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19歳、ひとつの人生を終えて

破滅的だった少女にとってのSHE’S

「破滅的な人生を歩みたい」
それが、17歳の私の口癖だった。
たくさんの大人を見下した。たくさんの壁にぶちあたった。何度も逃げて、何度も傷ついた。あまりにも苦しくて、そんな自分が好きだった。
そしてそのまま、少しずつ、大人になった。
18歳、大学一年生。17歳のあの頃は見下していたような、酒やタバコの匂いのする先輩に慣れて、むしろ憧れた。これまでだったら絶対に聴かなかった音楽を聴きながら、色々なことを覚えた。少し悪いことも。「破滅的」のレベルは、まるでそういう運命と決まっていたかのように簡単に、私が望んでいたところまで辿り着いた。私の体にはたくさんの傷ができた。自分でつけたものも、好きな人につけられたものもあって、自分に降りかかるすべての感情を全身で受け止めていた。息が詰まりそうな程ものすごく楽しくて、身が引き裂かれそうな程辛い日々。このままずっと、もっと深くて暗い世界に潜り込んでいける気がしていた。YouTubeの「次の動画」にはSHE’Sというバンドのクリップが表示されていた。一聴して、閉じた。自分には必要のないバンドだと思った。優しいその曲調も歌詞も、破滅を望む私にとって弾き返すべきいい子ちゃんの為のものだった。

“やりすぎた”のは、19歳になって少し経った頃、今年の春だった。好きな人とも連絡を取らなくなり、新学期も一向に始まらずに刺激も実感も足りない日々の中で、私の家庭の空気は濁っていった。
元々ぎこちない家族だった。確かに全員お互いを愛してはいるのに、全員がお互いの顔色を伺って、全員が嘘をついているような感じだった。たまに爆発することもあって、私にはそれが一番辛い瞬間だった。そしてその爆発一歩手前が続いて、私は限界に達していた。限界の中、破滅的にもなれずに、ずっと苦しんでいた。
覚えていないくらい小さな事がきっかけで、私は自分を傷つけた。これまでで最悪の事態だった。血が床に流れ続け水溜りのようになり、救急と警察の方にお世話になった。初めてその場に居合わせてしまった母親はものすごくショックを受け、溜まっていたストレスと相まって涙を流しながらパニックになっていた。家庭は崩壊寸前のところまでいった。
 

『僕らは大切な人から順番に/傷つけてしまっては/後悔を重ねていく』

その夜だった。初めて気づいたのは、一番大切な家族を、私は傷つけ続けていたという事だった。記憶の中のフレーズがずっと鳴り響いていた。嘘だと思っていた心配という言葉は親の本心だったこと、私の破滅的な生き方に親は戸惑い続けていたこと、それが親の負担だったこと。思い知らされた私にとってそれはとても辛辣な事実だった。ずっと親の機嫌を気にしてきた自分はそこまで親不幸ではないと自負していた。
 

『大人になっていくことが/僕を狂わせてるんじゃないかって/思ったりもしたけど』

普通になることを拒否し続けていた自分は確かに居て、普通に、つまり大人になってしまったら、私に価値なんて無くなってしまうと頑なに信じていた。嫌でも大人になっていく時の流れの中で、破滅的になることが私の最大の抵抗だったこと、それを私は自分の頭の中で初めて言葉にした。気付いたらイヤホンをしていた。歌詞に溶かされるように、その硬くて厚い抵抗の鎧が少しずつ消えていくのは、とても辛かった。
 

『これでいいはずはない/けど波風はもう立てたくない/汚れた鏡に問いかけて/孤独に蓋を掛ける』

曲に沿うように、もうこれ以上大切なものを傷付けたくないと思う気持ちが、自分大切なタイセツな”孤独”を否定していた。透き通る歌声に優しく促されるように、喉が詰まるような思いで孤独を大切にすることをやめると決めて、波風を立てない未来を選んだ。本心に問えば、それでいいはずはなかった。
 

『おかえり もう1人の僕/上手くやれたかい/うん、それなりに/想いは手離したし/我慢するのだって慣れてきた』

好きな人との連絡を取らなくなってから少しずつその日常に慣れたように、何にだって慣れるというのは本当だと思う。
自分を騙してまで普通から外れて破滅的に生きていた19歳までの人生に、私は終止符を打った。
私はこれまで、生きていた。理想に従って、それなりに上手くやってきた。きっと18歳のあの激しい夏はそんな自分の人生のピークだったのだろう。好きな人から身を引くように、少しずつ想いを手放していくことが、果たして本当に出来るのだろうか。そう思いながら、まっさらの何もない本来の自分を奥底から引っ張り出してくる。
 

ひとつひとつの歌詞が合わさって歌になり、私の一番強靭な鎧を溶かしていく夜があった。
あの日いい子ちゃんの歌だ綺麗事だと言って閉じたSHE’Sというバンドの音楽は、ここまで破滅に夢中になった私を長いこと泣かせた。
 

私は今、普通に生きている。元の自分で、たまに過去を懐かしみながら。家族は少しずつ家族らしくなり、少し空気が変わった気がする。たまにピリつくけれど、きっと壊れることはない。あれでよかったはずはないけれど、これが人生だとも思う。そしてあれでよかったはずがないと私が思う限り、私はSHE’SのLetterという曲を、ずっと聴いていくのだろうと思う。
 

※『』内は全て、それぞれLetter(/SHE’S)の歌詞より抜粋。順番はバラバラ。

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