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世界と簡単に繋がる時代にコインロッカーズは「孤独」を鳴らす

ザ・コインロッカーズ 「孤独でいることに慣れてしまった」における、考察

「孤独」という言葉がいつの時代もついて回るのはなぜだろう。現代は、少し面白い短文が書ける者、魅力的な写真を撮れる者が、自分の住んでいる町の人口以上の人とフォロワーという形でつながることができる。それが叶わない者だってネットを通じて世界中の人に自分の主張を発信できる。
それはすごく魅力的なことだと思うのだが、どうしても調味料を隣の家から借りていた時代の方が孤独とほど遠かった気がするのはなぜだろう。物質的な豊かさと心理的な豊かさは比例しないということだろうか。

ザ・コインロッカーズは悲しみを抱いて、それを力にして進むバンドなのかもしれない。(勿論、「マジでピンと」みたいな底抜けに明るい曲も好きだ)
秋元康監修の下、10,000人のオーディションを勝ち抜いて選ばれた38名。それがザ・コインロッカーズだ。彼女達は、全国約150本のライブを経験し、当面はZepptokyo のライブをソールドアウトすべく結成された。衝突、苦悩、歓喜を経て確実に成長していった彼女達に突然残酷な宣告がなされる。

「リニューアル」

響きは心地良いが、その内容は「13人のメンバーを残し25人のメンバーとは契約を終了する」ものだった。「リニューアル」発表後に開催されたZepptokyo のライブは25人のメンバーとの別れを意味していたもので、多くの悲しみを残し、その幕を閉じる。(ライブのソールドアウトは実現しなかった。)
残った全てのメンバーは、前を向くことができなくなっていた。多くのミーティングやファンからの励ましもあり、活動を再開した今回発売のセカンドシングル「僕はしあわせなのか?」(5/27発売)は、秋元康プロデュースとしては異例、約1年の間隔を空けてのリリースとなる。
そのカップリング曲「孤独でいることに慣れてしまった」は、こうした経験を経た彼女たちにとって鳴らすことが宿命づけられた楽曲だ。しかしながら、今回の悲しみを経験する前から彼女たちの多くに「孤独」が付きまとっていたのは、彼女たちの生い立ちを知る者であれば誰もが理解できる。

三重から上京して、自分の存在意義を見つけたくて親との衝突を繰り返した女の子。

自分に魅力を感じることができず、ゲームや漫画にばかり夢中になり、これが最後のチャンスと思いオーディションを受けた女の子。

これは、そういった(10代20代で誰しもが経験する)孤独を内包する全ての人に向けたアンセムであると考えている。
10代や20代というのは、否が応でも孤独が付いて回る。(筆者に関して言えばパートナーとの別れがそこに大きく影響した)

歌詞を読んでいくと、主人公の「僕」は孤独を肯定し続ける。温もりがほしいなら、誰かに寄りそうでなく、大地に寝転んで土の温もりを感じる。誰かのためでなく自分のためにギターを弾く。傷つかないために、何も見ないふりをする。そんな「僕」は、やがて孤独の肯定と否定の間でもがき苦しむが、その中の一節【震える背中は自分の腕では 抱きしめられないから やさしさを求めるんだ】は、秋元康作品の中でも屈指の名フレーズである。そして、歌詞の最後、孤独を否定すべく放たれた【独り言さ】と言う言葉で曲が終わるところに胸が締め付けられる。

曲に耳を傾けると、まず松本 璃奈(まつもと りな)のざらついた歌声が入ってくる、彼女は本作でベースボーカルを担当している。一度は手を離したベースを「リニューアル」を機に再び手にした。次に下島 輝星(しもじま きらら)のギター。これが、「僕」の孤独の肯定と否定の間で揺れ動く心境を代弁するかのように文字通り歪んでいて素晴らしい。3分26秒過ぎてから下島のギターに絹本 夏海(きぬもと なつみ)のギターが戦いを挑むようにぶつかり合う所が本当に好きだ。絹本はギターを手にしてから、まだ1年程度しか経っていない。とてつもない成長である。Emily(エミリ)はリズム隊と寄りそいながらも存在感のあるアコギを鳴らす。森 ふた葉(もり ふたば)のドラムは最早一流のロックンローラーと何ら遜色がないし、田村 愛美鈴(たむら あみり)のキーボードは、Led Zeppelinのそれを思わせる

緊急事態宣言こそ解除されたものの、コロナウイルスの影響により音楽業界に苦境は続き、出口が見えない。多くのフェスが中止となり、老舗のライブハウスは閉店を余儀なくされた。本シングルもプレスが遅れたのか発売が延期となった。プロモーションもリモートで行われ十分なものでなかった。

筆者は1人のリスナーであるが、この期間にできること、これからも考えて、行動していきたい。

そしていつの日かこの曲をライブで。ザ・コインロッカーズが鳴らしていた下北沢の小さなライブハウスで。その日の最後の曲として聞きたい。

【】内は、ザ・コインロッカーズ「孤独でいることに慣れてしまった」の歌詞より引用

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