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雨の日の友達

エレファントカシマシと私の16年

随分以前の話だが、2017年7月と11月に、エレファントカシマシのライブへ足を運んだ。
30th ANNIVERSARY TOUR 2017 “THE FIGHTING MAN”と題打ち、47都道府県全てを回る記念すべきツアーだ。

節目ということもあってか、このライブ、とかくボーカルの宮本氏がよく喋っており、デビュー当時の話やレコード会社の契約が切れてしまった時の事など初めて聴くエピソードも沢山あった。

エレカシのライブにはこれまでに何度か足を運んでいたが、実は恥ずかしながらファンと言える程エレカシの事を分かっているわけではない。
見境なく何でも聴く為、そもそも一貫して特定のアーティストを推してきた、という感覚が殆どなかった。
しかし、ある時itunesを見て

「あれ!何で私、こんなにエレカシのアルバム持ってんだろ!?」

とびっくりした。

エピックソニー時代からの分も含めてそこそこのタイトルがあった。
生粋のファンの方々には全く及ばないのだが、この、無意識の内に音源が集まっていて、聴けば漏れなく懐かしさに襲われる現象に我ながら驚いた。

宮本浩次氏と言えば、あの髪の毛をぐしゃぐしゃにする仕草が有名で、独特の口調と間が一時お茶の間を魅了したわけだが、私が自発的に聴く様になったのは2004年リリースの「扉」からだ。
初めての就職で疲弊していた時に「扉」を聴いて「エレカシすごいなぁ」と思う様になった。この頃、友人に誘われてドキュメンタリーフィルム「扉の向こう」を見た事も大きかったと思う。

そこから5年後、初めてライブに足を運び、結構良い場所から彼らを見る事ができた。これは「昇れる太陽」を引っさげてのツアーだ。

振り返ってセットリストを見ると、大変贅沢なセットリストであった。
前から数える方が早い位の至近距離で全員のパフォーマンスを目の当たりにし、エレカシのライブはとにかくすごい、楽しいという感覚が脳裏に焼きつき、色んな音楽を聴きつつも、いつかまたエレカシのライブに行きたいなぁ、とずっと思っていた。

然して2011年の悪魔のささやきツアーでグランキューブ大阪に乗り込んだのだが、この時は2階席でかなり遠くて、そして然程興味がない彼氏を無理やり連れて行ったからか、どうにも不完全燃焼であった。

そこからは特段の事なく日々を送った。エレカシに興味のない彼氏と結婚に至り、結婚生活も仕事も順調に進んだ(この間、宮本氏が左耳の難聴でライブ活動を休止したと知った時はびっくりした)。
相も変わらず、広く浅くその時の流行りを聴き、知り合いから進められたバンドのCDを借り、誘われたライブへ行き、平和な毎日を過ごしていた。

そんな日々の中で、ペットとの別れを経験した。
凪いでいた自分の日常が徐々に足元から揺らぎ、しばし情緒不安定になってしまった。
独身時代から心の友であった大切な小鳥が、日に日に弱っていくのを見るのは堪え難かった。

小鳥を弔って幾日か経ったある日、久しぶりに「普通の日々」を聴いた。

これが実に堪えた。
だが、堪えたと同時に、土砂降りの雨中で傘を差し出されたかのような救いも感じ、久しぶりにエレカシを聴く日々が始まった。

ここで冒頭に戻るわけだが、itunesの中にはエレカシの音源がやたらあったのである。それを何故忘れていたのか、我ながら薄情に尽きる。ともあれ昔の音源を聴き漁る中で「今は何をしているのか」という当然の疑問が湧き、色々調べてみた。
折しもその頃はアルバム「RAINBOW」のリリースから半年近く経っており、これを遅まきながら聴いた私は「何じゃこの曲は!」と大層衝撃を受けた。
50歳の人がこんな爆弾みたいな歌をどうやって歌ってるんだろう、これは生で見なければ、と「RAINBOW TOUR 2015」が敢行されると知るやライブに一人で足を運び、久々に宮本氏を目の当たりにした。
「RAINBOW」は、元がかなり速い曲なのに更に走ってしまってて、流石に訳がわからなかったが、なにしろ勢いがすごかった。
爆弾のようだと思っていた「RAINBOW」はライブハウス全体を巻き込みながらまさに爆発していた。その時の高揚感が忘れられなかった私は、エネルギーを維持しながら2年後、30周年記念のツアーに挑んだ。この間、私の熱は持続したのである。目が離せなかったのだ。
この記念ツアーを通じてエレカシは日毎にメディア露出が増えていったと思う。
思うというか、確実にそうだ。
私に「扉の向こう」を観に行こうと誘ってくれた友人も
「皆、やっと宮本がヒーローだって気付いたんだよ」
と興奮していた。
私も随分長い間、つかず離れず歩いていたが、今更それに気付かされたような気分だ。

最初に「扉」を聞いてから実に十余年。

就職先でうまく行かず、どんより一人暮らしをしていた頃に聴いた「地元の朝」

トリプルワークをしてパンク寸前の頃に聴いていた「暑中見舞-憂鬱な午後-」

人間関係で悩んでいた時に聴いた「季節はずれの男」

小鳥と別れた時に聴いた「普通の日々」

改めて考えると、エレカシの音楽はずっと「雨の日の友達」だったのだと思う。

雨の日にだけ都合よく「傘貸して」と入れて貰っていた私。
晴れ間が見える度に「ありがとう、じゃあまた」と傘から出ていた現金な私。

いつも変わらず傘を差し出してくれていたエレカシは、間違いなく私にとってもヒーローだったのだ。

どこまでもご都合主義だな、と我ながら呆れてしまうが、今は晴れの日も雨の日も一緒に歩きたい。

そんな気持ちでエレカシに耳を傾けている。

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