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Vaundyの自信と覚悟

1stアルバム「strobo」から見える景色

5月27日、Vaundyの1stアルバム「strobo」がリリースされた。

Vaundyとの出会いは2019年に公開された「東京フラッシュ」。
弱冠19歳とは思えない音楽センスと歌声が注目を集め、未成年らしいリアルな歌詞で若者の共感を呼んだ。

彼の作詞力はアルバムに収録されている「怪獣の花唄」と「僕は今日も」でも遺憾なく発揮される。

「怪獣の花唄」では誰しもが身に覚えのあるセンチメンタルな経験と感情で心を掴み、Cメロに差し掛かると彼の人生観も垣間見えることで大サビがよりエモーショナルに引き立つ。
何気ない鼻歌が心に残る花唄になるという、言葉遊びも感じさせる疾走感に溢れたロックナンバーだ。

一方の「僕は今日も」は、彼のパーソナルな体験を煮詰めたようなバラード。
“僕の歌があれば いいさ”という力強い詞は、彼にとってだけではなく、ファンの拠り所として自分の歌がいつも近くにあるという愛情とも捉えられる。

リスナーに寄り添ったメッセージは6曲目「不可幸力」の中にも表れている。
2019年はKing GnuやTemplayといった半音と不協和音が印象的なアーティストが高い評価を得たが、それをトレースするだけではなく「All You Need Is Love」的なテーマを皮肉と共にソウルフルに歌い上げることで彼らしい表現が貫かれている。

続く「soramimi」ではさらにシニカルなラップを四つ打ちのビートに合わせてさらけ出した。
サビの歌詞を極めてシンプルにすることで緊迫感のあるシンセサイザーが際立ち、やり場のない怒りをダンスで昇華させていく姿が思い浮かぶ。

かと思えば、メロウなラブソングの「napori」や軽快なアコースティックサウンドの「Bye by me」といった楽曲で、低音からファルセットまで彼の心温まるその歌声を堪能させる振り幅の広さ。

2020年はSIRUPやiriの活躍もあり、藤井 風やeillなどモダンソウル・R&Bアーティストへの注目の高まりが見込まれるが、Vaundyもその影響を受けるだろう。
しかし、彼が一筋縄でいかない点は「life hack」でも見られる、グルーヴィな声質と気だるげな歌唱が生み出す独自の空気感にある。
それでいて自然体な歌詞はZ世代の価値観に大いにフィットするはずだ。

Vaundyは「strobo」というアルバムを通して音楽性の幅、それぞれの曲で奥行きを見せてくれた。
それらを上手く繋いでいる「Audio 001」と「Audio 002」という二つのインターリュードからは彼の構成力の高さも窺える。

「東京フラッシュ」の方向性を維持すれば人気アーティストになることは確信していたが、彼はそんな浅はかな思惑を軽々と飛び越え、リリースごとにまったく異なる景色を私たちに見せてくれる。
それでいて、彼自身の言葉で刻まれるメッセージと心地よさを纏った歌声が人々を惹きつける。

これらを踏まえた上で改めて序盤の「灯火」を聴くと、本音を吐露しながらも“揺るぎない世界の歌”を確立した彼の自信と覚悟が表出していることに気がつく。
彼ならばこれから先も“見えない見えない本当を/見えてる見えてる感動に”変えて私たちに届けてくれることだろう。

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