3733 件掲載中 月間賞毎月10日発表
この数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。

どこか懐かしい世界で、今を生き続ける

スピッツが作り出す「死」と「想い」の共存

私は「人の死」を経験した事がない。
祖母、祖父はそれぞれ生きていて、友人も知り合いも亡くなった人は今のところいない。
そう、〝今のところ〟

この地球に生まれ、生きている限り、避けては通れない誰かの死。私はそれに直面した時、どうなってしまうのだろうか。
もう動くことのない、本当に大切だった存在を目の前に。
 
 

スピッツに出会ったのは、毎日が憂鬱で仕方がなかった高校生。クラスに馴染めず、何に対しても自信が持てず、常に自分自身を否定していたあの頃。
何気なく眺めたYouTubeのおすすめに表示された、再生回数の凄い曲を見つけた。
〝ロビンソン〟
タッチしてみた。何故かざわざわした。
深いところから湧き出るようなサウンドと、分かりそうで掴めない歌詞。
懐かしい、けれど初めて訪れるような、不思議な世界だった。
 

それからスピッツの新たな曲を知るほど、どんどん吸い込まれるような感覚に陥った。
〝渚〟のどこまでも広がる胸の高鳴り。
〝君と暮らせたら〟が届けてくれる、どこか儚い心地よさ。
〝桃〟は暖かい色の虚無感を与えてくれる。
 

「生きていて良かった」
スピッツの歌に包まれている時、いつもそう思っていた。安心感と切なさが混ざり合い、嬉し泣きのような涙が溢れた。
アップテンポな曲も、穏やかなメロディーも、強く身体に刻まれた。文学的な深い言葉に、心から救われた。醜い感情にも、もどかしい想いにも、そっと寄り添ってくれる。

通学電車の窓からの景色。
自転車置き場から駅までの道。
寝る前に見つめる、暗い天井。

何気ない日常の中で、ひたすらスピッツの曲だけを聴き続けた。
やっと見つけた輝く海で、形のない何かを見つけるため、とにかく潜り続けているような気分だった。
 

そして高校生を終える頃、暗かった日々から遠くかけ離れた、心地の良い自分になっていた。
人、生き物、自然、そして限りある時間を愛おしいと思うようになり、様々な価値観が変化していた。

今も、その延長線上を歩き続けている。
 
 

スピッツという音楽は、
何故こんなに心の深い所で響くのか。
長い月日の間、色あせることがないのか。

はっきりとした理由は分からない。
しかし、
「死」と「想い」が共存している世界観があることは確かだ。
 
 

〝スカーレット〟という曲がある。
NHKの朝ドラの題名にもなり有名な色となったが、スピッツが1997年にリリースしたものだ。
変わらない想いが流れる歌の中に、少しでも動かすと全て消えてしまいそうな脆さを感じる。久しぶりに昔のアルバムをめくっているかのようなイメージが広がる。
 

『 離さない このまま 時が流れても
  ひとつだけ 小さな 赤い灯を 守り続けていくよ 』
               (スカーレット・歌詞)
 

よくある恋愛ソングなのかもしれない。
けれど私にとっては、「生きていること」を指先でしっかりと感じるような、そんなー曲なのだ。

これから待ち受ける「死」は恐怖だが、人間は「今」しか生きられない。
未来がある限り、人も想いも変化し続ける。
 
 

かけがえのない存在との幸せを、強く噛み締めること

地球で過ごす自分自身を、尊く思うこと
 

スピッツはこれからも、そっと教えてくれるだろう。
どこか懐かしい世界と共に。

  • 投稿作品の情報を、当該著作者の同意なくして転載する行為は著作権侵害にあたります。著作権侵害は犯罪です。
  • 利用規約を必ずご確認ください。
  • ハートの数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。
音楽について書きたい、読みたい