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満たされている人を満たす音楽

夜の本気ダンスは正面突破

日本のロックバンドを聴くようになったきっかけは、15歳という何事に対しても敏感な年齢に、高校生活に得も言えぬ息苦しさを感じ始めた中で耳にしたBUMP OF CHICKENの音楽が刺さったからであったし、それから12年余、音楽がハートを突き刺した瞬間というのは、大抵人生に凹みが生じている時であった。
 

そんな自分の常識を覆したバンドが居る。
夜の本気ダンスだ。
 

夜の本気ダンスの音楽は弱った心の隙間に入り込んでくるものじゃない。
彼らはネガティブを歌わない。
かといって無理に元気づけることもしない。
ただただ真摯にロックミュージックを奏でている。
 

初めてライブを目にしたのは2018年の9月。
好きなバンドの企画の対バンゲスト、バンドに出会うきっかけとしてベタな理由であろう。

ライブを見るのは初めてだが、そのインパクトから名前だけは随分と前から知っていたし、その名前の奇妙さのせいで、長い間穿った印象を持っていた。
 

しかしそんな偏見はライブを見て一蹴させられた。

王道。

彼らの演奏するロックミュージックに真正面からスパーンと斬られた。

この頃思う。
最近のバンドを見渡すと、皆が脇道ばかり行っているせいで、王へと進む道がガラ空きなのではないか?

目の前にいる、ボーカルギター、ギター、ベース、ドラム、ロックバンドとしてスタンダードな編成のこの4人組はそんな王へ道をまっすぐに突き進んでいる。
 

高身長のボーカルは、そのスタイル良さをパフォーマンスにも活かして、半数近くの楽曲でハンドマイクを使用し、ステージ上を端から端まで歩き回ったり、時に名の通り本気ダンスをしていた。
本来ギターボーカルである人間がハンドマイクが使えるのには、ギタリストという強い相棒がいるからだ。

ギター一本でフロアを沸かせる。
力強く、大胆で、攻撃的なギター。
ギターギターしているギター。なんともアホっぽい表現だけど、これが自分が出来る最大の表現。
ザ・ギタリスト、ロックバンドの花形を全うする姿を見て

「かっこいい……」
思わず声が漏れた。

演奏も、音も、パフォーマンスも、単純に容姿も。なんて格好良い人だ。

そうだよ、ギタリストはヒーローでなければ。近年なかなか出会えなかった、ヒーローはここにいたのか。
彼のギターのプレイに、私の心は強くは惹かれた。
 

その後すぐに夜の本気ダンスについてあれこれ調べた。
メンバーの名前も知らなかったから、まずは公式HPのプロフィールを開いてみた。そこに載っていた、人力ダンスミュージックという文言は、ちょっとダサいんじゃないかなと苦笑いしたが、いやしかし代わりになる単語を出せと言われても難しいな、その通りだし。と妙に納得した。

そして当時、結成から10年になるが、メンバー遍歴が多く、オリジナルメンバーは今ではドラム鈴鹿氏ただ一人だということ。特に目を惹かれたギタリストは、バンドがメジャーデビューした後に加入してから、まだ2年足らずだという事実にとても驚いた。
メジャーデビュー後に合流して、このバンドにとって大きな存在であるギターを任されるというのはどんな重圧だろう。
それでいてあの肝の座り方……只者じゃないな。

西田一紀氏、尊敬する人の項目に、先程覚えたばかりのその名前が新たに追加された。
 

新しいアーティストを知った時にまず迎えるイベント、既存曲を知る。
知らない曲を一気にたくさん聴くというのは、労力を使うが、それ以上のワクワク感たるや、何度経験しても堪らない。
その中でタイトルだけで目に留まったものがある

This is pop

強烈に見覚えがある。イギリスのロックバンドXTCに同名の楽曲があるのだ。
そこから引用したものではないか?
晴れないモヤを抱えたが、数日後ボーカル米田氏がInstagramのストーリーにXTCのジャケットをアップしたのを見て、疑問は確信へと変わった。

XTC、ひねくれPOPだなんて呼ばれているけれど、私にとっては王道のロックバンド。
なぜなら物心がついた頃からずっと、我が家のお出かけ時の車内BGMだったから。だから誰もが知っているような、ビートルズと同じくらい知名度のあるバンドだと思い込んでいたけど、どうやらそうではないようだと知って以降、XTCに影響を受けているバンドというのを日本ではあまり知らなかった。なので久々にホームランを打ってきたバンドのルーツにその名前があったことが嬉しかった。
 

出会い日の次にライブに夜の本気ダンスの足を運んだのは数ヶ月後のワンマンだった。

楽しきゃいい、盛り上がれればいい、そんなライブクソ喰らえだ。
常日頃からそう感じている私にとって、彼らのワンマンライブのあらゆる濃度の濃さは大満足だった。
 

そして今ではすっかり夜の本気ダンスに魅了され、ライブにはできる限り足を運んでいる。

しかし、寝ても醒めても彼らのことばかり考えているわけでも、彼らを最優先に生活しているわけでもない。

一生本気で大好き、といった類の言葉は、一生本気で大好きだと思っていたBUMPの新譜を手に取らなくなった時に使わないと決めた。
また、夜の本気ダンスがいないと生きていけないとも思わない。
 

彼らのライブ定番曲、fuckin’ so tiredはこんな歌い出しで始まる。
 

“ バンドなんかのせいで何十倍も楽しい
  彼女とのデート、ダメになりそう ”
 

作詞担当の米田氏は、バンドをやる側としてこのフレーズを書いたけれど、聴く側の私にとってもそうだ。
例えば、思いを寄せていた男性と初めて二人で遊びに行った帰り道の、ぎゅっと手を握ってくれたあの瞬間。バンドなんかよりも何十倍も楽しいことを知っている。

では何故、知っていても尚、バンドを追い続けるのか。

その答えは、夜の本気ダンスが6月にリリースしたアルバムFetishのリード曲、Sweet Revolutionの冒頭を引用したい。

“ 最高に最高を積み重ねる それが人生 ”
 
 
 

現在の状況下で思うのはこんなこと。
そりゃあなくても生きていけるけれど、
あってくれたらもっといいよな。
 

5月9日、夜の本気ダンスは各々の自宅からリモートでのLINEライブを行った。
本来は3月29日に行うはずだったワンマンライブの振替公演日だったが、状況を鑑みてあえなく中止。
仕方がない、頭ではわかっていても、こればかりは悲しかった。

そんなファンの心情を汲み取ってか、ライブ映像やこの日限りのアレンジセッション、コーディネート対決など様々なコンテンツを用意してくれ、配信は1時間半にも及んだ。
途中モノボケを振られた西田氏は、包丁を腹に突き刺す素振りを見せたあと、血反吐に見立てたトマトジュースを吐くという猟奇的なギャグを披露し、世の中がどのような状況であっても、この肩は変わらないようだと、私の胸を安堵させた。
 

配信の最後、新曲SMILE SMILEをデジタルリリースすると発表があった。

リリース日となる6月10日は、来月から始まる予定である全国ツアーの2日目に当たる。
このツアーがどうなるのかはわからない。私が望む結論には至らないかもしれない。
だけれど、どのような結果になっても、こう答えたい。
 

夜の本気ダンスの皆さん
踊れる準備できてますよ。

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