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「また会えたら」

[Alexandros]が"Party in ur Bedroom"で示した未来を待つ

最後に「ライブ」に行ったのは1月の半ばだった。
無理やり詰めて200人が限界、という小さなライブハウスで、柵らしい柵もない低いステージに立つバンドマンを、人の頭越しに見るようなライブだ。
勿論すし詰め状態なので、季節柄インフルエンザが怖くて、私はずっとマスクを着けていた。
 

「ソーシャルディスタンス」なんて言葉が、まだ存在しなかった世界で見た、最後のライブだった。
 

世界の様相が目に見えて変わり始めたのは、それから1ヶ月もしない頃だ。
 

人との接触を避けること。人が集まらないようにすること。
「3密」「新しい生活様式」なんて聞いたこともなかった言葉を合言葉に、世界はそれまでと大きく形を変えてしまった。

大勢が集まるようなイベントやライブは、次々と中止になった。全国各地のライブハウスは、今もなお苦境に立たされている。

音楽に、ライブの空間に居場所を求めていた私は、それを失って正直途方に暮れている。
 

仕事、今まで通りなのに、楽しいこと、何もない。地獄。
 

そんな言葉をSNSに吐き出しながら、今日までで4枚のチケットを払い戻しした。

その中に[Alexandros]のベストアルバム発売に合わせたライブハウスツアーのチケットがあった。

ツアーそのものが発表されたのは、世の中がこの状態になってからだったけれど、その頃にはライブできるかなという期待を込めて、初めてファンクラブ先行なるもので手に入れたチケットだった。

7月4日、仙台GIGSでの公演。
会場の外も中も暑そうだな、夏の始まりにライブハウスで[Alexandros]は最高だなと思いながら、ただただその日を楽しみにしていた。

発券されることもなく消えてしまった、このチケットのことを思うと未だに悲しい。
 

最終的にはベストアルバムの発売も延期し、ツアーの全公演中止という決断をした彼らから、次に届いたのは、「リモートアルバム制作」「無観客ライブ開催」という知らせだった。
 

リモートアルバムはわかる、あんな曲やこんな曲がアレンジされるの?

無観客ライブとは、はて?
 
 

個人的に、ライブはナマモノだと思っている。

「今日何を演るのか」と音源の復習をしながら、居ても立ってもいられないような気持ちで電車に乗ること。

開演までのじくじくと胸が痛むような緊張感とか、客電が落ちた瞬間に何もかも全部どうでも良くなることとか。

会場を後にする時の、興奮と寂しさが混じりあった何ともいえない気持ちとか。
 

そんなことも全部含めて「ライブ」は「ライブ」で、会場の中で生きて動いて、アーティストと観客の思いが混じり合って形が決まるものだと思っている。
 

【Adventure】でカメラを客席に向けてくれるのが好きだった。
【Starrrrrrr】で、最後のサビに向かう前に、みんなで歌声を合わせるのが好きだった。
【ワタリドリ】で、拳を突き上げながら歌う姿を見るのが好きだった。
 

それが無いのに、目の前にいないのに、家にいるのに、配信で小さな画面越しに見るライブを、果たして「ライブ」と受け止められるのだろうかという気持ちが正直あった。

チケット、買う必要ある?とすら思った。収録されたライブ映像を見るのと大して変わらないのでは、と。
 

そして散々迷った末に、6月21日、ファンクラブ限定の日のチケットを買った。今年実際に使うのは2枚目になるチケットだった。
 
 

前置きが長くなったが、Party in ur Bedroomを観て私が出した結論を述べよう。
 

「[Alexandros]のパフォーマンスは、目の前に観客がいようがいまいが、何一つ変わらないらしい」ということ。
チケット買う必要ある?と考えていた自分のことは、殴りたくなった。無観客だろうと、確かにライブはライブだった。
 
 

6月21日、日曜日、19時45分過ぎ。
私はテンションを上げるために過去のツアーTシャツに着替えていた。
開演まで間もなく、という頃になるとサウンドチェックの様子が映り、「あ、こんなところも流してくれるのね」と思いながら、20時を少し過ぎた頃にライブが始まった。

優しく、穏やかなギターの音はリアレンジされた【Starrrrrrr】に繋がり、リリースされたばかりのリモートアルバム、「Bedroom Joule」に収録された曲が次々に演奏されていく。

やっぱり家で聴くわけだし、ゆったりした曲が多いのかな、という予想を鮮やかに裏切り、「後半戦もよろしく!!」と勢いよく放たれた曲の数々には度肝を抜かれた。

いや、これ実際に会場でお客さん入れてやったら大変よ?

【For Freedom】【Dracula La】【Waitress,Waitress!】と立て続けに投げ込まれたら、無事でいる自信が全くない。

客席には誰も居ないのに、彼らはいつもと同じように「叫べ!」「歌えますか!」と煽りながらカメラにマイクを向け、汗まみれになりながら楽器を鳴らし、声を上げた。

いつも見ていたライブと、何ら変わらないパフォーマンスを繰り広げる光景を前に、いつの間にか曲に合わせて歌ったり、手を振ったりしている自分がいた。
 

アンコールで原曲アレンジの【Starrrrrrr】が鳴らされ、間奏で磯部が叫びながらマイク前に走り出て行ったのを見た時には、思わず吹き出し、笑いながら、涙ぐんでしまった。
 

「彷徨って
途方に暮れたって
また明日には新しい 方角へ
この場所で
この乱れた時代で
傷付きながら
己の歌を刻んでいく」【Starrrrrrr】
 

何度も聴いたこの歌詞が、こんなに胸に迫るほどに時代は混迷している。

以前の「普通の生活」は消え去り、音楽は鳴る場所を失い、先の見えない毎日が続いている。

そんな中でも、こんな風に形を変えてでも、音楽を止めない、届けることを諦めない彼らを、また一層愛してしまうなぁと思った。
 

でも、「じゃあ配信で満足なのか」と問われたら答えは絶対にNOだ。
[Alexandros]の方の答えもたぶん同じで、それは「Bedroom Joule」リリースに合わせて公開されたティザー映像の中でも語られている。
 

「新しい世界とか
いまいちピンとこないけど
古ぼけたスタイルで
僕は君を愛していたい
また会えたら
これ以上にない景色を
また会えたら
僕らは忘れないでいよう
When the world comes back
また会えるように」
【rooftop】
 

「Bedroom Joule」唯一の完全なる新曲として収められたこの曲を、川上は映像の中で「お客さんに向けたラブソング」と評した。
 

同じ空間で笑ったり泣いたりを共有することで生まれる繋がりを、全身に音を浴びることの心地よさを、発した声が届くことの喜びを、一緒に歌うことの楽しさを、一緒じゃないと作り出せない景色を、私たちはもう知ってしまっている。
 

こればかりは替えがきかない。アップデートは出来ない、絶対に。
 

“When the world comes back”
世界が、戻ってきた時には。
すっかり元通りにはならないかもしれないけど、その時が来たら。
 

やっぱり、目の前で直に感じる、本当の「ライブ」を取り戻したいと思ってしまうのだ。
 
 
 
 

Party in ur Bedroom、6月21日公演、ほんとうの最後の最後に「また必ず直でお会いしましょう!」と川上は叫んだ。

その後に鳴り出したのは【You’re So Sweet & I Love You】。

思い出されたのは2019年のSleepless in Japanツアーのアリーナ編初日のこと。

サブステージで、川上が「お客さんに近いこの距離だからこそ、演りたい曲があるよね」と前置きして、鳴らされた曲が【You’re So Sweet & I Love You】だった。
 

「Slip inside your soul
and then grab and touch
I’m gonna entertain this night
Struck by the rain that falls into my heart
And then I realized I live to sing」

(君の魂へ滑り込んで
心を触り、掴む
今夜は俺がもてなしてやる
胸に降り注ぐ雨に打たれて気付いた
俺は歌う為に生きるんだ)

【You’re So Sweet & I Love You】

歌詞を必要以上に深読みするようなことは盛大に皮肉られているから、しないけれど。
ライブで音を鳴らすこと、歌うことの意味を、音楽を届けていくことへの決意を、[Alexandros]らしい言葉(作られた頃には[Champagne]だったけど)で綴った曲だと思っていた。
 

曲の最後に繰り返される「You’re so sweet and I love you…」は訳すとこのようになるらしい。
 

「おまえらムカつくぐらい最高だ 愛してるぜ」
 
 
 

また会えたら。
今度直に会えたら。
最高になると決まっている景色のなかで、私は彼らに向かって、こう叫ぶと決めている。たぶん、泣きながらなのだが。
 
 

[Alexandros]最高だ、愛してる、と。

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