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フジファブリックはずっとフジファブリックだったのに。

こないだの、帰省したときのこと

先日、週末を利用して実家に帰省した時の話だ。

「ねえ、フジファブリックって知ってる?」

普段、ジャズやクラッシックしか聴かない母が、私にそう尋ねてきた。話を聞けば、先日テレビで志村正彦の特集をやっていたのだという。

「なんだか、すごく印象的な声でね。耳に残っちゃったんだ」

あまりに唐突で、いつもの母の口には似合わない「フジファブリック」という単語に驚きながらも、私は母に、自分とフジファブリック、そして志村との出会いの話をすることにした。
 

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私がフジファブリックに出会ったのは、2012年、「徒然モノクローム」がきっかけ。すでに志村はこの世にいなかった。フジファブリックといえば、3人体制というのが私のファーストインプレッションだった。

軽快なそのリズム、少しけだるげなボーカル、明るい曲調。私が出会ったのは「新・フジファブリック」だったのだ。

私は「前・フジファブリック」をあえて聴かなかった。「前・フジファブリック」時代の曲を「新・フジファブリック」が演奏したものも、とことん避けた。もちろん、ボーカルが志村であることは知っていたし、志村がすでに亡くなっていたことも調べればすぐにわかる。代表曲が「若者のすべて」であることも理解していた。

でも「新・フジファブリック」に惹かれた私が、志村のいた時代の「前・フジファブリック」を聴いて、好きだと思うのは、なんだかずるい気がしたのだ。言い方は悪いが、悲劇のヒーローには媚びたくなかった。
 

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そんな私が、「前・フジファブリック」に触れてしまったのは、ROCK IN JAPAN 2017。忘れもしない、レイクステージ。「新・フジファブリック」が歌う「若者のすべて」を聴いてしまったのがすべての元凶だった。

正しく言えば、レイクステージの次のアーティストが見たかったから、前のアーティストであるフジファブリックのラスト曲「若者のすべて」がたまたま聴こえてしまった、が正解。フジファブリックの生歌を聴いたのは、実はこの時が初めてだった。
 

「最後の花火に今年もなったな
何年経っても思い出してしまうな」(若者のすべて)

違和感があった。私の知っている「新・フジファブリック」ではなかった。観客も、ステージにいるフジファブリックのメンバーもみんな「ここにはもういない志村」を想って、手を挙げていたんだと思う。

「新・フジファブリック」とか、「前・フジファブリック」とか、そんなレッテルを貼って志村の歌声を聴かなかった自分が恥ずかしくなった。

フジファブリックは、いつなんときでも、フジファブリックだったのに。
 

その翌日、私はとうとう志村の声の「若者のすべて」を聴く。フジファブリックに出会って5年。聴かないでいて、ごめんね、と、スマートフォンの小さな画面の中で歌う志村に向かってつぶやいた。
 

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これが私の、フジファブリックと、志村との出会いの話だ。
 

母に話し終えたとき、母は「志村さんの声の『若者のすべて』を聴きたいね」と言った。あの直後に買った、「若者のすべて」のシングルCDを母とふたり、聴いた。

志村の声は世代を超えるんだ。フジファブリックは、志村がいたときからフジファブリックだし、今だって志村は人々を魅了し続ける。悲劇のヒーローなんかじゃない。今も生きるヒーローだ。

この状況がおちついて、ライブハウスが開いたなら、母をつれてフジファブリックのライブを見に行こう。そう思った。

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