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第1回 最優秀賞 | 2016年2月26日

ウンババ (18歳)

高校生から見たキング・クリムゾン

2015年 12月8日、この日はテスト後の振り替え休日とやらで学生は某ネズミの国やらオサレな飯屋に行って羽目を外してるに違いない。だが俺は違った。この日は俺が何ヶ月も何ヶ月も待ち望んだ神聖な日であった。そう本日はキング・クリムゾンの来日コンサートの日である。

このテスト期間は全てはキング・クリムゾンのためと勉強をしてきた。しかしそんなもの頭に上手く入るわけでもなく「えー、感覚神経、ニューロン、クリムゾン、毛様体、太陽と戦慄…」といった具合だった。とりあえずここで俺自身の説明をしなきゃいけない。都内に住む高校3年生、三度の飯より音楽好き というのは嘘で三度の飯の方が好みである。中1の頃Ben.E.Kingの『Stand By Me』を聴きそこで俺の中の何かがハジけた。その後はThe Beatles、Deep Purple、Bob Dylan、Led Zeppelin、、に手を出しまさに教科書通りのロック大好き学生となった。そして親父の聴いていたPink Floydを初めて耳にした時「へぇ、いいジャン」と思い独学で調べ始める(この時かかっていたのは『対』だった)。中学3年生になり自分の金でCDを買うようになり、そこで買ったのが『原子心母』であった。俺はここでまたハジけた。躍動感と緊張感が同時に襲ってきて光の輪が頭の中で広がっていった。「こいつは革命だ」俺はそう感じたのであった。かくして俺はプログレに目覚めたのであった。『Pink Floydの道はプログレッシブロックの道なり!』まさにその通りだった。
 

Pink Floydだけじゃ飽き足らず俺は色々と勉強を重ねていった(この努力が学校の勉強に向いていたら官僚か何かになるかも知れなかっただろう)。そして俺はある一枚のアルバムに興味をそそられた。赤い顔の男がバーン! そう、『クリムゾン・キングの宮殿』である。CDの小さなサイズですらこのインパクト、買わずにはいられなかった。実際に聴いてみた。これもまた革命であった。何が起きたのかわからぬままその『21st Century Schizoid Man』を聴き終えた。メタルとは違う激しさ。そうこれは狂気であった。

そんなこんなで俺はプログレにハマってしまった。ジャズロック、カンタベリー、スペースサイケ、シンフォ、仏蘭西、伊太利亜、独逸、北欧、、と聴いていった。そして時代は2015年の初夏(辺りだった気がする)。俺はいつものようにTwitterをみていた。毎秒毎秒誰かが何かをツイートするため大体の投稿は砂に埋もれ忘れ去られてしまう。しかしそんな砂嵐の中で、俺は、はっきりと、見た。『プログレッシブロックバンド キング・クリムゾン来日決定』。惑星ゴバイアにぶっ飛んでいくかのごとく衝撃的だった。

何度もその記事を読んだ。「同名バンドじゃないか? そっくりさんじゃないだろうか? 来日は来日でもサイン会とかじゃないか?」5回くらい読んだ後確信した。あのクリムゾンが日本に、東京に、渋谷にやってくる…ヤァ…ヤァ…ヤァ…。だが俺は貧乏学生、高価なチケット代はすなわち死を意味する。恐る恐る見てみるとなんと全席15000円ポッキリ! 普通に高い!!まぁ某マッカートニーさんよりは安い値段であるが15000円…! しかも全席! 何か嫌な予感がする…そう思った。

チケット販売当日。コンビニでもチケットが取れると聞いたので行ってみた。そして開始と同時に問い合わせ番号を入力した。出てきたのはチケット販売画面ではなく「回線が混雑しておりますので」という機械的な冷たい文字。「うそやろ…」、俺は思わず呟いた。「きっと何かしらのアイドルのライブと販売時間がかぶったんだろ…」、そう自分に信じ込ませた。機械の前で悪戦苦闘すること10分、ようやく繋がった。さて席を選ぼうと画面を進めていくがどの席もバツ印が付いていた。「sold out」と書いてあった。そうキング・クリムゾンはプログレッシブロックバンドではない。アイドルグループなのだった。しかし俺は諦めず席を探した。するとようやく一席見つかった。2日目3階席最後の列、、背に腹は替えられない、そう思いチケットを購入した。ちくしょうめ。

その日から徹底的にクリムゾンを聴くようにした。初夏当時はクリムゾンの名盤と言われるものしか持っておらずディシプリンクリムゾンや近年のクリムゾンには手をつけてなかった。CD屋に行きまず初めにクリムゾンコーナーを確認する生活が数ヶ月にも及んだ。結果持ってないスタジオアルバムは『Beat』だけの状態となった。ネットで現在のクリムゾンのセットリストを確認し照らし合わせながら聴いたりもした。勉強はしないくせにこういう所だけは妙にマメであった。そして最近のクリムゾンについても学んだ。何やらトリプルドラムでヴォーカルは公式コピバン(?)の21st Century Schizoid Bandのジャッコさん。ステージの端で相変わらずのフリップ卿やメル・コリンズ、永遠のベーステクニシャン=トニー、錚々たる顔ぶれであるが俺はそこまで期待をしてなかった。セトリを確認する限り演奏する曲のラインナップは何だかベスト盤のようだし頑固フリップ卿も柔らかくなったのかなぁと感じるからだ。2003年以来スタジオアルバムは出していないし何だかちゃっかり『〆』を行おうとしてないか? 不安が頭をよぎる。

そういや2014年のコンサート音源をまとめた『Live At The Orpheum』が発売されていたな。これを聴けばクリムゾンの現状がわかる と思ったが俺は買わなかった。理由は二つ。一つ目は評価がなんだか微妙な事と、二つ目はあえて聴かずに行った方が楽しいのではないかと思ったからだ。トリプルドラムやジャッコさんの声を想像するのもまた楽しいのかもしれない。

ネットで調べた情報をまとめると大半は『Starless』 → アンコールで『21st Century Schizoid Man』、『太陽と戦慄』、といった流れであった。まぁ納得。そして意外にも80年以降の曲は少ない(ディシプリン期は全滅?)。トニー殺しではないのか?とも思える。まぁ全盛期の頃の曲は聴けるんだから悔いはねぇべ精神でそこは納得した。そういや2014年に来たYesも『危機』『こわれもの』の再現だったな。やはり大御所バンドは『〆』のシーズンなのか? 当時は観客もバンドも入り乱れながら狂気のごとく演奏をしていたんだろうが今じゃ御立派なコンサートホールみたいなトコでちょこんと座り拍手をパチパチと送る。俺は物足りないと感じるがオッサンオバハン、バンドメンバーはどういう気持ちなのだろうか。

そういや今回のクリムゾンの客層はどうなんだろうか。Yesに引き続きオッサンオバサンオンパレードなのだろうか。『21st Century Schizoid Man』を聴きながらノリノリになるオッサンオバサン達はなかなか不気味なものだ。しかしこの頃はプログレ好きな若者が増えてるという(プログレ好きの学生は何だか友達が少なそうで何とも懦弱そうなイメージである)。まぁこの際客層なんぞどうだっていい。ステージに立つメンバーもオッサンなのであるから。

12月7日、クリムゾン東京初日の日がやってきた。俺はTwitterを駆使し“オタク”達の動向を見守った。どうやら『太陽と戦慄part 1』から始まり名曲を織り込みつつ『21st Century Schizoid Man』で〆たらしい。まぁ大方は予想通りだったがこのセトリにはなかなか興奮した。感想を見たところ「トリプルドラムすげぇ」「『Starless』で泣いた」「これが…クリムゾン…最高すぎる…」と言った小学生程度の内容であった。つまりそれはクリムゾンの凄さを物語ってるものに他ならないわけであり期待値はグングンと上がっていった(ここでテスト勉強を諦めた)。夢にまで見たクリムゾンがもう目の前にいる。簡単に寝付けるわけもなく、ようやく寝たかと思ったらコンサートへ行く夢を見てしまった。本当に夢にまで見る結果となってしまったようだ。

12月8日、クリムゾン参戦日。俺はテスト最終日の朝、何時ものように起き何時ものようにメシを喰らい何時ものように学校へ向かった。BGMは『Starless』、登校を音楽を聴くための時間としか俺は捉えてない。テストをスラスラッと終わらせ家に直行。家でも落ち着かずシャワーを浴びクリムゾン用の服を選んだ。俺は今まで彼女というものを作った事はないがこの心情は初デートに近いものだと感じた(つくづく気持ちの悪い学生だ)。そして電車に乗り込み一足早くオーチャードホールへ向かった。そういやクリムゾンのメンバーが渋谷でたむろってると聞いた。そんな事を頭の片隅に入れつつ街を歩いた。すると焼き芋屋の前に見た事のある顔が。「フリップ卿!?!、??!!?!!、」。まさかと思いもう一度見てみるとそこには普通のオジイチャンがいた。どうやら疲れているのかもしれない。だがしかしフリップ卿のナリはどう見たって日本のオジイチャンそのものであり間違えてしまったのも無理はないと言える。

オーチャードホール周辺に着くともうその異様さが目でも確認できた。明らかに“オタク”なオッサンオバサン、若者らが次々に建物に吸い寄せられていく。確認するまでもなくここでクリムゾンが演るという事は理解できた。エスカレーターを上りホール入り口まで行くと開場待ちの人集りが出来ておりここも異様な雰囲気が漂ってる。実はこの2ヶ月前にジプシー・キングスを観るためここに立ち寄ったのだがその時は健全そうなオッサンオバサンが大半だった。どうやらクリムゾンはそういう感じじゃないらしい。“The オタク”の群れ、俺の未来像かもしれない、そんな愉快な連中が今か今かと開場を待っていた。そんな中、俺は張り紙に気がついた。要約すると「フラッシュとか録音したら途中でやめたるぞ」という内容だった。実際トロントかどっかの公演でフラッシュにブチ切れたフリップ卿が途中でライブをやめたらしい。やはりフリップ卿は健在であった。少し安心。

そして開場されるとオタク達はすぐさま物販に群がった。物販のメインはTシャツでラインナップは『宮殿』や『レッド』、『太陽と戦慄』などの名盤のジャケットがプリントされてるものや例の目玉男のやつなど色々。だが普段着として着づらい上4000円というのは学生にはつらい。パスすることにした。しかし何も買わないのは悲しい。有意義なものとなるとやはりCDだ。唯一売られていたCDは『King Crimson Elements Tour Box 2015』という未発表のライブ音源やデモ音源が詰まった2枚組のボックス(?)であった。「3000円か…後でユ○オンで買ってもいいのかもなぁ」と思ったがそこでケチるのも何だかアホらしいので購入した。話によるとほとんどがインストゥルメンタル曲で玄人向け、しかし現編成の『21st Century Schizoid Man』を唯一聴けるアルバムらしい。何とも憎い商法だ。『Live At The Orpheum』もセットでねと言わんばかりな商法だ。これが終わったら買おうそうしよう。

物販も済ませたし今度は席へ行こうか、そう思い階段を上がり3階席へ。そこで俺は驚愕した。た、高い!!!! 年間5、6人落ちてるんじゃないか、自殺の名所とも思えるほどに高い。建物で言う所の4階分に相当する高さだ。その上手すりが申し訳程度なほど小さい。本当に何人か死んでるんじゃないか?そんな事を考えつつも自分の席を探した。ド後ろのド端であった。「わぁ、後ろが壁だから妙な視線感じないし楽だなぁ」と考えたかったが無理だ、これは無理だ。これで1階席1列目と払ってる値段は一緒であるということに腹が立った。S席A席区分なら文句はないが全席15000円だ。こんちくしょうチケットぴ◯の野郎め。

まだ思いの外時間があるという事でホール内を散歩した。相変わらずの豪華絢爛な作りでクラシックやらオペラにはなかなか適したものとなっている。今思うとここで見たジプシー・キングスは異様なコンサートであった。豪華なホール、スペイシーなラテンミュージック、ノリノリのオッサンオバサン。まぁあれはあれで楽しかったが。そして来場客に目を配った。やはりオッサンオバサンだ。だが意外にも若者も多く見受けられた。プログレはブームなのかもしれない(そういやゲスの極みなんちゃらとか言う邦ロックグループはヒップホッププログレとか名乗ってたっけか?)。音楽に対する情熱に歳は関係ないという事が改めて認識できた。さてそろそろ時間だ。

開演15分前、例の3階席へ戻り今か今かと時間の経過を見守ってた。席に着く人も増え会場の空気も何だか張り詰めてきた。こんなにドキドキするのは中学受験の時以来かもしれない。そしてその時はやってきた。会場が闇に包まれアナウンスが流れた。「録音と写真はNGやで。でもトニーがカメラを構えたら写真タイムね。この時は撮ってもええで」という内容でトニーのカメラタイムというとこでは笑いも起こった(緊張の糸が少しゆるんだ)。その後英語アナウンスが流れ静寂が支配した。そして、ついに、本当に、、、ステージの横手から、、、「キタァァア?!??!?!??!??!」。クリムゾンの登場である。初めてみるメンバーが多数であったがフリップ卿やメル・コリンズ、トニーなどの顔馴染みメンバーは一瞬で確認することができた。「おっ!!フリップ卿や!、!本当にハジに座るんだな!!、PC置いてあるやんけ?!??かっこいい!?、!?」、「メルコリンズや!!? おぉ?! 何だか大人しそうなオッサンやな?!?!」、「トニー!?!!!? 何だかエレガントな感じ?!??」、「ジャッコさん!?!! 何だあの趣味の悪いギターは??!!?」「トリプルドラム?!?! 存在感スゲェェえ?!!?トリプルオッサンスゲェェェェ?!!」、もはやテンションはおかしな方向へ。会場はアガりにアガってた。そして各々がポジションに着くと会場もまた聴く態勢へと移っていった。また会場が闇と緊張に包まれていく。そして一曲目が始まった。『Peace – An End』、2ndの『ポセイドンのめざめ』の〆の曲でありクリムゾンの中でも群を抜いて美しい曲だった。初めて聴くジャッコさんの声はかなり印象的だった。グレッグ・レイクの感じでもなくボズ・バレルの感じでもない。まさに新たなクリムゾンとして相応しいようなヴォーカルであった。あっという間に曲が終わり次は何かと構えた。すると誰もが知っている、だがそんなわけないと思うようなSEが流れた。「グオーグガガガグググッ」。そう、これは、まさか、しかしまだ2曲目、次の瞬間、あの強烈凶悪なイントロが会場を包んだ。そう、これは、『21st Century Schizoid Man』であった。あまりの衝撃に脳は付いて行かず放心状態となった。ここ数ヶ月のセットリストを確認したがこんな展開は無かった。会場のオタクらもこれには呆気にとられたようだ。隣のオッサンの顔なんてまさに例のジャケのようだ(俺自身もこんな顔だったのかもしれない)。ヴォーカルパートがやってきた。さっきあんな優しい声で歌ってたジャッコさんはもういない。そこにいるのは邪悪そのものであった。強烈なヴォーカルパートに続きやってきたのはそう、あの印象的なインストゥルメンタルパートだ。注目すべき、と言うよりも注目せざる得ないのがトリプルドラムだ。こいつらがまたすごかった。「トリプルドラム言ったってオッサン3人じゃ力不足では?」と思っていたがそれは違った。そこにいたのは大学の応援団顔負けの太鼓隊だった。ドラムの音圧が一番遠いこの座席にボコンボコン飛んでくる。昔佐渡島で見た太鼓隊のパフォーマンスを思い出した。「現クリムゾンはトニーのベースやエロいヴォーカルが主体じゃない、ドラムが主体なんだ!!!」そう思わせる音だった。実際ドラムがメインになるようなアレンジは至る所で見受けられた。ドラムはパット・マステロット、ギャヴィン・ハリソン、ビル・リーフリンの3人。前者二人の風貌は何と言うか『スター・ウォーズ』やB級映画が好きなアメリカ人という感じで(かなり失礼)残るビル・リーフリンは何と言うか可愛い人であった。俗に言う萌えキャラといった匂いが感じられた。やはりクリムゾンはアイドルグループのようだ。

そして終わった、と思いきや次はいきなり『Epitaph』が始まった。ファンを完全に泣かせに来ていた。こいつはやばいと感じつつ泣かないよう堪え聴いていた。次に始まったのが近年のクリムゾンの音はこれだ!!とでも言わんばかりの『Radical Action』、『Meltdown』、『Level Five』、『Hell Hounds of Krim 』と言ったドラム主体の曲だ。前者2曲と『Hell~』については初めて聴いたのでなかなか新鮮だったが正直どういう曲なのか実体が掴みづらい感じがした。『Level Five』はやはり近年クリムゾンの代表作の一つでもありスタイリッシュで凶悪な格好良さであった(俺自身はかなり近年のクリムゾンに疎いため良い感想が出てこない)。そして怒涛の名曲ラッシュが始まった。『The ConstruKction of Light』、『One More Red Nightmare』、『The Letters』『Sailor’s Tale』、、間間には先ほどのような近年のクリムゾンのインストゥルメンタル曲(だった気がする)を挟み、コンサートは後半戦へ。

次に来たのが名盤『太陽と戦慄』の一曲、『Easy Money』だ。正直この曲はそこまでピンとこない曲の一つであった。がしかし聴いてみたらびっくり。ドかっこいいのである。やはりコンサートとはすごいものだ。ピンとこない曲もあっと言う間に認識が変わってしまう。曲が終わりまた静寂に包まれた。謎の緊張感が辺りを包み込んだ。おそらく次の曲は“アレ”だろう。誰もがそう思った。そして現にその時はやってきた。儚く悲しげなイントロがファンを覆った。『Starless』であった。一度はクリムゾンの終焉歌として使われたこの曲、まさにラストには打ってつけの曲であった。ゆっくりと静かにヴォーカルパートが入っていく。今にも消し飛んでいきそうな切ない声、叙情的とでも言うのだろうか。何とも目頭が熱くなるような曲だ。この曲は不思議な曲でありヴォーカルパートは前半だけで後半は完全なインストゥルメンタルパートになるのだ。ある人は「後半は退屈そのもの」と言いある人は「後半こそメイン」と言う。私はこの後者に当たる人間でありその時を今か今かと待っていた。そしてその時は静かに、確実に、やってきた。シンプルながら恐怖がこみ上げて来るようなギター。その恐怖は着々と進行、増殖していった。それと同時に今まで単調だったコンサート照明に変化があった。だんだんと、クライマックスに近づくにつれステージが深紅(クリムゾン)に染まり始めたのだ。この展開には江戸っ子の粋のようなものを感じた(?)。派手でなく、ただ淡々と恐怖と深紅の空間が広がっていく。そしてインストゥルメンタルパート最後の盛り上がり場。全てが弾けたような、そんな感じがした。曲が終わった。終わった。会場は光を取り戻しメンバーは自分の場所から離れた。そして各々がカメラやら何やらを構えていた。きた!写真タイムだ。一斉に皆スマホを取り出し撮っていた。ファンのみならずメンバーもガシガシ撮っていた。その中でもフリップ卿の姿が鮮明に頭に残っている。彼の撮る姿、それはまさに農協かなんかの慰安旅行で寺を回り写真を撮るおじいちゃんそのものであった。そしてフェードアウト。それと同時にアンコールの手拍子が始まる。俺も一生懸命になって叩いた。でまたひょっこりとクリムゾンが再来。各々が位置に着く。観客のテンションはMAXだ。始まったのは『クリムゾン・キングの宮殿』の〆、『The Court of the Crimson King』だ。捨て曲の無い『宮殿』の中でも一際異彩を放つ名曲だ。これで盛り上がらずに何で盛り上がるのだ。そして次の曲へ。これもド名曲『The Talking Drum』。その名の通りドラムが鳴く乱れる叫ぶでさらにテンションが上がっていく。いや鳴くのはドラムだけではなかった。全てが乱れ弾けた。流れてくる音が脳内で砕け血液の海に流れサーフィンしてるかのような感覚になった。そんな事を体感していると聴き覚えのあるギターフレーズが聴こえた。最終曲『太陽と戦慄partⅡ』だ。今まで色々な凶悪な音を聴いてきたがこれはピカイチであった。あっという間にノックアウトされた。海は荒れ船は沈み7つの太陽が点滅、耳には爆撃のような拍手喝采、気がつけば俺は渋谷の街を歩いていた。騒がしい渋谷の街ですら静寂に感じられるほど俺は呆気に取られていた。

本来ならここからクリムゾンのまとめをせねばならないのだが全然書こうという気が起こらないし、もし書けたとしてもそれは全くの蛇足である(面倒になって話を投げているわけじゃあない)。俺は音楽評論家でもなければ音楽雑誌の編集者でもない。ただの学生なんだ。しかしながらここで終わらせるのはレポートとしての趣旨に反するし何だか歯切れも悪い。なので蛇足を前提としてレポートを書ききる事にした。

まず結果から。「サイコー」だ。新旧のクリムゾンが巧みに合わさっていた。大体の大物古参アーティストは過去に固執し人間ベスト集紛いのものになってしまうがクリムゾンは違った。今までのキャリアを再確認しつつ新たな世代の音に合わせていくそのスタイルはまさにプログレッシブロックのキングとして相応しい。さしずめ「New Age Of King Crimson」とでもいったところだろうか。これと似た手法、というより思想を持った人間がちょうど近いところにいた。それが『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』の監督、J.J.エイブラムスであった。彼はインタビューで「新しい物語を伝えると同時にはじめて『スター・ウォーズ』を見た時の感覚を取り戻す事が自身の目標」と語った。実際『フォースの覚醒』はそういった点では最も優れた作品となったし古参ファン新参ファンを世界中で熱狂させる結果となった。それと同じ事をクリムゾンはやってのけたのだ。

最後の最後のまとめというのはなかなか酷なものである。長々と女々しく、教授風に語ってもどうせこの熱意は完全に伝わらないのだから。そういうわけで最後に一言言って終わりにしようと思う。

「クリムゾン行かなかったやつざまぁみろ!!!!!!!!」

以上です、ご静聴ありがとうございました。

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