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宮本浩次と見る夜明け

〜1stアルバム「宮本、独歩。」を聴いて〜

危機が襲っている。
2020年が始まった今、エンタメ文化が生活に必要の無いものとして世間で扱われるのを目にすることも少なくはない。正体不明のウイルスという目に見えないものが蔓延すると、社会に生きる人間といえど自分に有利な正義を信じるしかない。自分も漏れなくそうなのだ。誰のせいにもできず、仮想敵を作る。人が人を監視し単純な嘘が広がる。
そんなどこか9年前の今頃に似た空気感が漂うこの国に、人間賛歌が響く。

エレファントカシマシのボーカリスト、宮本浩次が自身初のアルバム「宮本、独歩。」をリリースした。4人ではなく1人。グループではなくソロ。
1人踏み出したその一歩は宮本の歌の全てが溢れている、処女作にして最高傑作を感じる一枚であった。

宮本は自身のバンドでも、その時々に自身の趣向に振り切った作品を残している。打ち込みが中心の「good morning」、小林武史がプロデュースを手掛けた「ライフ」、30年目に出した現在の最新のアルバムでも挑戦的なメロディ、アレンジを加えて常に進化し続けている。
そんな宮本の1stアルバムは、どの曲も個性的である。ブラスアレンジでアルバムの始まりを華やかに告げる<ハレルヤ>。
歌唱力も去ることながら宮本の憑依力を再確認する歌謡曲<冬の花>。
宮本の真骨頂である人間賛歌’’夜明けのうた’’、高橋一生へ提供したダンスミュージックをセルフカバーした<きみに会いたい-Dance with you->。
ギターコーラス、プロデュースワークを横山健が担当したパンクチューン
紅白出場でも話題になったあの椎名林檎との共演作<獣ゆく細道>。
陽気で明るいポップなメロディが印象的な
宮本の魅力の一つでもあるストレートな歌詞が遺憾なく発揮されている
まさかの宮本がループするビートの上でラップに近い歌唱をする<解き放て、我らが新時代>。
30年生き残り続けた同志である東京スカパラダイスオーケストラがシンガーとして客演に迎え入れた<明日以外すべて燃やせ>。モータウンを彷彿とさせるストリングスのアレンジの上でメロディが様々に展開していく<旅に出ようぜbaby>。
自身の事を歌詞にしたような宮本独特の飢餓感が伝わるアップテンポなラストナンバー、<昇る太陽>。
全12曲、様々なアレンジを駆使してあらゆる宮本の歌が聴ける。1stにしてベストアルバムのような、ライブハウスやホールを騒がすロックスターであり朝のテレビ番組からCM、映画主題歌までエンタメ界を横断して歌を届けるポップスター宮本の誕生を感じる。

私がこのアルバムで特に好きなのは、<夜明けのうた>である。エレカシで活動している頃から宮本浩次に惹かれるのは、自身を極限まで煮詰めた末に放った歌が生きることを鼓舞し称賛するような、勇気溢れる人間賛歌だからである。共感や同情の類ではない失意の底から活力がみなぎるような歌を今、不安と怒りと不信感が募る今、聴いてほしいと思う。
なぜならこの曲は、希望の歌だ。悲しみの向こうにも、優しさの向こうにも、夜明けがやってくる。夢見ること、新しい自分を、新しい日々を、新しい世界を願うことで夜明けがやってくる。夜明けが来れば、愛する人の笑顔に出会える、好きな街や好きな人に会いに行ける。そのためにも歩みを止めるわけにはいかない。

改めてエレカシとはまた違う、ポップスターの宮本だからこそストレートに伝えられる愛情や優しさが詰まってるアルバムだと思う。肉体も思考も全て歌に捧げているような宮本が私は好きだ。聴く人が聴けばタイアップばかりの寄せ集めのアルバムのように感じる人もいるのかもしれない。ただ、私は表現力、歌唱力、思考など宮本の全てを感じれるアルバムのように感じる。
音楽は私にとって心身に関わり人生をより良く生きる薬であり、ヒントであり、生活必需品である。私はこれからもエレカシを、宮本の歌を聴いて生きていきたい。そう願うリスナーがここにいる時点で不必要なわけがない。
今日も夜明けを今か今かと待ちわびる。

※「」内はエレファントカシマシや宮本浩次のアルバム名から引用
※< >内は宮本浩次のアルバム「宮本、独歩。」より曲名を引用

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