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キャパ1名のライブハウスで涙した夜

[Alexandros] presents 『Party in ur Bedroom』

「ライブ行ってくるね」
「行ってらっしゃい、楽しんでね」

4ヶ月ぶりに両親とこんな会話をして、私はドキドキしながら”ライブ会場”に向かった。

“会場”に着いたら、勉強机の椅子を引いて浅く腰掛ける。そして、iPhoneを壁に立てかけて、耳にイヤホンを刺す。
チケットをもぎる代わりにURLから会場内に入ると、丁度サウンドチェックをしているところだった。
久しぶりのサウンドチェック。う〜ん、心が踊る。

20:00。メンバーが登場。スタッフの拍手が疎らに聞こえた。私は小さく、指だけで拍手した。

[Alexandros] presents『Party in ur Bedroom』

自粛ムードが続く中で、[Alexandros]は既存曲をリアレンジしたコンセプトアルバム『Bedroom Joule』をリリースした。それに先駆け、開催した有料配信ライブ。その名も『Party in ur Bedroom』。6月20日(土)は一般公開、6月21日(日)はFC限定公開となっていた為、初日の一般公開のライブの様子を、拙い文書ではあるが書かせて頂きたい。
 
 

薄暗い部屋に、洒落たラテン系の絨毯。ロウソクの光がスタジオを暖かく照らし、メンバーが椅子に腰掛ける。そして、静かに「Starrrrrrr(Bedroom ver.)」、「Run Away(Bedroom ver.)」が鳴らされた。いつもなら川上洋平(Vo.Gt)のハイトーンボイスが遠くまで伸びていくアンセムだが、今回は1つ1つの言葉を優しく切り、余韻を味わう様に歌う。両曲とも先に配信されているものの、生演奏となるとやはり聴き心地の良さが抜群である。

16トラックものコーラスを楽器のようにレイヤーしたという「Leaving Grapefruit(Bedroom ver.)」は何重もの囁きが耳元から聴こえてきて、イヤホンならでは、オンラインライブならではの良さを感じることができた。
続く楽曲は、磯部寛之(Ba.Cho)がディレクション担当の「Thunder(Bedroom ver.)」、そして白井眞輝(Gt.)が担当の「月色ホライズン(Bedroom ver.)」。
「Thunder(Bedroom ver.)」は淡々としたトラックに妖艶なベースラインがカッコよく、「月色ホライズン(Bedroom ver.)」はアコギと歌声のみでシンプルな勝負へ。どちらも各々のカラーが全面に出た最高のリアレンジであった。

そしてリアド偉武(サポートDr.)がディレクションを担当した「Adventure(Bedroom ver.)」はジャズっぽいイントロで入り、ビートが非常に心地よく、私は思わず指で机をトントンと叩いて静かにノッた。次第に雨空が晴れていく様な空気感。そして最後のサビで川上洋平は優しく言葉を紡ぐ。

《アリトアラユル問題も タビカサナルそんな困難も
いつだって僕達は 頭の中身を歌ってんだ》

《大胆な作戦で 言葉にならないマスタープランで
いつだって僕達は 君を連れて行くんだ》
(Adventure)

遅咲きのデビューやバンド名の改名、ドラマー庄村聡泰の勇退、今まで[Alexandros]は幾度の逆境に直面してきたが、常に”こんな時こそ底力の見せどころ。今だからこそ出来ることがある”と止まらず走り続けてきた。そんな彼等だからこそ、このご時世に揺さぶられること無く、大胆な作戦で、言葉にならないマスタープランで、私達をどこまでも連れていってくれる。この歌詞を聴いて、目頭がツーンと熱くなった私は、眉間に力を入れて涙を堪えた。

そして最新曲の「rooftop」。
コロナ禍で、直接的に会わなくても作業が出来て、人と繋がれる世界に拍車がかかった。「新しい生活様式」や「リモートワーク」、「afterコロナ」といった言葉が続々現れ、非対面のコミュニケーションが主流になっている。”意外と会わなくても繋がれるんだな”と思った人は多いかもしれない。

でも。手を伸ばしても触れられない。近くに居るようで遠い距離感に寂しさを感じる。思う先は、やっぱり”会いたい”。特にライブ。色々な分野において新たなやり方が提唱されているが、ライブはやっぱり密になって熱をぶつけ合う、 それこそが醍醐味だと思う。

《新しい世界とか いまいちピンとこないけど
古ぼけたスタイルで 僕は君を愛していたい》

《When the world comes back
また会えるように》
(rooftop)
 

何とも言えない切ない表情で、メンバーは大切に音を奏でた。メッセージが強く強く伝わってきた。一見甘いバラードだが、その奥に力強い何か熱いものを感じる。絶対にまた、前の様な日々が帰ってくるから。その時までは、お互い離れてるけれど、繋がっていよう。そんな気持ちが伝わってくるようで、堪えていた涙がポロッとこぼれた。今出来る最大のやり方で、今伝えたい最大の愛を、全力で届けている彼等に、胸が熱くなった。

ここまでフューチャリングの「city」を抜いて、「Bedroom Joule」を一巡し、予定していた終了時刻に近づいた。「もう終わりか〜楽しかったな……」と壁に立てかけたiPhoneを手に取った瞬間、手のひらの小さな画面の中で、川上洋平が叫んだ。「ご覧の皆さん!!!まだまだ行けますかあああ!後半戦も宜しくーー!!!!」
驚いた私は、慌ててまたiPhoneを壁に立てかける。すぐさま鳴り響いたのは「Oblivion」。メンバーが立ち上がり、一気に音量が上がる。これまでのチルな雰囲気とのギャップに圧倒されて、思わずにやけてしまった。

間髪入れずに「暴れる時間です!!」と鳴らしたのはまさかの「Burger Queen」。普段はSEで使用されている為、楽曲の頭からの生演奏はかなり珍しく、思わず「うわぁ……!!」と声が零れてしまった。観客が一気に前に押し寄せるのが目に浮かぶ。私も前のめりになり、画面に食い入る。

そして「For Freedom」、「Dracula La」とロックナンバーを畳み掛ける。「改めまして[Alexandros]です!!!オンラインだろうがなんだろうが声出させるぜ!?!近所迷惑になってもいい!お母さんに怒られても知らねえぞ!まだいけるだろ!」「お前らの歓声が欲しいんだよ!!」
目の前にオーディエンスが居なくて、歓声や反応がない中でカメラに向かって演奏するのは想像以上に難しいはずだ。でもいつも通り煽られて、思わず本気でシンガロングしてる自分がいた。さっきまでは、1階にいる両親の事が脳裏に浮かんでいたけれど、もう拳まで突き上げて思いっきり歌った。いつも聴いてるファンの声が聴こえてくる気がした。上げていない方の手で、急いでエアコンの温度を下げる。じんわり汗をかいている。

続く「Waitress,Waitress!」、「Mosquito Bite」。ファンがいてシンガロングや掛け声があるからこそ映える曲を、恐れず果敢にやる彼等のカッコ良さ。異例な現状に動じてない姿が眩しい。
そしていつもならイントロで大歓声が上がる「city」。”cityだ!!”って思うのに、目を合わせる友達が隣にいない。恐る恐るイヤホンを外したら、部屋は怖いくらいに静かだった。離したイヤホンからシャカシャカと音が聴こえてくる。川上洋平がこちらにマイクを向けてくれているのに「ここはどこですか 私は誰ですか」というシンガロングが聴こえてこない。”ライブ最高!!!”って思うのに、気持ちを目の前の演者にぶつけられない。悔しかった。もどかしかった。でも同時に、それくらい最高だった。オンラインじゃ耐えきれないくらいの熱量を与えてくれた。私は涙がとまらなかった。私にはやっぱり、ライブが必要なんだ。

本編の最後に「kick&Spin」。歓声が無くても反応が見えなくても、変わらずマイクを向けてくれて汗を飛ばして暴れる彼等は本当に楽しそうだった。

楽屋に戻る様子もカメラに映され、歓声の代わりにチャットで「アンコール」の声が届けられた。いつものライブの様な量で流れている汗を拭うと、ソーシャルディスタンスを保ちながら、1人ずつステージに向かう。
アンコール。「PARTY IS OVER」を披露し、最後の最後に「Starrrrrrr」を原曲通りに掻き鳴らした。
痛烈なイントロが走った。私は泣きながら、拳を挙げて、部屋で1人、大きな声で歌った。
Starrrrrrrで始まり、Starrrrrrrで終わるライブ。

「ありがとうございました![Alexandros]でした!またお会いしましょう!」と川上洋平はいつも通りの言葉で締めくくり、磯部寛之はピックを投げた。私は頭の上で手のひらで強く、拍手した。
 

ライブがない生活に少しずつ慣れてきてる自分がいる。中止が発表されても段々と何も思わなくなっている自分に、悲しさと不安を感じていた。
でも、やっぱりライブは不可欠だって、本当に生きる活力を貰ってるんだって、ライブがなくても平気なんて事は絶対ないんだって、実感することができた。その証拠に涙が止まらなかったのだ。

ライブハウスに行って、輝くバンドマンの姿を見る。そして音楽や言葉を浴びる。自己表現が自由に出来て、喜怒哀楽を放出できる。沢山のファンと歌って笑って皆で感動を共有する。そんな愛溢れる空間で私はいつも「自分」という存在を確認して、アップデートしていた。

しかしそんな空間が、目に見えないウィルスによって急に無くなった。私事ではあるが、ライブがなくなったこんな春に新社会人になった。新人研修を受けていく中で、皆と同じ格好、同じ髪型、同じ言葉遣い、同じ思考を強いられる。それは社会に出る人間として当たり前なのは百も承知だ。でも今日のライブをみて、本当の”自分”の在処を見つけたんだ。
やっぱり本当の”自分”はライブハウスにいる。

そう思いながら、私は「ただいま」とリビングに降りて、いつもの様に、この曲がこうで、あの曲が良くて、と話すのだった。
 
 

[Alexandros]ありがとう。
本当の”自分”が生きていく中で、音楽やライブは絶対に、必要不可欠である。このライブを観た人、そして演者やスタッフ含め「ライブっていいな」と思ったに違いない。この先何があろうとも、私は音楽やライブと共に生きていくだろう。

そしてこの文章がいつか、「こんな時もあったんだね」「家でライブだって!」と笑える時がくるといい。

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