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雨と僕の話

私と元彼とback numberと

「本当に好きなので、俺の彼女になってください」
当時付き合っていた彼の車の中で、back numberの『日曜日』がBGMで流れるなか、私は告白された。
彼は、私の理想を詰め込んだような人だった。
見た目、性格、学歴や職業といったステータス、全て完璧で こんな人って本当にいるんだなぁと思った。
そして私はそんな彼の彼女になれたことが嬉しい反面、どうして私なんかを選んでくれたんだろうと自分に自信を持てずにいた。

 彼とまだ付き合う前のドライブデートの前夜、彼に「ユカちゃんが好きなback numberのCD持ってきなよ」と言われた。翌日、彼の車の中で私はたくさんback numberをかけた。「何の曲が1番好きなの?」と言う彼に「今流れてるこの曲だよ」と私は答えた。『エンディング』だった。「でもこれ別れの曲だよね?こんな経験したことあるの?」と言う彼に「ないよ、でも好きなんだよね、とっても」と言ったことは今でも鮮明に覚えている。

 彼は、back numberの曲のなかで、『高嶺の花子さん』が1番好きだった。
“会いたいんだ 今すぐその角から 飛び出してきてくれないか 夏の魔物に連れ去られ 僕のもとへ”
お世辞にも上手いとは言えなかったが、高嶺の花子さんのサビを時折口ずさむ彼が愛おしかった。

 私はback number NO MAGIC TOUR 2019の三重県営サンアリーナ公演の2日目に彼を誘った。普段のライブなら、メンバーのいるステージにしか目を向けていないはずの私が、横にいる彼がちゃんと楽しめているだろうかと彼の様子ばかり伺っていた。アリーナ2列目でメンバーは目の前なのに。
 ライブの帰り、渋滞で会場の駐車場からなかなか出られなかった。私はこのような状況の時にイライラする人が苦手だ。しかし彼は「楽しかったね。高嶺の花子さんやってくれたの嬉しかったな〜」とback numberのアルバムをかけながら嬉しそうに言ってくれた。帰りの高速道路は、車の中でツアーのセットリストの曲をお互い熱唱しながら帰った。私は長時間の運転でも嫌な顔一つせずに、楽しい思いをさせてくれる彼のことがまた好きになった。

 私たちは付き合って1ヶ月もすれば半同棲のような状態で、お互いの家を頻繁に行き来し、泊まっていた。「結婚式は海外がいいな〜」「どうせBGMはback numberでしょ」なんて他愛もない話をしながら。

 しかし、ある夏の夜のこと。「いろいろ考えたんだけど、別れてほしい」そう彼からLINEがきた。私は何が起こったのか全く理解ができず、彼にたくさんLINEを送り、たくさん電話をかけた。しかし、彼からの返事はなかった。今日のお昼までいつもと変わらず一緒にいたのになんで?いてもたってもいられなかった私は、台風で雨風の強いなか、気が動転しながらもタクシーで彼の家に向かった。彼のアパートのピンポンを鳴らす。部屋の電気は点いていて、駐車場には彼の車もあるのに彼は出てくれなかった。1時間、雨風が強いなか傘をさすことも忘れ、私は彼のアパートの駐車場で彼が出てきてくれるのを待った。
しかし、彼は出てきてくれなかった。放心状態のなか、タクシーも捕まらず、台風のなか傘もささずに歩いて帰っていた私のもとにようやく彼からLINEがきた。
「こんな時間にピンポン鳴らされるのは怖い、明日の18時に喫茶店で話しましょう」
大好きな人に怖がられてしまったこと、いきなりの他人行儀な敬語、台風の中来たのに家に入れてもらえなかったこと。
もう全てが嫌になり、自宅まで徒歩で片道1時間、雨風の強いなか歩いた。
″終わったのさ ただ 君と僕の話が エンドロールは無い あるのは痛みだけ”
『雨と僕の話』が私の頭の中で永遠に流れていた。

 翌日の夕方、彼と直接会って話をした。5歳も年下の私との結婚は考えられないということ、彼自身が私に対して素を見せることができなかったということ、本当に私のことが好きで大切だったということ。復縁もしない、お互いの家にも行かないという約束も交わした。私は、何も言えなかった。「今までありがとう」そう言って一度も振り向かずに歩くのが精一杯だった。

 いつまでも彼にすがっていたら彼に本当に嫌われるのではないかと思った私は、彼との連絡手段をすぐに断ち切った。これで良いのだと思いながら。

 別れてから1ヶ月半が経ち、季節は秋を迎えていた。相変わらず毎日毎日彼のことを思い出していた。失恋の痛みはそう簡単に癒えるものではないのだと痛感する日々。仕事から帰って自分の部屋のポストを覗くとデパートの紙袋のなかに、化粧品と手紙が入っていた。すぐに彼からだと分かった。
「お誕生日おめでとう。本当はいっしょにお祝いしてあげたいけれど、音信不通なのでプレゼントをポストに投函するね。お仕事は大変だと思うけど頑張ってね。素敵な24歳になりますように。」
別れた彼からの1ヶ月も過ぎた誕生日プレゼントだった。

 私は別れてから一度も彼と連絡を取っていない。別れてもうすぐ1年が経とうする今でも、私は毎日彼のことを思い出してしまう。彼は、今でも私のことを思い出すことはあるのだろうか。
 
 
 
 
 
 
 
 

彼がback numberを聴いた時、少しでもいいから頭の中が私でいっぱいになりますように。

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