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体の全ての細胞を使い切って歌う男、宮本浩次!!

アルバム「宮本、独歩。」に寄せる想い

光合成、植物は光で栄養を作るが、私は間違いなく宮本浩次の歌で栄養を作っている。冒頭から気持ち悪い事を言うようだが、本気で思っている。ソロ活動を開始した宮本浩次は、他のアーティストのコラボやCMタイアップなど数々の追い風を受け、華々しくデビューした。彼の歌は、魂を削るように歌う。一言一言にとてつもないエネルギーが込められていて、聴くだけで背中を押してもらっているように感じる。デビュー後すぐに売れた訳ではなく、下積み時代があり、もがいてあがいたからこそ生まれた説得力や優しさや深さが、この男の歌にはある。
彼が所属するバンド「エレファントカシマシ」の代表曲「俺たちの明日」では
〈がんばろうぜ〉
というフレーズが有名である。今回のアルバムでも「Fight! Fight! Fight!」の中で
〈もう一丁頑張ろうぜ〉
というフレーズがあるように、頑張れという言葉は、ある種彼らの代名詞のような言葉である。しかしながら、頑張れという言葉は、ありきたりな言葉であり、誰もが挨拶のように口にする励ましの常套句だ。時には無責任な一面もあり、どう頑張れがわからず、腹が立つときだってある。されど、この男がその言葉を曲に乗せると、もう少し頑張ってみようかと思う。その先を信じてみたくなる。ふと疲れたときに、そっと背中を押してくれる力。それが私にとっての栄養である。
「宮本、独歩。」は、ソロ活動初のアルバムでありながら、ほとんどの曲が他のアーティストとのコラボ曲やCMタイアップ曲というとても豪華なアルバムである。
椎名林檎とのコラボ曲「獣ゆく細道」
東京スカパラダイスオーケストラとのコラボ曲「明日以外すべて燃やせ」
などの名曲の中で、主に「夜明けのうた」「ハレルヤ」に注目したい。
 まず「夜明けのうた」である。初めて聴いたときに、声の美しさに言葉を失った。穢れを浄化する天使のような、優しく包み込むような歌である。
〈ふと忘れたふりしてた涙が 頬をつたうよ でも町に風が吹き 明日がわたしを誘いに来る/夜明けはやってくる 悲しみの向こうに〉
天使の声に、心に沁みる歌詞を乗せている、至極のバラードである。普段力強い声の人が時に穏やかに歌うと、異様に沁みいる。くじけそうになっても、前へ進もうと思わせてくれる。
 宮本の歌はいつだって前へ進もうと誘ってくれている。アルバム収録曲「旅に出ようぜbaby」はその象徴のような曲である。進もうと言わず〈転がり続けよう〉という独特な表現が好きだ。「転がる」は、なんだか勢いがあって、多少の障害はうっかり越えてしまいそうだ。旅人や冒険者という言葉は、いつだって挑戦し続けられる。歳を重ねても、守りに入らず新しい世界を探し続けよう。挑戦は若者だけの言葉ではない。と思うと嬉しい。でもやはり、この言葉も五十を過ぎても挑戦を止めない彼の言葉だからこそ、嬉しいのだ。
 私が最も好きな曲は「ハレルヤ」である。これは毎日を生きることへの祝福であり応援歌である。
〈信じてみようぜ自分/強くもなく弱くもなく まんまゆけ〉
インスタなどのSNSで見栄を張り合う昨今で、見栄を張らずありのままの自分で勝負しろと𠮟咤激励されているような気分になる。宮本はインタビューなどでよくこんな発言をする。「一度きりの人生なのだから体のすべてを使い果たしたい」そんな想いで作られているので、宮本の作りだす歌は、熱くて温かい。
 「ハレルヤ」は生きることへの祝福と言ったが、この曲が配信された2月上旬は、コロナウィルスの脅威がゆらゆらと漂い始めた頃だった。また、アルバムが発売された3月上旬では、学校が突然臨時休校になり、ウィルスへの恐怖が波のように押しよせた時期であった。普通の生活は突如普通ではなくなった。日々感染者数と死亡数が増え、遠いものだったはずの死が足元まできていた。こんな時期に「ハレルヤ」「夜明けのうた」は、救世主のようだった。勿論こんな事態を想定して作られたものだはない。しかし、どんな不便な生活になろうが、「生きる」ことが大切であり「命」が最優先事項である。
〈ばからしくも愛しきこの日々を/ああ涙ぢゃあなく 勇気とともにあれ ああ笑いとあれ 幸あれ〉
と締めくくられるこの歌で、みんなで笑って生きようと励まされた。
〈夜明けはやってくる〉
そう、必ず終息の日はやってくるのだ。
 コロナウィルスの感染拡大防止のため、「宮本、独歩。」のコンサートは全公演中止となった。同じく、涙を飲んだアーティストやファンは多くいる。しかし、この困難を乗り切り、また普通の生活が帰ってくる事を願っている。いや、力を蓄え、今までよりも良い生活にしたい。その時には宮本浩次の歌と共にあれ。どうかこれからの世界に祝福あれ。幸あれ。

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