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宮本浩次が作業場からまんまで宇宙へ舞い上がった日

~“2020 612宮本浩次バースデイコンサートat作業場「宮本、独歩。」ひきがたり”を観て~

2020年6月12日(金) ミヤジの54歳の誕生日であるこの日に“2020 6 12 宮本浩次バースデイコンサート at作業場「宮本、独歩。」ひきがたり”と題して行われたライブの模様をWOWOWオンデマンドの生配信で観た。

本来なら3月から4月にかけて全国14会場で初ソロアルバム『宮本、独歩。』ツアーが開催されていたはずで、私も香川、大阪、広島と3会場に足を運ぶ予定だった。
『宮本、独歩。』の初回限定盤の特典DVDであるリキッドルームでのバースデーライブ(昨年の6月12日に開催)の映像には、このソロ初アルバムのツアーについて「いきなりピークの状態を見せたい」とスタッフに身振り手振りをまじえて話すミヤジの姿が映されている。

満を持してソロ初ツアーを成功させるべく、おそらくご自身の生活のほとんどの時間を捧げて準備してこられたであろう勤勉家な人の望みでさえ、この世は本当に不条理なもので、そう簡単には叶えてくれないものなのだ。私は、自分自身がミヤジのコンサートを観に行けなくなった落胆よりも、全公演中止の決定を受け入れざるを得なかったミヤジの心中を思うほうがいたたまれず、たまらなく辛かった。

そんな時に、この作業場からバースデイコンサートを開催するという告知を、どこよりも早く写真日記(ミヤジの公式インスタグラム)で知った時の喜びは格別だった。
「ニュース!」といつにも増して大きな手書きの文字が踊っているのを見て、明るい話題を報告できる喜びがひしひしと伝わり、こちらまで嬉しくなった。
その時点では、まだどのようなコンサートになるのかイメージできなかったけれど、きっと“ミヤジらしい誰にも真似できないような、とんでもないステージ”になるだろうな、と想像するだけでも楽しみで仕方なかった。

そして配信当日。
1曲目が始まり、ほどなくして全体を俯瞰するアングルで映し出された作業場に、『宮本、独歩。』と書かれた赤い横断幕が飾られてあるのを見て、現在のこのやむを得ない状況下でも、なんとかミヤジの歌が届くよう取り計らってくださった方々の、ミヤジへの深い愛情がこの横断幕に詰まっているように思え、それを背に歌うミヤジの凛とした姿にグッとこみ上げるものがあった。

(7月26日には、WOWOWでこの日の模様の拡大版がオンエアされるとのことなので、あまり詳細には触れないようにするが)約70分間で全16曲。通常のバンドスタイルとは違い、イントロやアウトロが省略された曲も多く、70分間ほぼ歌いっ放しの状態だった。作業場じゅうを汗だくになりながら駆け回り、手を叩き、激しく足を踏みならし、テーブルや椅子に跳び乗ったりと、計25台配置された無人カメラの前で、まさに孤軍奮闘・獅子奮迅のステージが繰り広げられた。

おそらく初めての試みと思われるこのコンサートスタイルをご自身も楽しんでおられるようで、どことなく軽やかで洒脱な様子が今回ならではの雰囲気のように感じられ、観ているこちらの心も軽くなり、気分が晴れる思いがした。

また、オーディエンスの反応が全く分からない状態を「一方通行」とコメントされ、困惑されている様子も見受けられたものの、いつものコンサートと同じように一曲一曲、心を込めて、丁寧に、“歌を届ける”ことに注力される真摯な姿に胸を打たれた。どこまでも伸びやかで力強いミヤジの歌声が心に響き、ここしばらくの間、ずっと張り詰めて堅くなっていたココロがほどけていくような気がした。

コンサートが全て中止になった現状を、ことさらに強調して嘆いたり悔しんだりすることなく、むしろこうして披露できる機会を得られたことに喜びを感じておられる心意気やその大らかな心のありようが画面から伝わってきて、私はこういうミヤジの為人(ひととなり)が大好きだとあらためて思った。

ソロの楽曲を披露されている時には、このツアーのメンバーである名越由貴夫さん(ギター)、TOKIEさん(ベース)、蔦谷好位置さん(キーボード)、椎野恭一さん(ドラム)4人の、ミヤジ曰く“用心棒”が揃った姿をあれこれと想像を膨らませながら聞くことができたし、エレファントカシマシの楽曲では石くん、トミ、成ちゃんが演奏する姿が目に浮かび、いつもの4人のサウンドがなんだか聞こえてくるような気がして、目の前の一人佇むミヤジの姿とのギャップに少しだけ切なくなったりもした。またコラボ曲では、スキャットで音を補いながら1人バンド状態のような様相を呈し、東京スカパラダイスオーケストラの皆さんや、椎名林檎さんとビッグバンドの演奏を彷彿とさせるような迫力あるサウンドに息を呑んだ。

どの曲もギター一本だけで演奏しているはずなのに、ミヤジの規格外のダイナミックな歌唱と、自由自在に口ずさむスキャットしかり、床を蹴り上げる音しかり・・・多種多様な音色が分厚く重なって聞こえてくるさまは呆然とするほど凄まじく、その迫力たるや、もはや“ひきがたり”や“無観客でのライブ配信”の域を超えていた。
作業場コンサートが開催されると知った際に思い浮かべた“ミヤジらしい誰にも真似できないような、とんでもないステージ”の想像を遙かに超える“とんでもないステージ”だった。

これまでに聞いたことも見たこともないようなステージを繰り広げるミヤジの姿は、変幻自在で、まさに“作業場から宇宙へ”舞い上がるような気概や漢気を感じる圧巻のエネルギーを放っていた。
 

光目指すのはなぜ? 
蜃気楼が揺れる
今年も似合いの夏
必ずまた帰ってくる
ああ 頭にくるぜ
——————————-
ああ 何とする?
ため息の人生ならば頼りにならぬ
東京からまんまで宇宙へ
瞬間で全て愛する 俺が舞い上がる
 ~エレファントカシマシ『東京からまんまで宇宙』(作詞:宮本浩次)~
 

ミヤジが躍動する姿を目の当たりにし、私の気分も軽やかに宙へ舞い上がるような高揚感や爽快感を覚えた。重たくなっていたココロを芯から解き放ってくれるようで、この約70分のステージを鑑賞している間は息の詰まるような日常を忘れさせてくれた。
なんとも言えないこの複雑な気持ちを抱えた現状と、それをも踏み台にするかのように、くすぶる心を解放してくれたパワフルな歌と演奏・・・その何もかもをひっくるめて圧巻のステージを作業場から届けてくれたミヤジを思うと、なぜだかこの曲が頭で鳴り、雄々しく宙へ舞い上がるミヤジの姿が目に浮かぶのだ。ソロ活動の楽曲とは全く繋がりはないけれど(笑)

ままにならない状況でも、与えられた環境を最大限に活かしきったステージを見せてくれたミヤジに心から拍手を送りたい。ライブ中に何度も何度もこのような機会を与えてもらったことへの感謝の気持ちを口にされ、視聴者にも繰り返しありがとうと述べておられたけれど、お礼を言いたいのはこちらのほうだ。

今回のツアーパンフレットには、ステージで披露されるはずだった様々な工夫を凝らしたアイデアがたくさん詰まった様子が掲載されている。どのページも、こんな風に私たちを驚かせ、楽しませようと、たくさんの趣向を凝らして待っていてくれたのかと思いを馳せる夢のステージが記録されてある。また巻末には、このツアーで関わられた方たちのお名前もクレジットされているが、おそらく他にもこのツアーを支えてこられた大勢の方がいらっしゃったことだろう。
晴れやかな内容が盛りだくさんに掲載されているパンフレットであるが故に、少しほろ苦くて切ないけれども、とても大事なパンフレットを手にしたような気がする。

この作業場コンサートは、単なる代替コンサートではなく、具体的に言葉にはされないけれども、ご自身を支えてくれるあらゆる人に向けての感謝の気持ちを込めて懸命に演奏されていたように思う。本来のステージで披露されるはずだったモノや、本来の会場からのコンサートの実現に向けて携わってこられた方々の思い、そして私たちファンの気持ちなど、有形無形の様々なものを昇華させようと一切を背負い、このステージに臨まれたのではないだろうか。
 

 心はぐるぐる地平線
 交わる期待と不安に押しつぶされそう
 東京からまんまで宇宙へ
 瞬間で全て愛する 俺は今を生きる
  ~エレファントカシマシ『東京からまんまで宇宙』(作詞:宮本浩次)~
 

混沌とした世の中を生きる生きづらさは、何も今に始まったことではない。人それぞれ、いろいろな苦悩や困難を抱えて日々過ごしている。絡みつく苦難を少しでも打破して、明日は今日よりも素敵な日にしたいと願いながら生きている。
これまでも、エレファントカシマシやソロ宮本浩次の楽曲に時に寄り添ってもらい、時に叱咤され、自分自身を鼓舞しながら生きてきた。これからも悲しい日も嬉しい日もずっと私のそばには、私の大好きなミヤジが手掛けた音楽が鳴り続け、なんとか毎日を掻い潜り、心豊かに生活を彩ってくれるだろう。
このもどかしく厄介な現状はいずれ落ち着き、過去の出来事として振り返る日がきっとやって来る。その時には、ミヤジがこんな空前絶後のライブパフォーマンスを作業場から届けてくれたことを懐かしく振り返り、貴重な思い出としてあらためて噛みしめたいと思う。

今回の配信で心に残るシーンの一つに、ラストの曲終わりで2度、ご自身の胸元に寄せた手を私たち観客の方へ差し出すような姿、何かを投げ渡すような動きをされたのがとても印象的だった。思いの丈よ届け!歌よしっかり届け!と言わんばかりの仕種だった。1回目は両手で、2回目は右手で。

70分間の渾身の演奏を終え、汗だくになった髪の毛を揺らしながら、最後の力を振り絞って力強く腕を差し出してくれたその姿が、ずっと目に焼き付いて離れない。

いつでもミヤジは、最後の曲で力尽きてしまうんじゃないかと思うほど全力で私たちに歌を届けてくれる。毎回、その時々のミヤジの心情に沿った選び抜かれた曲と考え抜かれた曲順で思いを伝えてくれる。
特に今回は、ミヤジ曰く“現段階で唯一日のコンサート”にかけた並々ならない思いを感じたし、次に会える日までお互いにドーンとゆこうぜ、というあたたかいエールを受け取ったように思う。

 “はれやかな気持ちでコンサートで会へる日を、心からゐのりつつ日々練習にはげむでをります”(2020年3月3日の写真日記より抜粋)の言葉を胸に、ミヤジに、エレファントカシマシに、次のコンサートで会える日を心待ちにしながら、私も自分に与えられた人生の持ち場を精一杯務めたい。「いい顔してるぜ」と言ってくれるミヤジに、堂々と笑顔を向けられるように。
前向きに、変に肩肘張らずにしなやかに、されど力強くこの毎日を過ごしていこう、そう思えるようなコンサートだった。

京都からまんまで宇宙へ
瞬間で全て愛する 私も今を生きる

ミヤジ、ありがとう!

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