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2017年9月11日

だーいし。 (22歳)

20年目のゆずと出会う

夏色の景色

2人組デュエットゆず。
その名前を知らない人はそう居ないだろう。
でも生で観たことないって人は沢山いるはずだ。
僕もそうだった。
有名な曲を何曲か知っている程度で、本当のところ、”ゆず”については詳しく知らない。

僕は8月の終りに山中湖で開催されるフェスに参加していた。
湖があって、富士山があって、ロケーションは最高だった。
マイヘアは今日も熱量の高いライブだったし、初めて観たきゃりーぱみゅぱみゅはとても可愛くて楽しくて仕方が無かったし、never young beachは意外と熱いライブをするだなと知ったり、相変わらずレキシは最高に面白かった。
とにかく、朝から至る所で色んな音が鳴っていて楽しい時間を過ごした。
日も暮れてライブも終盤、一緒に来ていた人たちと”今日のベストアクトは誰?”なんて会話をする。
昼間は暑かった会場も日が落ちてからは身を震わせるほどに寒かった。

この日の大トリ、ゆずの出るステージには沢山の人が詰め掛けている。
僕らは後ろの方で大人見をしようと、後ろの方で寒いねなどと言いながらゆずが始まるのを待っていた。

モニターに案内が入って、ゆずが登場した。
初めて見たゆずに僕は「あ、本物だ。」なんていう安い感想しか出てこなかった。

「はじめまして。ゆずです。知っている人は歌って下さい!」
そんな掛け声から始まったのは”さよならバス”だった。

〈予定時刻は6時 あとわずかで僕らは別々の道〉
その歌い出しで始まる”さよならバス”。
19時35分から始まったステージは、その歌詞のイメージと近い景色だった。
日が落ちて、昼間の暑さが嘘みたいに急激に気温が下がった山中湖。
楽しかった今日の終わりを何となく告げるような切なさが漂っていた。
ギター2本とドラム、ハーモニカ、といったシンプルでアコースティックな楽器たちで編成されたこの曲が、その切なさをよりドラマチックに演出してくれた。

ステージが始まった高揚感と、曲の持つ切なさが絶妙に混ざりあう。
嬉しいのに悲しい、楽しいのに切ない、一言では良い表せない感情がまるでパレットに広げた絵の具のようにたくさんの色で心を彩っていく。

“さよならバス”が終わり、会場には拍手が鳴り響いた。
ゆずは立て続けに演奏を続けていく。
2曲目の曲は”少年”だった。
ステージに向かって手を振るようにして、ゆずに答えていたオーディエンスたちが今度は手拍子で彼らに答える。
先ほどと同じアコースティックな編成にもかかわらず、さっきまでと違う、今度は愉しさに溢れる雰囲気で会場を包み込んでいた。
タンバリンを手にした北川悠仁は、戯けたり踊ったり、曲間にくるっと回ってみせたり、エンターテイナーとしてオーディエンスを湧かせていた。

曲が鳴り止み、1度MCが入った。
「ゆず初めてみた人ってどれくらいいる?」
という問いかけに、かなり沢山の、半数以上の手が上がる。
その答えにオーディエンスもゆずも、双方が驚いている様が何だか面白くて、ゆずにとってアウェイな場所だということを感じなかった。

「知ってる人は一緒に歌って下さい。」
一言添えられて演奏された曲は”虹”だ。
これまでのアコースティックな雰囲気とは違い、ストリングスや打ち込みの音が含まれるこの曲。大きな空間が似合う懐の深いメロディーが鳴る。
〈越えて 越えて 越えて 流した涙はいつしか 一筋の光に変わる〉
北川悠仁と岩沢厚治による美しいメロディーが野外という開放的な空間に響き渡る心地良さは一生忘れることが出来ないだろうなと思った。
わずか3曲で、ここまで振り幅の異なる曲を歌うことが出来るゆずは本当に凄い。
20年間愛され続ける由縁はこの多彩な振り幅なんだろうなと思う。

「今までの曲もいいけど、新しい曲も聴いて欲しいです。」
そういうニュアンスのMCがあって次の演奏されたのは”愛こそ”だった。

ポップソングのど真ん中に投げかけた、明るくて優しく楽しいメロディーはとても力強くて、会場全体が魔法にかけられたような、そんなピースフルな空間になっていた。
〈いつだって 愛こそ世界を変える〉
そんなフレーズはなかなか言えたものではないと思う。
でもゆずが歌うと本当にそんなような気がしてきて、なんだか嬉しくなって口ずさんでしまうのだ。
ゆずの持つ前向きな力強さが、聴く人たちの支えとなっているのを感じた。
 
 

「次の曲は皆と踊りたいです。今から振り付けを教えるからマネしてね。」
北川悠仁がそう言い放った後に、裏から沢山のダンサーが現れる。
徐々に大きくなっていくステージに、高揚感と期待が高くなっていくのを感じた。
予想以上に高い、北川悠仁のテンションに引っ張られていくように会場も熱を持っていくのがとても心地よかった。
最初は緊張や照れから上手く踊れなかったオーディエンスも、繰り返される楽しい練習と北川悠仁のテンションに釣られて、1人1人が楽しそうに踊り出す。
“タッタ”というこの曲で踊ったこと、盛り上がれたことは今年1番楽しかった瞬間だった。

「この夏、やり残したことはありませんか?僕はあります。この曲を皆と歌ってない!」
北川悠仁のMCと共に、曲名が叫ばれる。
言わずと知れた名曲”夏色”だ。

“タッタ”のおかげで会場の盛り上がりようは異常だった。
とんでもない熱気を纏ったお祭り騒ぎのまま、オーディエンスたちは思い思いに”夏色”を楽しむ。
最後の1フレーズが終わり、いよいよ楽しかった”夏色”も終わった。
かと思いきや会場からは「もう1回!」の声が鳴り止まない。
「もうやらないから」と言う、北川悠仁のサディスティックな1面に会場は再度沸いた。
そして”夏色”を再び演奏する。ゆずはどこまでもサービス精神に溢れるエンターテイナーだ。

「最後1曲は皆と歌いたいです。」
最後に演奏されたのは”栄光の架橋”だった。
感極まって泪を流す人もちらほらと居た。
この会場の中で、この曲に救われた人はどれだけ居ただろうか。
学校で、仕事で、部活で、生活の中で、苦しかった瞬間を抱えながら誰もが今を生きていることを実感した。
その苦しみを、岩沢厚治と北川悠仁による楽器のような綺麗な声が、聴く人の心を温かく溶かしてゆく。
僕にとってこれらの時間はこの夏1番の思い出だった。
1時間ほどの持ち時間で、これほどまで多彩に聴く人の感情に寄り添えるものなのかと、ゆずのライブは衝撃的でさえあった。

後日、CDを手にして演奏された曲を実際に聴くと、その曲たちはびっくりするほどシンプルにアレンジされた曲が多い。
“タッタ”や”夏色”は路上で歌われても違和感がないのに、会場ではお祭り騒ぎのように盛り上がったし、壮大に感じた”栄光の架橋”や”虹”はイヤホンで聴くとすんなりと生活の一部に馴染んでしまう。
優しくて人懐っこくて、また聴きたくなってしまう。
この夏1番の思い出はきっとまた来年の夏が来ても思い出すだろう。
上手くいかない幾つもの日々を超えたその先で、またゆずと楽しい時が過ごせるのを心待ちにしている。

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