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世界が終わりそうな日々に

SEKAI NO OWARI「Hey Ho」が思い出させてくれたこと

 世界が終わりそうだ。
 
 
「今日の感染者はーー」毎日、夜7時のニュース。もう何人でもいいや。何も感じない。不幸な話題に慣れてしまったことがかなしくてあふれ出る涙、なんて持ち合わせていないから、わたしはじっと体育座りをする。
 
 
 ああ、世界が終わりそうだ。
 
 
 iPhoneをいじくりまわしてYouTubeをひらく。最近の邦ロックは似たようなものばっかりでつまらないな、なんて思ったりしてみる。青春、君、片想い、サヨナラ。青さとか甘酸っぱさとはかけ離れたこの状況でそんな曲を聴いたって、かえって気が滅入るような気がして再生ボタンが押せない。でもわたしにはそれ以外に何もないから、音楽が自分の中の「なくても生きていけるもの」に成り下がるのが吐きそうなくらいにこわくて、だからひたすら検索を続ける。

 音楽しかない日々から、音楽すら消えてしまったら、なんて。頭が痛い。ボランティアをやらせてもらうことになっていたロックフェスは、夢や期待と一緒に未知のウイルスがひったくっていった。誰ひとり悪くない、仕方ない。レビューを書いた好きなインディーズバンドにイチかバチかで送ったInstagramのダイレクトメッセージは、二日後に小さなハートマークだけが返ってきた。よく考えたらそりゃそうだよな、このごろ調子乗ってたもんな、と笑ったら少しだけ涙がでた。誰かどうにかしてよと思う。

 そんなことを考えていたとき、ああ、前にもこんなことあったなあ、と、忘れかけた日々を少しずつ思い出した。ぎゅうぎゅう詰めに押し込んだ毛布を引っ張り出すみたいに。強くて真っ直ぐだと思っていた自分自身が折れてしまいそうだと気づいたあの頃、わたしはセカオワを聴いていた。眠れない夜はWALKMANとイヤフォンと、SEKAI NO OWARIだった。でもいつからか、あんなにすきだった彼らの音楽もぱったり聴かなくなって、あれはそう、「Hey Ho」リリースくらいーーー。

 どんな歌だったっけ、なんて軽い気持ちで検索したこの曲はバンド名を疑ってしまうほどに明るくて、どうしようもなく優しかった。
 

“ どこか遠い世界のことなど
どうでもいいやと呟いた
大事にしないとああ、こんなにも
大切なものなんて無いんだなあ “

 世界も、自分も音楽も。どうでもいい気がしていた。世界で何人感染しようとわたしには関係ない、自分を持った生き方なんか才能がない奴がやったってただダサいだけ、音楽が好きなだけで自分は特別、普通の人とは違う、なんて馬鹿みたい。

 Fukaseはそれを、違うという。
どうでもいいと思うのは、大切じゃないと思うのは、あなたが大事にしていないからなんじゃない? という。

“ 汚れた荷物、笑えるくらいゴミみたい
 でもどうしようもなく 大切で “

 よどみまくった空気、テレビをつければ大人の喧嘩、それでもあなたが笑うこの世界がすきだった。ぐちゃぐちゃでダサくてかっこ悪い自分自身が、わたしはちょっぴりすきだった。だからこれでいい。大切なものを大事にするのはすごく苦しくて、はたからはみじめに見えるかもしれなくて、だけど人生をかけてもいいくらいかっこいい。それを忘れていた。

 だからすきなんだ。セカオワは、わたしたちを「誰か」のまま放っておいたりはしなくて、いつだって正解を思い出させてくれる。それは常識だとか正義だとかそういうことではない、「わたしにとっての正解」だ。だからこの、一見ダークな名前のポップバンドがわたしはすきなんだ。
 

 世界が終わってしまいそうな夜、世界も自分もちょっとだけ愛せるように、わたしはこの歌を口ずさむ。そして、彼らが差し伸べてくれたような手をわたしも誰かに、と強く思う。

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