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持たざるものを蔑まない奥田民生

浜田雅功と槇原敬之も慈しんだ「貧しさ」

登場人物、不肖わたくし、Yとします
その友人、Tとします

Y「けっこう貧乏な家に育ったんだ」
T「え?」
Y「実を言うと、俺の育った家は、だいぶ貧乏だった」
T「そうなんだ、それは知らなかったよ」
Y「でもね、身内に恥をかかせないように言っておくけど」
T「うん」
Y「本当に幼いころは、それに気付かなかったんだよね」
T「え、どういうこと?」
Y「うちは貧乏なんだなあって、そう感じることはなかった」
T「きみが鈍感だったっていう意味?」
Y「いや、育ててくれた人が努力してくれたんだと思う」
T「努力?」
Y「努力というか、工夫とでも言ったらいいのかなあ」
T「貧乏だと気づかせない工夫っていうこと?」
Y「そう、あまり具体的には言えないけどさ」
T「それは素晴らしい人に育てられたね」
Y「そうだね、でも物心がついてからはさ」
T「うん」
Y「外で食事をする時、値段を見るようになった」
T「自分の家が貧しいって分かったわけだ」
Y「そう、だから楽曲『チキンライス』に共感する」

<<いつも頼んでいたのはチキンライス>>
<<親に気を使っていたあんな気持ち>>

T「好きなの、『チキンライス』を食べるのが?」
Y「いや、料理としては、大好きというほどではない」
T「安いメニューを注文することが重なるわけだ、いつかの自分と」
Y「そう、まさに。たとえば…(※以下省略します)」

<<昔話を語り出すと決まって>>
<<貧乏自慢ですかと言う顔するやつ>>

T「実を言うと俺もさ」
Y「え?」
T「そんなに裕福な家に生まれたわけじゃなかった」
Y「へえ、そんなイメージなかったけど」
T「いちおう大学まで通わせてはもらったよ」
Y「それは知っている」
T「でもお金がなかったら、奨学金を借りた」
Y「それは…もう返し終わったの?」
T「うん、30代に入ってからかな、ようやくね」
Y「きみも大変な思いをしたんだね」
T「でも若かったからさ、体力はあったし」
Y「そうだね」
T「俺たちもいい歳だし、そろそろ贅沢をしたいもんだと思う」
Y「そうだなあ、食べたいものを食べるくらい、してもいい気がする」

<<今ならなんだって注文できる>>

T「でもさ」
Y「うん」
T「奥田民生氏は、貧しいオジサンを蔑んではいないと思うんだ」
Y「どの作品のことだろう?」
T「あれは覚えてないの、楽曲『愛のために』ってやつ」
Y「ああ、ドラムスが格好いい曲だよね」
T「そうそう。でも、あの曲に登場するオジサンは…」
Y「貧乏そうに感じられるってこと?」

<<フケた男が さんざんからんで人生語る>>
<<おっさんわかるよまあそう言うな>>

T「境遇に満足していたら、このオジサンは絡んだりしなかったと思う」
Y「たしかに、そうかもね」
T「たぶん食べたいものを食べられはしていないんだと思うよ」
Y「そういえばさ、いまや俺たちもオジサンだよね」
T「うん、少し前まで青年だったような気さえする」
Y「若い人に絡まないように気を付けたいものだな」
T「だけど奥田民生氏は、必ずしも嫌がってはいないとも思うんだ」

<<明るい日本の見本となった>>
<<だけども雨も降り風も吹く ステキな日本を守ってくれる>>

Y「なるほど」
T「連帯っていうか、慰めっていうか」
Y「そういう気持ちが溢れているような気がするね」
T「オジサンの姿や愚痴から、何かを受け取ったんだと思う」
Y「だから『愛のために』は力強い曲に仕上がったわけだね」
T「まあ、奥田民生氏の実体験なのかは分からないけどさ」
Y「でも嬉しいね、オジサンのために歌い上げてくれているのだとしたら」
T「それなら俺らへの励ましでもあるわけだし」
Y「そうだね」

<<そろそろ僕が その花を咲かせましょう>>
<<僕らは僕らでそら行こう>>

T「もしかすると主人公も、まだ貧しいのかもしれない」
Y「一緒に進んでいこうと歌ったのかもしれないね」
T「だとすると、奥田民生氏の体験談ではないのかもしれないな」
Y「何にせよ良い曲だね、これは、勇ましい」

<<せまる強敵打ちのめせ>>

T「ところで何を食べようか」
Y「きみ、昼は何を食べた?」
T「何だっけ、思い出せないや」
Y「…直近の食事を思い出せないのはトシのせいなのでは」
T「そういうきみは、なに食べたの」
Y「…」
T「トシとったねえ、お互いに」
Y「久しぶりに会ったんだから、お寿司でも食べようか」
T「寿司ねえ、それもいいなあ」
Y「いや、でも俺らには俺らの『身の丈』がある」
T「たしかにそうだね」
Y「安い定食屋さんにでも行こうか」
T「そうしよう!」

<<俺はまだまだチキンライスでいいや>>
<<僕ごのみの ワールド オブ ワールド>>

Y「豪華じゃなくても美味しいものはある」
T「そういう世界で良かったよね」

***

何か月か前の「会話」です。いま外食に出かけるのは、いくぶん難しい情勢にあります。飲食店を営まれる方々が、とりわけ小さくとも良心的な店を切り盛りする御方が、何とか守られることを願っています。そして豪華な寿司を食べられる日が来ることも(これは私欲だな)。

※<<>>内は浜田雅功と槇原敬之「チキンライス」、奥田民生「愛のために」の歌詞より引用

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