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心の隙間に立てられたメロディーフラッグ

BUMP OF CHICKEN、いつも見つけてくれてありがとう

 新型コロナウイルス感染症は、私達のあたり前だった日常を、窮屈な日常へと変えてしまった。学校や仕事に行くことができず、外に出ることもほとんど許されない毎日。家に籠ることでしか、感染から身を守ることができない閉塞感。大切な家族のはずなのに、日に日にけんかも増えていく。大好きな音楽も、ゆっくり聴くことができなくなっていった。
 
 

 小さなマンションでは、私がひとりになる部屋は、洗濯機のある洗面所だった。たった3畳ほどの小さな空間。お風呂場のドアを開けると少し空間が広くなる。そこでスピーカーから音楽を流すと、よく響くのだ。洗濯物に囲まれ、洗面台のしたに座り込みながら音楽を聴くことだけが、毎日の私の癒しとなった。
 
 
 

 流れてきた歌のはじまりは、アコースティックギターの優しい音色。
 
 
 
 

『疲れたら ちょっとさ そこに座って話そうか いつだって 僕らは 休む間も無く さまよった』
 (メロディーフラッグ BUMP OF CHICKEN )
 
 
 
 

 最初のワンフレーズを聴いた瞬間、緊張していた気持ちがホロッと溶けるというか、ポロッと崩れるというか、そこにそっと横たわるような、そんな感覚になった。
 
 

 なんて優しい声なんだろう。藤くんの語りかけるような歌い出しに、「はぁっっ」と大きなため息がこぼれた。
 
  

 「疲れているんだ、私。」
 
 
 
 
 

『少しでも そばに来れるかい? すぐに手を掴んでやる』
  (メロディーフラッグ wanon )
 
 
 
 
 

 そう。BUMP OF CHICKEN は、藤くんは、いつだって私の疲れた心の隙間にそっと入ってきてくれる。誰にも、自分でさえも気づかない、小さな小さな隙間に。そんな心の隙間を見つけてそこに温かい息を、ふーっと優しく送り込んでくれる。藤くんは、心の隙間を見つけるのが得意だなぁっていつも思う。
 
 
 
 

 BUMP OF CHICKEN との出会いは一年前だった。仕事と保育園のお迎えの帰り、スーパーで子供がわくわくしながらお菓子を選んでいた。そんな何気無い日常のひとこまのなか、ふと店内でかかった音楽が『Aurora』だった 。
 
 
 
 
 

『もうきっと多分大丈夫 どこが痛いか分かったからね 自分で涙拾えたら いつか魔法に変えられる』(aurora BUMP OF CHICKEN )
 
 
 

 「なんて優しい歌いかたなんだろう。なんて優しい歌詞なんだろう。」
 
 
 
 

 その時も、疲れた体と心が、ふわーっと軽くなるような、ホロっと溶けるような感覚になった。たとえば、自分が氷のように冷たい雪で、温かい藤くんの手のひらに雪という私が落ちて、すーっと消えるような感覚だ。もちろん自分が消えてなくなったのではない。温かい水になれたような、そんな感じだった。
  
 
 
 
 
 
 仕事も自粛しているなか、先日、久しぶりに職場に行った。みんなは久しぶりに会ったからか、とても嬉しそうで楽しそうだった。けれども私はうまく笑えなかった。自分はまともだと思っていたが、自粛生活のなかで、かなり気持ちが塞ぎ混んでいたことに気づいた。みんなが笑っているのが不思議だった。輪に入れない自分にまた幻滅する。ああ、私って本当に暗い奴だなぁと。
 
 
 
 
 

 そんな時にまた『メロディーフラッグ』が藤くんの声で、頭の中で鳴り始めた。
 
 
 
 

 『生きてきた分だけ 増えた世界が 作る迷路 その中で僕らは 目印を深く 突き刺した どのくらい遠く離れたの? いつから独りに慣れたの? 風に揺れる旗の様な あのメロディーを思い出して』 (メロディーフラッグ BUMP OF CHICKEN )
 
 
 
 

 フルートなどの楽器のように、隙間にふーっと息を吹き込むと音が生まれるように、藤くんがまた私の心の隙間に、音を吹き込んでくれた。藤くんが立ててくれた音の旗。それこそが、私にとって『メロディーフラッグ』という曲そのものだった。
 
 
 
 
 
 

 長い前髪の藤くんが私は大好きだ。でもそれはきっと、視界的には前がとても見えにくいはずだ。けれども、見えないものを見ようとしている藤くんはいつも、私のように世間のなかで小さく生きてる者たちを見つけてくれる。そして、隙間に音を吹き込んで、私の手を掴んでくれる。
 
 
 
 

『少しでもそばに 来れるかい? 必ず見つけてやる』
  (メロディーフラッグ BUMP OF CHIKEN )
 
 
 

 いつもありがとう。見つけてくれてありがとう。私はこの先もずっと、立ててくれた音の旗を目印に、生きていく。

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