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2017年8月30日

えり (31歳)
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僕の方こそありがとう

Mr.Children “Thanksgiving25” 8月6日、日産公演を終えて

 Mr.Childrenというバンドは一体どれだけの人々の人生に音楽を響かせ続けてきたのだろうか、と、つくづく思わされた一日だった。

 2017年8月6日、日曜日。日産スタジアムの真上には抜けるような青空が広がっていた。台風5号の影響が心配された天気も、全く問題なさそうだ。スタジアムの周りを取り囲むように随所に設置されたフォトスポットやツアートラック、グッズ売場、カキ氷やフードを売る屋台には昼前から多くの人が列を作っている。皆、思い思いに今日という日を存分に楽しんでいる様子が伺え、さながらお祭りのようだった。
 西陽が強まってきた17時過ぎ、25周年を記念するスタジアムツアーの2日目が幕を開けた。一曲目「CENTER OF UNIVERSE」からボーカル桜井和寿のテンションは最高潮だった。いつものように全身を派手に動かす身振り手振り、ステージを上手から下手へと縦横無尽に走り回り、会場を埋め尽くす7万人の熱狂を誘った。
「Thanksgiving(感謝祭)」というツアータイトルに相応しく、次から次へとヒットチャートを賑わせてきた曲ばかりを立て続けに数曲演奏し終え、桜井はこう叫んだ。
「今日は出し惜しみしません。皆さんに喜んで貰えるように、あんな曲やこんな曲を用意しました!」
その言葉に嘘はなかった。どの曲もイントロが流れるだけで歓声が上がるような、所謂メジャーな曲ばかりだった。そう、いつだってMr.Childrenはメジャーのド真ん中を進んでいるようなバンドなのだ。

 1992年、彼らがデビューし瞬く間にブレイクして以降、J-POPの歴史はMr.Childrenと共にあったと言っても過言ではないと思う。それはもうMr.Childrenの音楽を好きか嫌いかに関係なく、J-POPを聴く人間にとってMr.Childrenという音楽は避けては通れない存在だった。印象的なイントロや、誰もが口ずさみたくなるようなメロディ、さらに桜井和寿による時にトリッキーな言葉遊びが散りばめられた彼らの楽曲は、常に私たちの日常に隣り合って存在していた。
 かくいう私もMr.Childrenの音楽には随分お世話になった。まだ音楽というカルチャーに出会う小学生時代、当時高校で軽音楽部に所属していた兄が自室で練習していた曲、それがミスチルの「Over」だった。正確に言うと兄はベース担当だったのだけど。それ故、私が人生で初めて覚えたJ-POPは「Over」のベースラインだ。
 中学生の時、初めて友人から借りたCDは「口笛」だった。高校3年で進路に迷っていた時には布団の中で「終わりなき旅」を聴いて泣いたりもした。社会人になりクリスマスを会社で過ごした夜には、帰り道で「365日」を聴いて泣いた。最近では「あんまり覚えてないや」を聴き、年老いていく両親に良く分からない切なさを感じたばかりだ。
 Mr.Childrenの音楽には、あらゆる人々の暮らしが詰まっている。誰かと共有したい喜びや、嬉しさ、人生の迷いや挫折、どうにもできない寂しさ、それでも毎日を過ごしていかなくてはならない歯痒さ…多くの人が胸に抱えている言葉に仕切れない多くの想いを、ボーカル桜井和寿は音楽として昇華してくれているのではないだろうか。だからこそ、多くの人はMr.Childrenの曲を人生の糧にしているのだ。だからこそ彼らは25年間も第一線を走り続けて来られたのだ。

ある曲の途中、桜井は言った。

― 10周年を迎えたときは、僕らも若かったし「10周年を迎えてどうですか?」と問われても、そんなもの事務所やレコード会社の戦略で自分たちにとっては特に何でもない。今、こうしてライブに足を運んでくれている人達だって、どうせその内、飽きて来なくなっちゃうんでしょって思ってました。(中略)でも25周年を迎えて…こんなに沢山の人がライブに足を運んでくれています。どうもありがとう。

 驚きだった。まさか、桜井自身がここまで内面を語るとは思っていなかった。これまで桜井が楽曲のことについて語ることはあったが、自身の内面を、しかもどちらかというとネガティブな想いを、ライブという場で語ったことは、恐らく多くはないだろう。それこそが25周年という歳月の重みを物語っているようだった。
 

 ここ数年、特にデビュー以来共に音楽制作を続けていたプロデューサー小林武史の元を離れバンド自身のセルフプロデュースになって以降、桜井は「いつまでもMr.Childrenを続けていきたい」といった趣旨のことを様々なインタビューで語っている。これはファンにとって、とても嬉しいことだったのではないだろうか。少なくとも私にとっては涙が出るほど嬉しい事実だった。いつまでも聴き続けたい音楽があり、それを奏でている人の口から「いつまでも続けたい」という意思が語られたのだ。こんなにも幸せなことはない。大袈裟かもしれないが、私にとってMr.Childrenは人生を共にしたいバンドだ。そして恐らくあの日、日産スタジアムに集まった人の多くもそんな風に願っているはずだ。それと同時に、いつかMr.Childrenの音楽を聴くことができなくなる日が確実に来る、という事実とも向き合わなくてはいけないと気付いたのだけれど…。常にメジャーのド真ん中を歩き続けて来た「超」が付くほどのメジャーバンドだからこそ、どんな時代のどんな人の暮らしの隣りにもMr.Childrenの音楽が流れ続け、こんなにも長い間こんなにも多くの人に愛され続けているのだ。その事実が、どれほど素晴らしいことなのか…例え願ったからと言って必ずしも叶う訳ではない、ということを強く感じた。

 だからこそ、私はMr.Childrenの4人が音楽を奏でている姿を見ると、溢れるほどの喜びと抱えきれない感謝を彼らに伝えたくなってしまう。「終わりなき旅」のアウトロ、ドラマーであるJENを囲むようにメンバーが集まって懸命に演奏する姿を見ると「この光景をいつまでも見ていたい」と願わずにはいられないのだ。

Mr.Childrenの32枚目のシングルである「GIFT」の一節にこんな歌詞がある。

「君とだから探せたよ 僕の方こそありがとう」

 Mr.Childrenがいたから見つけられたモノがたくさんある。Mr.Childrenに出会わなければ…なんて考えても想像できないけれど、それでもMr.Childrenに出会えたことで間違いなく多くのものを見つけられたという自信ならある。そして、そんな風に思っている人は、私以外にもきっとたくさんいる。「僕の方こそありがとう」は、そんな私達が、最も彼らに贈りたい言葉だ。

 改めてMr.Childrenさま、25周年、本当におめでとうございます。
そして、これからもどうぞよろしく。

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