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さよならなんて、言ってやらない

NICO Touches the Wallsの「終了」について

2019年11月15日。
私は職場で泣いていた。
世界一好きなバンドが、「終了」したからだった。
 
 

私がそのバンド、NICO Touches the Wallsと出会ったのは、2011年、アルバム「PASSENGER」がリリースされた頃だったと思う。
出会いのきっかけだったり、ハマった経緯は書き出すとキリがないので割愛。
当時高校生だった私にとって、とんでもなく大きな出会いだった。
高1の3月、初めて自分でチケットを取って、初めてNICOのライブに行った。
バイトの給料は、ほぼ全てCDとチケットとグッズ代に費やした。
それまでインドア派だったのに、フェス参戦までするようになった。
人生が変わった。
私の学生時代には、ずっとNICOがそばにいたと言っていい。
 

社会人になってからは、ライブの日に休みが取れないことが多かった。
だからこそ、行くことができたNICOのライブは、学生時代よりも特別なものになった。4人が楽しそうに演奏しているところを見ると、いつも以上に元気を貰えた。
たくさん笑って、たくさん泣いた。ある時、ライブの一曲目から泣いて、一緒に行った友人に「泣くの早すぎ」と突っ込まれたのは一生忘れない。

2019年11月。私は転勤を命じられ、新しい環境で仕事を始めた。
引越のときも、NICOのCDやDVDは全部持ってきた。慣れない環境で疲れも余計に溜まっていく中、NICOの音楽を聴くと「もう少し頑張ろう」と思えた。ただ、夏フェス出演以降、NICO側から何の音沙汰もないのが気掛かりだった。

2019年11月15日。
仕事の休憩中に、一件のLINE通知が入っていた。
NICOの公式LINEからのメッセージ。私はすぐにそれを開いた。
画像で添付された文章を、何度も何度も読み返した。
どうあがいたって、「終了」の文字が消えることはなかった。
気付いたら涙が止まらなくなっていた。
職場にいるというのに、私はずっとすすり泣いていた。

そのとき上司に声をかけられたので、仕方なく振り向いた。
目を真っ赤にして泣いている私を見て、彼女は「どうした?」と聞いてきた。
私は、いや、好きなバンドが、活動休止みたいな感じで、つらくて、と答えたと思う。
すると彼女は、「………そうか、それはつらいな。泣きなよ」と、離れていった。
その上司の言葉も、私は一生忘れない。

家に帰った。
積みあがったCDの山。過去のライブのグッズ。スマホの待ち受けにしていたメンバーの写真。
昨日まで大好きだったものを見るのが、つらくて仕方なかった。
 

ギターボーカルの光村が路上ライブをした、と知ったときは流石に驚いた。私の地元にも訪れていた。
ああ良かった、音楽そのものを手放したわけじゃなかったんだ、と安心した。まあ彼らが音楽から離れられるなんて思っていないが。
その頃には気持ちもそれなりに落ち着いていたので、新たな旅立ちを応援したいな、という気持ちになった。
だが何故か、路上ライブ映像の再生ボタンを押す勇気が出なかった。

「終了」発表からしばらく聴いていなかったNICOの音楽を再び聴いて、ライブDVDも見返した。
私は、4人で作り上げる音楽が好きだったんだ。楽しそうに演奏する4人を見るのが好きだったんだ、と、そこで気付いた。
 
 

時間が経って、何となく、今なら気持ちに折り合いがつけられるようになった、気がした。
発表当時は仕事のことで手一杯だったが、いつか率直な気持ちを書きたいな、という気持ちがあったので、今この文章を書いている。
正直に言えば、私は「終了」に対して、未だに納得していない。
納得なんてできるはずがなかった。

だって、まだまだ4人が作り出す音楽に触れたい。
元気を、前に進む勇気を貰いたい。
ライブで、満面の笑みを浮かべながら、楽しそうに演奏する4人の姿が見たい。

私が最後に4人を見たのは、2019年6月9日、‘‘QUIZMASTER’’大阪公演だった。
いつもなら仕事が入る日だったが、なぜかその時だけ運よく次の週にずれ込んで、運よくチケットが取れたので、会場に足を運んだのだ。
その偶然が、神様が「もう二度と見られなくなるから」と与えてくれた最後の機会だった、なんて思うのは死んでもごめんだ。
 
 

これは私の、一人のNICOファンの我儘だ。
「終了」を選んだ彼らに、こんなことを望むのは酷なのかもしれない。
それでも私は、再び4人が揃って演奏するところが見たい。
見られると信じて生きていく。
復活する保証なんてどこにもない。
それでも、私は待っている。
 

さよならなんて、言ってやらない。

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