald Fagenの恋愛。きっとクルマのラジオからはJAZZが流れていたのではないかと都会への憧れは強まるばかりだった。

当時は現在のように引っ越しというのが簡単ではなかったので、布団と櫓炬燵だけを送って、洋服は、大きなバックに詰めた。大きなステレオは不可能、コレクションしたレコード、カセットは少ししか持っていけなかった。特にレコードは厄介だった。手荷物にするしかない。当時、友達とのレコードの貸し借りのために持っていた三菱鉛筆のBOXYという文房具シリーズのレコードケースに入る5枚だけ持って上京した。オーディオ機器がそもそもないのだから、聴く手段もないのに持って行ったのである。お金もないから買えるあてもない。買えて、ラジカセで、実際、ラジカセだけの生活を1年以上続けた・・・それでも以下の5枚のレコードは僕の都会生活には必需品に思えた。

Donald Fagen  『The Nightfly』
Stevie Wonder  『Stevie Wonder Original Musiquarium I』
山下達郎  『MELODIES』
Elvis Costello & The Attractions 『Punch The Clock』
そして発売されたばかりの
The Style Council『Café Bleu』
東京ではどこでレコードを買っていいのかもわからないので、直前に買っていったのだ。

僕は、大好きだったThe Beatles、The Rolling Stones、David Bowieはカセットにし、一番好きだった、Led Zeppelin、King Crimsonは持って行かなかった。

Donald Fagenの『The Nightfly』で、JAZZ、R&B、POPSに目覚めた僕は当時の象徴的なバンドであるPaul WellerのThe Style Councilを筆頭に、モータウンサウンド、R&B、ソウルなどブラックミュージックばかり聴くようになっていた。ハードロックとプログレは東京には合わないような気がしたんだな。本当に情けない迎合男なのだが、なんかダサいと思われるんじゃないかと思っていたのだ。この時期に一気に聴く音楽の幅が広がった。

上京から卒業して、就職して、想定外の、名前も教科書の歴史上の建築物がある土地としてしか名前を聞いたことがない東北のド田舎に最初に赴任し、東京にまた戻るまでの数年間ぐらいの間、Led ZeppelinとKing Crimsonを聴かなかった。
Guns N’ RoseのUse Your Illusion I、Use Your Illusion Ⅱまで聴かなかった・・・不思議な数年間である。

東京でずっとお付き合いしてくれた女性と遠距離だったりしたが、その間は、僕はラブソングばかり聴いていた。そういう時代もオヤジにもあるのである。「Maxine」の歌詞のような格好いい男ではあるわけもないし、それでも彼女は僕の「Maxine」であったのだ。

こんなご時世だとそんな時のことを思い出す。音楽とともに。

The BeatlesのIn My Life、Strawberry Fields Forever のJohn Lennonの心境だ。
(20代でこの境地に到達するとはJohnは凄い。時間の密度が根本的に違うんだな・・・・こんな時じゃなきゃ気が付かない)

時代はレコードからCDの時代になっていた。僕は、東京を離れるとき、東京で買いそろえた電気製品、家具は全部捨てた。送ったのは、月賦(月賦である。ローンではないのだ。ここ肝心)でやっと購入したコンポだけ。東京で買ったCDは送ったが、レコードは持っていくことが出来ずに全部捨てた。

一昨年、ロック喫茶に初めて行った。リクエストが出来る。60年代、70年代のアメリカンロック中心のお店と書いてあったが、10代に憧れたロック喫茶(東北の某有名なJAZZ喫茶には通っていたのだが、30年ぶりぐらいである)である。東京は怖いところだと思った少年は、もう完全なオッサンなので、イギリスのハードロックを平気でリクエストする。このアルバムが無いロック喫茶などあるはずがない。最初に聴く曲は、これでなくてはならない。

Led Zeppelin  Achilles Last Stand

Led Zeppelinの熱狂的なファンであれば異論はない最高傑作Presenceの最高の曲だ。音の塊≒Presenceといっていい圧倒的、肯定的、そして情緒性の一切ない乾いたサウンドに身をさらすだけ

当然、アンプもスピーカーも室内の音響も素晴らしいのであろうが、とにかく、レコードの音に驚いた。残響感というか、その音の奥深さというか。音が鳴ればいい程度の耳しか持たない僕にも違いがわかった。
その後、レコードプレイヤーなどをチープなもので揃えた。何枚かレコードも買った。が、過去にあった数百枚のレコードを捨てたことを思うと何回も買うのかというセコイ考えも過り、お小遣いも少ないので、ライブを優先し、レコードになかなか触手を伸ばすことが出来ずにいる。そもそも部屋が狭いのでレコードの置き場もないのだ。

あまり音には拘らないのだが、レコードはミックス、カッティングなどが音に関係すると山下達郎さんがラジオで仰っていたので、『The Nightfly』のどの種類のレコードを買えばいいのかだれか教えてくれないかな。

その情報を得ていないので、まだ『The Nightfly』のレコードは買えないでいる。

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