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ラッパー・KZの音楽

私にとってのヒップホップ

音楽は何処までいっても娯楽なことが良いことではある。ただ、ふと自分の感情に踏み込み、音楽を通して自分と対面させられる時がある。この瞬間だけは音楽をすぐ手に取れるような安易な言葉での表現が難しくなる。このアーティストの音源やライブは、そういった瞬間とよく出会う。その時々の自分と相対するのは時に辛く、時に尊い。
KZの言葉は嘘が無い。アーティストとして、ラッパーとしての演出というより1人の人間としての矜持を感じる嘘の無さ。

仕事や生活を歌った「job」。ブルーライトやキーボードに縛られ起きては眠っての繰り返しと冒頭から現実を語るこの曲は、幸せは諦念で生まれるでもなく真っすぐ歩いて辿り着けるものだと解釈する。勝ちに行く資格はどの人生にもある。
そんなKZにお前と会った夜を覚えてると何度も歌われる「Breathless」。誰かになるより己を認める。人間賛歌の本質を訴えるようなラスト8小節。<嗚呼 人生は綺麗>と言い切るこの曲に救われる人達が間違いなく居る。正しさを未だに探してしまう自分も漏れなくその一人だ。

※「」内はKZ 1stアルバム「PULP」収録の曲名を引用
※< >内はKZ1stアルバム「PULP」収録のBreathlessより歌詞を引用

「Let go」では、いい音楽を聞くと泣きそうになると呟くように歌う。音楽そのものの価値以外にも、その音楽を通じて感じる人間関係や尊い時間にも泣きそうになる。非日常のようなパーティやライブすら日常として愛せるなら、どれだけ幸せな事だろう。特別なことをせずとも幸せには自分で辿り着ける。これはやはり諦念ではないはず。
そんな日常の延長戦には、必ず自分を含めた彼や彼女の現実がある。「Seize the day」。自分にとってのソウルの定義のような曲だ。理不尽で作られた悲しみに負けるわけにはいかない。負けたくない。
大それたことじゃない、普遍的にある希望の歌だと思う。生きるとはたぶん踊ることだと歌う「ダンスは続いていく」。誰かが測る正義は目を瞑り、夜にだけ輝く事があっても良いと純粋に思う。好きな音楽を聴いている時だけでも自由になれたらと強く願う。

※「」内はKZ 2rdアルバム「CASK」より曲名を引用

所詮、他者に向けてのどれだけ練った発信も他人事なのかもしれない。その人本人が変化や気づきが無ければ何も変わらないかもしれない。ただ、それでも願う。タイトル通り、「norito」だと解釈する。強制でも押しつけでもなく提案に近いそれに感じる。私はこの曲をライブで見た時どうにもできなくなり涙を流すしかなかった。ただただ立ち尽くした。幸せや希望を優しく願う人が、目の前にいることが奇跡に感じる。それだけで自分も自分の周りもより良い方に進み、連れていきたくなる。それが一歩目な気がする。
欲しいのは金、ただそれだけ。一見、汚く見えるこの一文は人間を素直に表している。特にKZは現実から浮かない表現者だとこの曲を聴いて感じた。「that’s it」。儲けをラップに費やすこと。ラップすることで上に上がり、ラップすることで幸せになる。ある種、KZの決意表明でもあるようなこの曲に男気を感じ胸が熱くなる。前を向いて進んでいくからこの人の曲は説得力を持ち、輝く。そうしてまたKZを通して自分と出くわす。

※「」内はKZ 3rdアルバム「norito」より曲名を引用

前述したように、出くわした自分はその時によって違う。好きな音楽を聴ける時間を褒美として祝うような時もあれば、音楽を聴いている場合じゃないと気づかされる時もある。ただ、どんな時でもKZの曲は優しく平等だ。リスナーやオーディエンスを、時に刺し時に包む。私にとってのソウルやヒップホップの定義のような人だ。
甘えでも諦念でもなく、純粋に人間賛歌であるこの人の音楽をこれからもずっと聴いて生きたい。

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