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2017年9月12日

海 (20歳)

ハタチがGRAPEVINEをどうみるか

《同世代バンドとは違う、大人という魔力》

まず最初に言っておきたいのだが、私はGRAPEVINEのファンになりたての未熟者で、GRAPEVINEについて偉そうに批評しようというつもりなど、全く無い。知っている楽曲も恐らく有名どころばかりだろうし、とにかくGRAPEVINEの知識が浅い。それを踏まえた上で、この記事を読んでもらえるとありがたい。

GRAPEVINEは完全に私の両親世代がファン層であり、私が彼らを知ったきっかけの一つも父だった。(もう一つは、好きなバンドメンバーが勧めていたことにある)。父はGRAPEVINEのファンで家にはCDがたくさんあったのだが、父より母が強い我が家では父の好きな音楽が家に流れることはなく、私はその存在を、私からGRAPEVINEの話題を振ることになる19歳の時まで知らなかった。「好きなバンドメンバーがGRAPEVINEっていうバンド好きなんだよね」という一言に乗ってきた父の熱量で、父もファンだということが発覚したのだ。

GRAPEVINE話に花が咲き、私はとりあえず父から一枚のアルバムを借りてそれを聴いてみることにした。好きなバンドメンバーが好きな音楽を理解しておきたい、という単純な動機だった。

アルバムを一周した時点での私の感想は、正直「曲の違いがあまりよくわからない」だった。しかし、日頃テレビからよく耳にする若手の邦ロックバンドに慣れている私にとって、GRAPEVINEの曲はどこかとても新鮮に感じた。

あまり弾けることがなく哀愁を漂わせているメロディー、どこか気だるそうというか、全力の押し売りをしない、無理して笑顔を作ることもかっこつけることもしなさそうな歌い方で、ストレートに伝わってくる何か。総じて私の心には得体の知れない「切なさ」が残った。「このバンド、私も好きになるかもしれない」、なんとなくそう思った。

一周目では注意が向かなかった歌詞も、二周目では私の耳に届いた。始めに心に留まったのは、”風待ち”の歌詞で、私はまだその時ハタチにすらなっていない、人生経験の浅いただの若者であるにもかかわらず、一丁前に「懐かしさ」を感じたことを覚えている。

《みんな知らぬ間に時を過ごしたのかなあ/思い描いた通り?ちょっと違う/今 夏の香りがしました/涙が出なかったのはそれのせいかなあ》

こんな気持ちになる歌詞今までになかったなあ、と漠然と思った。私と同世代にいる20代若手バンドには、「今」を乗り越えようとする曲、「未来」への希望を歌う曲が多いように感じるのに比べて、GRAPEVINEの曲には、今の若手バンドからはあまり感じない、「過去を懐かしむ余裕」があるように思えた。そしてそれは若い私にとって、「大人の格好良さ」や「色気」として強く魅力的に映った。そしてこう思っている時にはもう立派にGRAPEVINEの虜だった。

”風待ち”はもう十六年も前の曲で、ということはつまり彼らがこの曲を作った時は彼らもまだ若手だったのかもしれないが、当時を知らない私が聴けば、この曲にはれっきとした大人の渋さがあり、とてもクールだと感じた。イントロからしてその魅力は全開だと思う。そこにあの特徴的な声が被さってくる時の、不思議な心地よさといったらない。

そしていつの間にかハタチになった私は、今年あるフェスで初めて生のGRAPEVINEの音楽に触れ、彼らの魅力をさらに思い知らされることになった。

白いシャツとタイトな黒いボトムスをさらりと着ただけのボーカル田中がステージに現れた瞬間、シンプルに「この人はなんて格好良いんだろう」と思った。言っておきたいのだが私には別に年上好きという趣味はなく、こんな風に大人の人を格好良いと思ったのは初めてだった。そしてその気持ちはアイドルに対して格好良いと騒ぐのとは違い、「ああ、格好良い歳の重ね方をした人ってこういう人のことを指すんだろうなあ」というような、一種の憧れに近いものだったと思う。

歌が始まればそのオーラにただ圧倒され、私の心は強く揺さぶられていたが、しかし実際演奏中に、他のバンドのようにこちらを煽ってくることは無い。淡々と、と言うと少し語弊があるように思うが、やっぱりここでも感じさせるのは「大人の余裕」で、ハタチを生きている私にとって別世界のスターのように感じられた。

そして歌っていない時でさえ、田中は大人の魅力をどんどん上塗りしていく。(もちろん他のメンバーの方も本当に格好良かったのだが、一人一人説明するとキリがないのでボーカルの田中さんをGRAPEVINEの象徴として取り上げる)。口を開けば出てくるのは緩く穏やかな関西弁で、メンバーとの自然体なやり取りで生まれる笑顔を見ると、私は「こんなお父さんが欲しい!(笑)」とまで思った。そんないきり立っていないところが、バンドマンとして逆にとてつもなく格好良いのだと感じた。結局そのフェスでの思い出は、数ある出演バンドを差し置き、GRAPEVINEが大半を占めている。

今の時代、テレビや携帯があれば様々な流行りの音楽に出会い、知識を広げることは容易い。そんな時代の中心に生きているのはとても楽しいものだし、ありがたいし、面白いと思う。しかし、新しいものに出会う機会はたくさん用意されているのに対して、古いものに出会い、そしてさらにそれを良いと感じられることは、なかなかないように思う。だからこそ、GRAPEVINEに出会えたのは私にとって多分とても貴重な経験で、喜ばしいことなのだ。

ハタチの今私が捉えているGRAPEVINE像が、この先自分が歳を重ねていくにつれてどう変化していくのか。私は今それが少し楽しみである。

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