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ショウタイムは、ここから

セカイを開き続けるスキマスイッチがコロナ禍で魅せた可能性

あの夜からもう3日目の朝を迎えようとしているのに、じんわりと涙があふれてくる。

画面越しだったけれど、今もずっと自分の中にある高揚感と余韻は確かに、あの温かくてドキドキして、大好きなあのライブの空間に行った後のものと同じだ。 
 

日常からライブの空間が奪われて久しい、2020年6月27日午後7時。
ライブツアーTシャツ姿の私はタオルを握りしめ、画面の前にいた。
スキマスイッチ初の有料配信ライブ「Streaming LIVE“a la carte 2020”~実際にやってみた!~」を見るために。

このライブのタイトルを説明すると、元になったのはファンクラブ内での“仮想ライブ企画”。
自粛期間中、会員から楽曲投票を募って“初心者にお勧めしたいセットリスト”を作り、スキマ本人たちが過去のライブ映像をつなぎあわせる形で公式YouTubeチャンネルに公開した(1時間44分)。
後日、その「仮想神セトリ」を、その名の通り有料配信ライブとして「実際にやってみる」と発表したものだった。
 

一旦さかのぼるが、2月末、九州にいた彼らは全国ツアー千秋楽を迎えるはずだった2日前に、政府からの自粛要請を受けた。延期を余儀なくされた熊本公演があるはずだった当日2月28日に、急遽無料生配信を既に行っている。

まだ前例もない中で仕込んだ配信ライブは、手探りの中スタッフのスマートフォンで撮影、照明なども簡素化しスマホ撮影用に調整したものだったという。
全国のファンの心を高揚させる素晴らしい演奏と、曲に寄せられたメッセージに、120%の力で今できることをしてくれた“チームスキマ”を誇りに思い、「元気をくれてありがとう」と心から思った。

ただ、だからこそ。私はその時にものすごく思ってしまった。
「早くちゃんと、ライブで会いたい」。

生のライブへの思いはますます膨れ上がった。やっぱりこの演奏を、この世界で一番好きな歌声を会場で浴びるように聴きたい。
ライブが余計に恋しくなってしまった。
会えるまでの間にも、またこうやって我慢しているファンを楽しませてくれることに感謝しよう――。6月27日の有料配信当日を迎えたときの率直な思いもこうだった。
 

そんな価値観が、6月27日の配信が始まるとすぐに崩れ落ちた。

なぜなら、それは“ライブの代わり”ではなく、
【配信】という新しいライブのジャンルを切り拓いたものだったから。
 
 
普段のライブ同様にホールに流れるアナウンス。
ステージを包み込むまばゆい光から二人の影が映し出され、鍵盤・常田真太郎の奏でる印象的なフレーズが外の世界を一瞬でシャットアウトし、ボーカル・大橋卓弥の力強く包み込む歌声が響く――観客の時間を止め、2人が奏でる世界へいざなう1曲目「時間の止め方」だ。
最初の高揚のピーク、サビが始まる瞬間に光がほどけ、目の前に待ちわびていたあのステージが現れる。
その光景と熱量に、一瞬で息をのんだ。まぎれもなく、会場で味わうあの興奮だった。

 ライブは「全力少年」「ガラナ」といった定番ヒット曲から、ファンの中で人気が高い「SL9」「僕と傘と日曜日」など17曲を網羅した内容。
初めから配信を目的に組み立てていくライブだったため、これまでと異なる魅せ方にこだわりが光った。
 

《「愛」どこで誰が創造したもんなんでしょうか 難解なんだね》

―「藍」

恋愛のやるせなさともどかしさを描く歌詞が、画面右に映し出される。配信ならではの演出だった。
カメラは、やさしく切ないイントロを編み出すギター・石成正人から、情感たっぷりに歌い始めた大橋をゆっくり移り捉えると、
大橋を中心に浮遊するように、ワンカットの長回しでステージを映し始める。
エフェクトがかかった画の質感、曲の世界観と相まって、まるで1本の映画を見ているかのような、芸術的な時間を届けた。

ファン人気が根強い「デザイナーズマンション」は、バンドメンバーとのセッション、ソロ回しが最大の魅せ場。こちらも、一人ひとりのパートをかなり近くまで寄って体全体のリズムの取り方や手先の動き、その気迫や表情までを捉え、より各パートが奏でる音楽に濃密に向き合う時間が提供された。
会場の客席からは、ここまで近くで見ることはできない。

ライブ中、常田の鍵盤を上から映し出すアングルも登場するなど、普段見ることのできないファンにとってはたまらないカメラワークも駆使された。
 

配信ライブにはさまざまな声もある。
物理的には離れていて、音の響きを直接肌で全身で感じること、大好きなアーティストの前で喜びを爆発させることも、直接「ありがとう」と叫ぶこともできないかもしれない。
だが、発信する側の情熱は、紛れもなくライブのそれなのである。
普段テレビ番組やライブを収録した円盤ではほとんど茶の間と目が合わない大橋が、この配信ライブではまっすぐに画面を見て歌いつづける場面が何度もあった。

《ぼくらは何処にいたとしてもつながっていける》

―「奏(かなで)」

まっすぐに私たちに届けてくれているのがものすごいエネルギーで伝わり、言葉にならなかった。
大橋は画面のこちら側に、何度もコール&レスポンスを呼びかけた。
常田は「普段お客さん見ながら弾いているから」と、チャット画面を愛おしそうに眺めた。
ふたりにはファンが見えていたのだと思うし、
ふたりを介すと、私にも観客の歌声が聞こえた気がした。
  

彼らは決して、ライブの代わりになるものをとりあえず届けているのではない。

ホールで音楽の幅と共有の楽しさを提供するスキマ。
フェスでファンが誇らしくなるくらい一体感を生むスキマ。
バンドやシンガーソングライターと対バンツアーしたスキマ。
二人だけでライブハウスをまわるスキマ。
編曲もすべて行い、フルオーケストラと共演したスキマ。
二人が別々で、歌い手とプロデューサーでソロ活動したスキマ。

そのスキマが、今度は【配信】というライブのジャンルを切り拓こうとしている。
私は今、そう捉えている。
 

今回はこんな味わい方もあった。

当初、過去のライブ映像をつなぎ合わせたYouTubeコンテンツだった本企画。
映像は、一曲一曲がさまざまな年のツアーから抜粋されている。
配信ライブで届けられた今の等身大のスキマスイッチと重ね合わせて観るとまた、曲の持つ色がさらに深くなっていったのである。

例えば一曲目オープニングで演奏された「時間の止め方」は本編の最後、エンディングver.も演奏される。
“オープニングで止めた時間を再び動かし、再会を約束する”というこのストーリーは、ファンの間で特に人気の高い2012年のツアー「musium」の演出の再現だ。
もう観ることのできないはずだった8年越しの再現。を今の彼らから受け取った時、きっとそれが今伝えたい観客へのメッセージであることはもちろんなのだが、今の彼らの音楽に対する決意表明にも聴こえてくる。

今回久々に演奏された「アーセンの憂鬱」では、常田が2007年当時のアフロ姿になる遊び心を見せた。
当時の地毛アフロの常田とギラギラの衣装の大橋の頃の映像を想い重ねていると、演奏の表現や歌い方、アレンジの違いだけでなく、ピアノの向きの違いだったり表情だったり二人の関係性の変化なんかにも思いが巡ってしまい、なんだかちょっと感慨深くなるのである。

どの曲も、これまでいろんな場所で演奏され、それぞれに違う表情を持っている。
あの時があるから今の進化があり、今の形かあるから昔の映像が輝く。

今のこの大変な状況があったから、と思える未来もきっと、ある。
 

ほかの曲でも、当時のアレンジを彷彿とさせたかと思いきや、全く新しいフレーズが聴こえてくる。
彼らはいつも等身大で進化を続けているからこそ、その時の“今”が重なり続けて、曲が持つ色彩がますます深みを増していくんだと
つなぎ合わさったこれまでの映像と、今回の配信ライブを見ながら思う。

そうそう、興奮冷めやらぬうちに見返したり、2回目はヘッドホンで聴いたりできるのも、配信ライブのいいところで、
アーカイブが数日で見られなくなるのもまた、良さなんだと思う。
 
 

「ライブができるのが楽しい」。「嬉しい」。配信中大橋は何度も口にした。
そう、なにより、あれは喜びにあふれた時間だった。声を大にして言いたい。「私の方が嬉しい」。

ライブ・コンサートの完全な再開のめどはまだ立たない。
そんな先が見えない中でも悲観せず、マイナスをプラスに変えていく。
彼らについていけば、いろんな色を、景色を見せてくれることを確信している。これまでもそうだったから。
だからずっとついていく。
この大変な今こそ、音楽の底力、アーティストと音楽ファンの絆の力を感じている。

《さぁショウタイムの始まりだ
ここからなんだ》

―「リアライズ」(アンコールより)

2年前の15周年の横浜アリーナ公演でもアンコールで聴いたこの曲。あの時とはまた違って特別に聴こえた。
 
 

最後に、この一回限りの配信ライブでスキマスイッチやバンドメンバーはもちろん、
ステージやカメラワーク、照明、衣装、画面からは、音楽を届ける周りのスタッフの並々ならぬ気合、熱いパワーも感じ取った。
私は一音楽ファンとして、心から敬意を表し、人生の喜びを与え続けてくれていることに感謝している。
だからこの大好きな人たちを、愛であふれた世界を、私も負けないようこの暑苦しい感じで全力で応援し続けたい。そう強く思っている。

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