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自称迷子、Starrrrrrrと出会う

[Alexandros]、[Champagne]へ感謝を込めて

2020年5月15日、サカナクション山口氏と一緒にミュージックステーションにリモート出演していた[Alexandros]川上氏。
[Alexandros]は数ある人気曲、代表曲があるバンドだが、その日彼が弾き語りをしたのは2013年に発売された「Starrrrrrr」だった。

時を遡って2014年、絶賛人生の迷子中だった私はこの曲と出会った。

当時の私は仕事を辞めたばかりで、虚無感や絶望感、全てのものへの諦めといった感情にのみ浸り、何もする気が起きず何も考えられず、毎日が過ぎるのをただ家に引きこもって待っていた。
仕事を辞めたことで「少し嫌な事があったからすぐに逃げた」「逃げ癖がついた」「ただ甘えているだけ」といった周りの声も多く聞こえてきた。退職をしてしまうなんて早まったかもしれないという後悔も自分の中で生まれていた。
「自分が何をしたくて、どうなりたくて、何が出来るのか…」を考えたくても「自分には何もない、何も持っていない」という思考だけが頭の中を支配していた。とにかくあの頃の私はそれまで味わったことのない暗い迷路の中で完全に迷子だった。

時を同じくして、私はNICO Touches the Wallsに出会う。そしてNICO光村氏のバンドマン繋がりで川上氏や庄村氏を認識し、初めて[Champagne]というバンドの存在を知った。
その時の最新アルバムだった「Me No Do Karate.」を聴き、特段耳に残るメロディーと歌詞だと感じたのが「Starrrrrrr」だった。
前述した通り、その時の私は無職の引きこもりでとにかく時間は有り余っていた。昼夜を問わず何度もこの曲をリピートして聴くようになった。

イントロのギターカッティングやエッジの効いたドラム、ギターソロ、うねるベース、全体的にスマートでクールなアレンジなのに思わず脇目も振らずに大声で叫びたくなるメロディーライン。
そんな考え抜かれた音のカッコ良さはもちろんだったが、特に歌詞は心が抉られる程の衝撃だった。

《私の昔の理想は 跡形も無くなった》
《私の元の表情は 既に死んでしまった》
だけど、いや、だからこそ
《もう一度 性懲りもないままに 立ち上がって》
《もう一度 何も考えないで 思い切って》
とにかく動き出せばいいのかもしれない。
この曲をリピートすればする程、そう思えるようになっていった。

そして
《泣けば良い 誰より笑えば良い
押し殺した その感情曝け出して》
《どこまでも 私は私だから
貫いて 誰に何を言われようとも》
その時の私が1番聞きたかった言葉をこの曲は伝えてくれていた。

私は自分を許せなかった。「逃げ出した」と周りから言われることには反発心もあったけど、自分でも自分の決断に自信が持てずに後悔の感情に囚われていたから。
でも私は《彷徨って 途方に暮れ》ながらも
《新しい方角へ》行く事を決めた。自分で、自分が、決めた。

それまで《光る誰か見て 私は泣いた
己と見比べ ただただ泣いた》し、
《頭の中では完璧だった
ところが外に出そうとした時に 「あっ」と気付く》ことで自分の不甲斐なさに落ち込む事しかしてこなかった。

でも、だからこそ、この曲によって自分には覚悟が足りなかったと思い知らされた。
前に進みたいのなら《昔の自分にとどめ刺して》振り切って行く必要がある、とも。

この曲は2012年のRUSH BALLのトリ、サカナクションを観ながら称賛だけをして悔しさを見せない周りのバンドマンに対する憤りや闘争心から生まれたという。
会社員をしながらの下積み、バンド名の改名、メンバーの交代や勇退…
川上氏や[Alexandros]は私には想像もできない困難をずっと乗り越えてきているのだろう。
経験に裏打ちされている。だからこそこの曲は遠くまで響き渡る。

この曲には「大丈夫だよ」と寄り添って頭を撫でてくれるような優しさはない。「自分の信じた通りにやれよ」と背中を叩いて喝を入れてくれる。この曲に溢れているのは「ここで負けてたまるか」という強烈な悔しさで、周りから何と言われようと高みを目指していく揺るぎない強さだ。

バリバリと仕事をこなして、上司にも後輩にも慕われて信頼されて、プライベートは友達との時間を楽しんで充実して、素敵な人に出逢って結婚して……、そんな風に思い描いていた自分になれなかったことが、要領良く生きていけない自分自身が、私は悔しくて情けなかった。だから少しでも抗いたいと願った。変わりたいのではなく、変えたいと強く願った。
仕事を辞めたのは逃げたのではなく、その1歩を本当はすでに踏み出していたということかもしれない。だとしたら、私は迷子ではない。自分の意志で、自分の道を修正している。
私は私が思う以上に不器用で、負けず嫌いで、諦めた振りをして全然諦めていなかった。
その事をこの曲は、それを奏でる彼らは気付かせてくれた。

あれから6年経った今もまだ迷う事はある。まだ完全には変えられない。まだずっと悔しい。
でも私はこれからも必ず自分の意志で決めて、自分の意志で進んでいこうと思う。

《繋がっていく 繋がっていく
大人になり破いた夢》
《連なっていく 連なっていく
その続きを 今 生き抜いていけ》

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