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いつか僕がCRYAMYのライブをまた見ることができたら

少なくとも僕にとっては特別なCRYAMYというバンドについて

僕はCRYAMYというバンドが、もしかしたら大切な存在なのかもしれない。最近は本当にそう思う。彼らのライブに行けない、そして、彼らのツアーを潰した今の世の中が憎いと思えるほどに。だからこそ、今だからこそ、僕に彼らのライブの魅力を語らせて欲しいと思う。

CRYAMYと出会ったきっかけ。熱心な音楽好きの友達が「最近ライブを見て本当にびっくりした」と教えてくれたのが始まりだった。そいつはその日の夜、下北沢に一人で他のバンド目当てに足を運んだら出てきたそのバンドのライブに、とにかく異常なほどに興奮していて、「すごいものを見た」としきりに繰り返していた。なんでも、音は汚いわ、演奏はめちゃくちゃだわのバンドで、ボーカルはなぜか足を骨折していて、ステージに上がってるのに酷く酔っ払っていて、とにかくめちゃくちゃに喋るんだけどその言葉が忘れられない、と。あと、フライングVを構えているから多分お前の好きなART-SCHOOLが好きなのかもしれないよ、とも言っていた。

大学を卒業して見事に社会の歯車となってしまった僕にもロックを熱心に聞いていた時期があったけど、最近はめっきりと新しい音楽を聴く機会もなかった。なのに、そいつのあまりにもの熱意に押されてYouTubeで曲を聴いてみることにした。当時アップされていた3曲のミュージックビデオを視聴。うーん、あんまりグッとこない。MVも手作り感満載でダサかった。それに、ART-SCHOOLよりも、どちらかというとボーカルがメロディアスな感じとか、普通そんなこと言わないだろっていう歌詞のストレートさとかが、syrup16gみたいだと個人的には思った。とにかく、僕はARTもsyrupも好きだし、昔はライブにもよく行ったけど、個人的にはそこまでハマらなかった。しかし、そんな僕を尻目に、その友人、そのバンドを見に、また再びライブに行くという。ある日突然誘われて、ちょうど出番も遅いから間に合う、と、久々に新宿のライブハウスに足を運んだ。それが僕が初めて見たCRYAMYのライブだった。

出てきたのは、部屋着みたいな適当な服を身にまとったガラの悪そうな四人組。ボーカル、フライングVじゃなくてジャガーだし。あと髪型がMVと違ってボリュームのないアフロヘアみたいで、生で見ると愛想のなさそうな、ちょっと怖い顔をしていた。あと、ベースが不機嫌そうな顔をしていて、足元のエフェクターのつまみを本番前なのにいじるボーカルを「はやくしろよ」と言わんばかりに睨みつけていたのが印象的だった。そして、今となっては彼らのライブではもうありえないんじゃないかというほどに客は少なかった。そうして、ライブが始まる。

ライブは本当に無茶苦茶だった。リードギターはでかい音で容赦なくノイズを出しながら音を外しまくって弾いていたし、ドラムはずれるのをおかまいなしに無理やり突っ込んだみたいな音数でフィルを入れていた。まだ演奏がましなのはベースだけど、イラついているのか話が通じなさそうな顔をしている。何よりボーカル、しょぼいアフロみたいな髪型でぴょんぴょん大暴れしながら飛びまわって、おそらくギターのハイフレットを適当に抑えただけのコードをかき鳴らしながら、ほぼ全曲シャウトしていた。めちゃくちゃなバンドだ、と一曲目から思った。今となっては…髪型もみんな変わって、服装も(相変わらず変だけど)変わって、時たまおとなしかったり、余計にひどかったりするけれど…彼らのライブではいつものことで見慣れた光景だけど。

僕はこの日のライブを見ていて、まず一番に、どんな感想よりも「面白い」と思った。これまで見てきたバンドで激しいパフォーマンスのバンドなんて他にもいくらでもいたけど、彼らはこの異常なテンションのライブを、客のほとんどいない平日夜のライブハウスで、おまけに四人が何の統制もなく暴走していたのだ。僕は目を奪われてしまった。

おまけに…ライブで聴けば曲も抜群にかっこいいじゃないか!めちゃくちゃなパフォーマンスが注目されるようなバンドって、個人的には曲が何にも良くなくて見掛けだけのバンドが多いと思っていたけれど、彼らは曲の格好よさと溢れ出るエネルギーを両立させているように見えた。その佇まいはとにかく真剣で嘘がなくて、激しいんだけど曲の素晴らしさがとにかく素直に伝わってきた。音楽性も邦楽のロックバンドというよりも、…直接ライブを見たことはないけど90年代にいた激しさと寂しさの混在したような海外のロックバンドのルーツをステージの佇まいから感じさせられたし、特に、怒鳴ってるだけなのに歌われるメロディがどの曲もとにかく抜群で最高だった。もっとちゃんと歌ってほしい!と思ったくらいに。

何より、ライブ終盤、ボーカルのカワノが発した言葉に胸を打たれた。大体はへらへらしながら、時に乱暴な口調で、悪ふざけみたいな態度で話すし、話はまとまりないし、の割に話しているうちに興奮してきたのかどんどん声がでかくなっていって、結論はいっつも同じようなこと。あのいつもの、彼らを知る人みんなが、いろんな感情を込めて「ひどい」というカワノのMC。僕も正直、今でも「ひどい」とは思っている。実際、彼らを知らない人だったのだろう、クスクスとバカにしたように笑っている客もいたし、場の空気は凍りついてとんでもないことになっていたと思う。なのに僕は、ひどいその言葉をかけられた時、なぜだか感動してしまった。彼が語った言葉は、とにかく優しく、力強く響いてきた。そして何より、目の前の僕のために発せられた言葉だ、と思えるほどに胸に刺さった。けど、そう思ったのはあの場でも僕だけじゃなかったと思う。一緒に来ていた友人はヤバイものを見たときの「笑顔」を浮かべていたし、彼らのファンであろう若い女の子は泣いていた。とにかく、一年前のあの日も、そして、最後に見た今年2月のタワーレコードの地下でのライブでも、僕は一人で拳を握りしめて涙をこらえていた。最後の曲が終わって、僕は友人に「ヤバイね」といった気がする。本当に、やばいものを見てしまったと思った。

その日以来、僕は出るCDは全て購入しているし、ライブも、遠征をするほど熱心ではないけれど都内で足を運べる日や、時にはバンドの集大成となると予感させるライブには仕事を切り上げてでも向かったりした。いろんな人が、いろんなバンドのライブを指して「ライブはその日限り」なんて言うけれど、彼らのライブは特に見逃せないと思ってしまう。演奏がひどかったり、カワノがひどかったりする日も確かに多いけど、彼らのライブはそういう日ですら僕に何か爪痕を残してくる。彼らを評して「命削ってる」ライブ、という表現をする人もいるけど、僕としては、とにかく「その日しか生きてない」ようなライブだと思っている。思わされる。

どんなライブをするのか。具体的に。まず彼らは決して演奏の上手いバンドではない上に、ライブの出来に日によっては本当にムラがある。ドラムがずれまくってる日もあれば、ギターのチューニングが狂いまくる日もあるし、カワノの声が出てなくてほとんどメロディを無視する歌い方をする日もある。あとベースが機嫌がいいとMCをする。何もかもまとまらずに見事に全部崩壊した日も見たことがある。悪く言えば安定感がない。けれど、その不安定さゆえに生じる謎のライブの爆発力とか、メンバーの精神状態やコンディションによって(特にカワノだが)表情を変える曲たちとか、もろにそんな日に限ってカワノの話がいいこと言ってたりとか…、とにかく、言葉にするのが難しいんだけど、不思議な魅力があるのだ。それはきっと、演奏がどんな状態でも、声がどんな状態でも、曲が抜群にいいからなんだろう。どんなライブになってしまっても思わず胸が高鳴ってしまう。

メンバーの破天荒なアクションにも目が離せない。基本的にメンバー四人は各々思うがままに誰に構うこともなくステージを大暴れしている。ギターのフジタレイさんは本当にステージングがかっこいい。ギターサウンドと同様に激しく、荒々しいパフォーマンスなのにめちゃくちゃスター然としていて、佇まいから客を圧倒する迫力がある。ベースのタカハシさんは無表情なのに割とステージでは激しく動くアンバランスさが見ていて面白いし、たまに突飛なことをしたりする。ワンマンではテンションが上がったのかドラムセットに突っ込んだりしていた、無表情で。ドラムのオオモリさんは他のメンバーの楽器の無秩序さについていくのに苦労しているのかとにかく必死に叩いているのがわかる。けれど、時たま笑顔でステージから客席を見ているのが微笑ましい。

メンバーの中でも、特にカワノに関してはいつも何をするか分かったものではない。少なくとも僕が見た中では「何でそんなことするんだよ…」と思うようなことをすることが多々ある。ステージダイブに失敗して頭から落下して血まみれになる、ギターを何の脈絡もなく客席に投げ込む、「夏フェスに行くような人間は明るいやつが多かったから嫌いだ」と夏フェスのステージで言う、とか…。きわめつけは、有名なイベントに出て、仲のいいバンドが同じ時間に自分より大きなステージでやっていることが気に食わないからと、運営に「お前らはセンスがない」と言い放ったり、バンドの名前の綴りを間違えたイベント主催者にブチ切れて何の予告もなくアコースティックギター生音でライブを開始した挙句にアコギを近くにいたスタッフめがけてぶん投げて自分はステージへ開幕ダイブ…最後はバックにデカデカと掲げられたイベントのフラッグを引きちぎって客席に投げ捨て、暴言とともに中指を立てて去る…と、「何でそんなことするんだよ!」と思えることでもやりたい放題。良くも悪くも…いや、きっと悪くが大部分だろうが…それでも、僕は彼の行動からは目が離せないのだ。毎回、「ライブだ!」っていう感じがする。

そして、個人的にいつもライブで一番感動させられるのがボーカルのカワノがとりとめもなく話し始める、めちゃくちゃなMCだ。彼は自分がライブで話すことを、MCという言い方が気に入らないらしく「これは演説だ!」と彼の日記で書いていたことがあったけれど…。そこには、彼の思うこと、感じること、目指すこと、願うことが、あふれんばかりにこめられている。毎回言うこと、話すことは違うのだけれど、その大体が長い上にめちゃくちゃな内容で、話は時に脱線し、時に最後までまとまらず、時に気持ち悪い。結局長々話した上で、結論も日ごとに内容が違うだけでいつも大体同じだったりする。けれど、彼の言葉はきっと、その日だけ、その日に目の前にいる人間にだけに一生懸命紡いだ言葉なのだ。その言葉はどこまでも優しく、強く、胸に響く。大げさなことかもしれないけれど、僕らにとっては本当に希望のような暖かさのある言葉で、そういう人間が心を込めて作った曲が四人で目の前で鳴らされる。この瞬間を見るだけで、僕は「生きていこう」と思えちゃったりするのだ。

楽曲の良さやライブのすばらしさだけじゃない。他にも、彼らの魅力はたくさんある。カワノが毎日あげている毎日の出来事を面白おかしく綴った日記では彼の人間性をより深くまで知ることができるだろう。僕はこの日記を毎日欠かさず読むほどに愛読している。毎日勤勉に書いているくせに「もうこんなものやめてやる」とことあるごとに書いていて、ついに「終了宣言」したと思ったら、当然のようにそれを無視して続けていたし、ここでもやりたい放題だ。でも、意外にも文体は優しく…時々嫌なことに対して暴言を吐いているけど…基本的には他者への思いやりがある優しい文章で、語り口も柔らか。後、ライブの時と違って話がしっかりまとまっているのもいい。フジタレイさんやオオモリさんは、ライブ会場で鉢合わせて会話したことのあるメンバーだけど、二人とも見た目に反してものすごく優しくて紳士的な印象で驚いた。多分バンド内ではあのボーカルを抱えて苦労しているのかもしれないな、と思った。あ、でも、タカハシさんも変な奴だ。SNSもやっていないし日常が見えてこないし、いつも不機嫌そうな顔をしている。謎の存在だ。でも、彼ら四人を見ていると四人ともそれぞれプレーヤーとしても人間としても本当に個性的で魅力的で、本当に面白いバンドだなぁと思う。ちなみに、彼らの面倒を見ているマネージャーさんのステージ上での密かな活躍や(主に暴れるメンバーのお世話)、それをものともしないクールなキャラクターとか、いつも素敵な写真を撮ってくれるガタイのいいカメラマンさんとか、彼らを取り巻くスタッフさんたちも魅力的に映る。

こうして、彼らのライブの魅力をたくさんあげたけど、本当に彼らのライブは不思議だ。学生時代たくさんのフェスに行ったり、ライブハウスでバンドを見たり、大人になってからも時折大型フェスには足を運ぶけれど、こんな気持ちにさせられるバンドはいない。「面白い」「やばい」「かっこいい」「かっこ悪い」「興奮する」「明日からも生きていこうと思える」…これまでに彼らのライブからはたくさんの感情を湧き起こされた。そして、これからもそうだろう、と勝手に期待している。

…けれど、彼らが今年の一月から回っていたツアーや、今夏に予定されていたツアー、自主レーベル設立記念ライブ…全てがこの世の中のせいもあって延期になってしまった。先の見えない延期は、僕も、他のリスナーも悲しかったけれど、何より彼ら自身が苦しい思いや不安を抱えているだろう。けれど、少なくとも僕は、いつかやってくる彼らのライブをいつまでも待つつもりだし、きっと僕だけじゃない、彼らをいつまでも待っているような人たちは他にもたくさんいると思う。彼らはきっとまた希望を僕らに見せてくれるはずだ。僕はそれをいつまでも待ちたいと思う。

そして、まだ彼らのことを知らない人がいるだろう。そんな人たちに、彼らに一人でも多く出会って欲しいと思っている。「変なバンドだな」とか、「めちゃくちゃなバンドだな」とか、初めて僕が彼らを見た日のように、彼らを受け入れない人も大勢いるだろう。けれど、彼らを見ながら、笑顔を浮かべていた僕の友人のように、泣いていた女の子のように、そして、圧倒されて拳を握っていた僕のように、彼らの存在に胸を打たれる人間もきっとたくさんいるはずだから。彼らにこれから出会う人たちも、彼らを待つと決めた人たちも、また彼らのライブで音や言葉を浴びれる日が来ますように、と、柄にもなく、願ってしまう。

最後に、個人的な話を。いつかまた僕がCRYAMYのライブを見ることができたなら。僕はいつも我慢してしまうから、一度くらい、我慢せずに泣いてみようと思う。その日が来ることを信じて、今日も僕は僕で、踏ん張っていこうと思っている。

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