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ザ・ビートルズ、それは〝アルファであり、オメガである〟

メビウスの輪に仕掛けられた、時限爆弾のような音楽の魔法

〝わたしはアルファであり、オメガである。
 始まりであり、終わりである。
 渇いている者には、命の泉から価なしに飲ませよう〟
(新約聖書 ヨハネの黙示録21章6節より)

〝アルファ〟〝オメガ〟とは、ギリシャ文字の最初の文字A(アルファ)と、最後の文字Ω(オメガ)の事を示しており、すなわち「すべて」「永遠」を意味している。イコールとして「神」であるとの解釈もされている。
俺にとってザ・ビートルズは、アルファであり、オメガである。つまり「すべての始まりであり、終わり」で、いつ何時も枯れる事のない泉なのである。

最近、というかずっと、「音楽好き」を公言している人に限ってビートルズを通っていない事が多くてとても悲しい。基本というか、音楽の義務教育のようなもので、通っているのが当たり前だと思っていたからだ。
そういう反応を見せると決まって返されるのは「世代じゃない」という言葉。
俺だって世代じゃない。なんなら父親だってリアルタイム世代より少し若い。

俺とビートルズの自覚的な出会いは、1995年12月31日。中学1年の大晦日だった。
「自覚的な」と書いたのは、それまでも無自覚ではあるが、ビートルズの曲とは出会っており、後年になって「あれもビートルズだったんだ!」と再認識したケースが多々あったからである。例えば俺が通っていた小学校では、昼休みが終わってからの掃除の時間のBGMが《A Hard Day’s Night》だった。

1995年12月31日が何の日だったかというと、テレビ朝日系列で《ザ・ビートルズ・アンソロジー》という特番が放送された日だ。放送時間は18:00〜23:30で、NHK紅白歌合戦の真裏だった。ビートルズの解散は1970年なので、解散から25年という事になる。
内容は、ビートルズのメンバーだったポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スターという、すでに亡くなっていたジョン・レノンを除いた3人を中心に、バンドに関わりの深かった人物が過去を回想するインタビューや、当時の映像で構成されたドキュメンタリー番組であった。しかも、ジョンが生前残したデモテープのボーカル部分だけを残し、3人のメンバーがアレンジ演奏した曲が、ビートルズの新曲として発表されるというもの。
レア音源を収録したCDアルバム、ドキュメンタリービデオ、ドキュメンタリーブックの3部構成からなる《アンソロジー・プロジェクト》のうち、ドキュメンタリービデオのダイジェスト版(放送時間が5時間半もあるのにダイジェスト!)という位置づけの番組であった。

放送開始を心待ちにしていた父親とともに、特別ビートルズに興味はなかった俺も、たまたま番組を一緒に視聴する事となったわけだが、俺はそこから5時間半、テレビに釘付けになった(CMの間に急いでトイレに行ったりはしたが)。
圧倒的な革新性と美意識、今日のポピュラー音楽の礎であり、同時に25年以上前の音楽でありながらも全く古臭さを感じない、むしろ今聴いている音楽のどれよりも「最新型」の音楽に感じられたのだ。

父親がその番組をビデオの3倍モード(死語!)で録画していてくれた事もあり、俺は冬休みの間、文字通りテープが擦り切れるほど観て、お年玉でCDを買いあさり、「邦楽なんかダサいぜ!もう一生聴かないぜ!」とそれまで持っていた邦楽CDをすべて手放し(後年、そのほとんどを買い直す事になるのだが)、ビートルズ周辺、つまり60年代のブリティッシュ・ロックに傾倒していく事となった。

今年は2020年。ビートルズ解散から25年と言われた1995年から、さらに25年が経った。今は邦楽も洋楽も隔てなく、良いと思えるものは聴いているし、フレッシュでカッコいい若手が現れれば「今一番ハマっている」と言う事もある。だが、ビートルズを忘れたり、蔑ろにした事は一度もない。どんなときも、頭の片隅であろうとも俺の中に常にいて、何年かに一度のペースで俺的ビートルズブームがやって来る。それまで何度も聴いたビートルズ作品を、また熱心に聴きまくるのだ。あの衝撃と煌めきを与えてくれた始まりへ、終わりとして辿り着き、また始まるのを定期的に繰り返しているのである。

ビートルズは50年も前にとっくに終わってしまったバンドだ。現在進行形のバンドと違い、また、メンバーの半分はすでに亡くなってしまっているため、4人が完全なかたちで揃っての新曲は永遠に聴く事は出来ない。でも、たとえ50年以上前から止まったままの作品だとしても、聴く度に新しい発見がある。これはほとんど魔法と言っていい。時限爆弾のように、数年おきに爆発する音楽の魔法が施されているとしか言いようがない。

「ビートルズを通っていない音楽好き」も、ある意味幸せ者だと思える。だってあの魔法を味わう権利を、まだ残しているんだから。
俺がこの文章で、曲解説や考察の類をあえてしなかったのはそのせいである。それはこれからビートルズの音楽に出会う人たちにとって、ネタバレや先入観を与えてしまう事になるから。

すべての始まりであり、終わりであるビートルズ…。いつまで経ってもしっぽが掴めない。
25年前のあの日から、俺はいつも「始まりから終わり」へ、メビウスの輪のような醒めない魔法の中にいる。

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