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《結成20周年》アンダーグラフというバンドの話。

あの日からずっと続く、「喜怒哀楽」の旅

あなたは、アンダーグラフというバンドを知っていますか?
 

彼らは今年、バンド結成20周年を迎えた。
それを記念し、7月20日にベストアルバムを発売。

「『ツバサ』は学生時代を思い出すんだよなぁ」
「映画イメージソングの『遠き日』が印象的だった」
「アニメEDで聴いた『風を呼べ』でテンションが上がった!」

そんな方々。
上記3曲、ベストアルバムに入ってます。
あの頃あの時間を彩った曲たちは、大人になった今聴くと、また違った景色を見せてくれるかも。
 


 

2004年、故郷からの旅立ちを歌った曲「ツバサ」でメジャーデビューを果たしたアンダーグラフ。
その後、彼らはこんなキャッチフレーズを連れて、バンドを“旅”になぞらえてきた。

「僕らは変わらずに、変わり続ける旅をする。」
 

インディーズ時代から現在までの厳選曲を収録した今回のベストアルバム。あくまで一部だが、ここには彼らの歩んできた20年の“旅路”が詰まっている。

そしてファンである私は、この旅を「共に歩いている」と自負する。
…何故か?

「表面的でない心の奥にある喜怒哀楽を形にした音楽を創っていく。」=アンダーグラフ。
バンド名の由来にもなっている「喜怒哀楽」を、彼らとファンは共有してきたからだ。

2020年。今だからこそ話したい。
20年間歩き続けてきたバンドと、いちファンとしての私の、旅の話をしたい。
 


 

〈1〉僕らは変わらずに、変わり続ける旅をする。
 

私がこの旅に“仲間入り”したのは2007年。結成から7年、メジャーデビューから3年経つ頃だ。だから、彼らの旅路の全てを一緒に見てきたわけじゃない。

でも私はあるとき、彼らの”新たな旅立ち”に立ち会った。
 

2012年3月、私は都内の大学に進路を決めた。
それまでの2年間、受験に向けてアンダーグラフのライブを我慢する日々だったのだ。
「これからは、ライブにたくさん行ける!」
そう夢見る大学生活に向け、春休みはお金を貯めようと短期バイトに時間を費やしていた。
 

そんな3月の終わり、ギター・阿佐さんが脱退。

1月から単独で活動休止した末、正式な脱退を発表。
私が公式HPの発表を読んだのは、バイト先の休憩室だった。
「頭が真っ白になる」とはこのことだ。あれからしばらく、何も考えられなかった。
 

私が思う阿佐さんのギターは、「ひずみながらも繊細」だった。
イントロやソロでは、曲にトゲを刺しつつ、一つ一つの間合いや余韻や強弱を大切にし、このバンドの音を、キャラクターを作りあげていた。ギターに詳しくない私だが、阿佐さんのつむぐ音色が好きだった。
 

これからたくさん会えるはずだったのに、なんで?

長い期間、かなりの苦楽を共にしたメンバーだ。公式の発表では語りきれないほど、ファンが知り得ないほど、バンド内では様々な経緯があって、数々の話し合いがあって、その上での結論だったんだろう。

でも私は、「もう、ついていけないかも」そこまで思ってしまうほどショックだった。
 

すでに予定されていた4月のライブツアーは、ヴォーカルの真戸原さん、ベースの中原さん、ドラムの谷口さんの3人で。そこにサポートメンバーを加えた形で行なわれることに。

会いたい。
でも、阿佐さんのいないアンダーグラフのステージは想像できなかった。変わってしまった彼らを、私は受け入れられるのか?

そして出した答え。
「このライブを観て『無理だ』と思ったら、ファン辞めよう」

今考えると、なんだか生意気で薄情だ。でも、それほどの覚悟だったのだ。
重たい足取りで、ひとり渋谷のライブハウスへ。遅い番号でフロアに入り、後方に遠慮がちに立った。
 
 
 
 

ライブ開演。
たった1曲目で、そんなマイナスな気持ちは崩される。
 

“サヨナラを繰り返して
僕らは今 出会えたから
変わらない日々なんてないが
忘れない心がある
大切な過去と未来
背負ってまた歩き始めよう”

CD音源とは違い、サビ始まりで演奏された「タイムリープ」。
私が別れを告げるかもしれなかったバンドは、再スタートにこの曲を選んだ。

変わる日々、でも忘れない心。
ステージからファンを見つめ、そんな言葉をつむぐ真戸原さんは、笑顔だった。

私には、涙が溢れていた。
たった1曲目。たった1フレーズ目で。

こんな始まり方、反則だ。
でも、また出会ってしまった、このバンドに。
不器用に、鈍く、深く、優しく、心に突き刺さるこのバンドに。

抑えきれなかった「哀」を、
どこかに隠していたやりきれない「怒」を、
そして再び出会えた「喜」を、
この2時間で待っている「楽」を、
全てをこの瞬間に感じていた。

「また歩き始めよう、アンダーグラフと」そう思ってしまった。
 

このライブツアーのタイトルは「live tour 2012 spring~旅路に花咲く春の空~」。
綺麗な花を咲かせた“新たな旅立ち”に、私たちはいた。

彼らの“旅立ち”は、リセットではなく再スタート。
出会いと別れを重ねて、彼らなりの歴史を作りあげて、変わらずに、でも変わりながら、アンダーグラフというバンドで奏で続けているんだ。

そこに、ファンは共にいる。
彼らの楽曲にファンが支えられるという意味はもちろんだ(楽曲についてはのちに語る)。
しかし楽曲の他にも、上記のように「共に生きていきたい」と思える瞬間がたくさんあったのだ。

“ミュージシャンとリスナー”として。
そして、“人と人”として。
幸福をともに喜ぶ。
世間への怒りを分かちあって昇華する。
哀しみに濡れた心に寄り添ってもらう。
音楽の楽しさを、人生の楽しさを共有する。
 

ライブで、ネット上で、ファンクラブのツールで真戸原さんがくれた、忘れられない言葉もたくさんある。
「あんまり、思いつめないでね」
飾らずポソっと出る大阪なまりのその言葉たちに、どれほど救われただろう。

そしてメンバーは自身のことも、ファンに話してくれた。
ストリートミュージシャン時代の苦い経験。
デビューしてからの紆余曲折。
誰かの心ない言葉で傷ついたこと。
メンバーに家族ができたこと。
笑わずにはいられない面白エピソード。……
私はそれを、自分のことのように受け止めてきた。
支えてもらうだけじゃなく、メンバーの「喜怒哀楽」にファンも寄り添う。そんな関係に、少しでもなれているんじゃないかと思っている。

そうやって、私はアンダーグラフと共に歩いてきた。彼らは、そういう気持ちにさせてくれるバンドだ。
 


 

〈2〉不器用な私が、前を向くために。

もちろん以下の枠におさまらないものもあるけれど、アンダーグラフの楽曲は特徴的だ。

歌詞には、代表的な3つのタイプがある。
●自信のない人の背中を押す歌
〈例〉真面目過ぎる君へ、セカンドファンタジー、イキル
●遠くにいる大切な人を想う歌
〈例〉君の声、遠き日、サンザシ
●社会風刺、世間への葛藤を訴える歌
〈例〉 ユビサキから世界を、Sekai-no-Kibou、ビューティフルニッポン

そして、強みとしている曲調も大きく3つ。
●ズシーンと、脳と心に重くのしかかる曲
〈例〉遥かなる道、空へ届け、東京、歳月
●ゆったりとやさしく流れる曲
〈例〉また帰るから、君が君らしくいられるように、君が笑うため生きてる
●ロックにとらわれず、多ジャンルを楽しむ曲
〈例〉去年今年(琴を使った新年の歌)、我忘レ和ルツ(和風ワルツ)、モルモット(ケルトとロックの融合)

その曲の多くには、悩みすぎたり、格好つかなかったりと、生きるのが下手な人たちの姿が描かれている。
それが、いい。

真戸原さんは、たまにこのように話す。
「僕らのファンは、真面目で不器用な人が多いと感じています」

今回リリースするベストアルバムの発表でのコメントでも、こう記している。
“「生き辛さを感じる人達の背中を押していきたい」というコンセプトを貫いてきた”と。
 

私はずっと、そんな歌たちに支えられてきた。

私にとってのアンダーグラフは、「このバンドのおかげで人生が180度変わった!」なんて大袈裟な存在じゃない。
そうじゃないけれど。
私が人生をずっと歩いていく中で、
道端に咲く花のように、
握りしめた地図のように、
大切に持っているお守りのように、
私が前を向くために、ずっとそっと寄り添ってくれるバンドだ、なんて思うのです。
 


 

〈3〉アンダーグラフは、ライブバンドだ。

彼らは、ライブバンドだ。
もう、とにかくライブ。ライブをする。
近年の私の感覚では、東京近郊だけでも、毎月のようにアンダーグラフのライブへ足を運んでいた。
招待されたイベントなども含めると、その出演本数はさらに増えるだろう。

しかし、ただ同じような内容で本数をこなすわけではない。

バンドスタイルとアコースティックスタイル、どちらの演奏もお手の物。日頃から2種類を使い分け、どちらも全力のアンダーグラフでライブに挑む。

その他、ライブコンセプトにもこだわる。
ライブ会場の雰囲気にテーマを寄せたライブ、
各アルバムの曲をまるごと披露するライブ、
4つの季節をテーマにしたセットリストを組むライブ、
ファンからのリクエスト曲を取り入れたライブ、
……。

そうして工夫をこらし、ファンを楽しませる多様なライブを行なってきた。
 

さぁ、ライブの主役となる楽曲は……?

「サンザシ」では、戦時中の愛のかたちをつづった歌詞が、日本らしさを感じるサウンドに乗って会場に響きわたる。イントロの鍵盤を耳で追うだけで涙腺がゆるむ。

“夢なら覚めてくれよ”と叫ぶ「歳月」では、悲しいニュースで溢れる社会への思いを、お得意のどっしりしたサウンドでぶつける。一つ一つ重みのあるドラムとベース、裏で間合いを持って鳴くギター、渋いヴォーカル……。これでアンダーグラフワールドの完成だ。

そのように、音源の何倍ものパワーで魅せる楽曲もあれば、次のような、音源から進化したイメージで“化ける”曲も。

サウンド・歌詞ともに寂しさ漂う「忘却の末、海へ還る。」は、バンドスタイルのライブではクライマックスで披露される。アップテンポのドラムやギターリフでメンバーが煽り、この瞬間を待ちに待ったファンが喜び飛びはね、盛り上がる曲に変身するのだ。

すっかりライブの定番となった「パラドックス」は、完全に“観客参加型”。音源で聴くと曲名通り、歌詞の錯綜に葛藤を覚える。だがライブではもはや、真戸原さんを拝めるだけだ。ステージの逆光を浴びながら手を振りかざす彼。それに応えるように、ファンの手のひらもステージに向けて高く上がり、光るリストバンドが暗闇で映える。この一体感のある空間からは、今にもシュプレヒコールが聴こえてきそうだ。
 

あ、MCについても少しだけ語らせてください。

20年を共に生きてきたバンドの、仲の良さたるや。ステージだけでなく、楽屋やスタジオなどでも話や笑いが絶えないという。
今日は何が飛びだすのか?名物MCの中原さん。そんな彼をにやにや眺め、合いの手を入れる真戸原さん。谷口さんの笑い声がおさまるまでMCや演奏が止まることも……。
メンバーの楽しそうな姿を見るだけでも幸せ。そんなファンが、ここにいるのです。
 


 

また、ライブで会いたいね。
本当に、早く会いたいね。

2020年、結成20周年のアンダーグラフ。
そこに立ちはだかっていた、ライブバンドがライブできない日々。
すでにいくつかのライブが決まっていたが、3月以降は全て延期・中止を余儀なくされた。この状況にはメンバーもファンも、かなりフラストレーションが溜まっている。
 

でも彼らは、ここで立ち止まる気はないみたいだ。

ファン参加型の生配信ライブは大盛況。その他、まだ発表できないけど…といいつつ、新曲や新プロジェクトの存在をたくさん匂わせてくれている。
 

そしてベストアルバムに収録された新曲、「ストライド」。
この社会状況の中で発表されたのは、“ただただ、走る”歌だった。

イントロから、全ての楽器がエンジン全開。
全力疾走のまま導かれたサビは、パッと視界が開けたような、全身が解き放たれたような気持ちにさせてくれる。

“今 加速していくこの感情が
鳴り止まぬ祝福と喝采が
「間違いはない 自分らしくいけ!」って
降り注ぎ 夢誘う
終わりなき未来を駆けてゆけ
限りなき大地で舞い踊れ
やがて辿り着くあの場所まで
時代はきっと変わり続けていく”

なぁんだ、2020年も、前を向くしかないじゃないか。
 

振り返れば、曲がりくねった道。上り坂も下り坂もあった。たくさんの「喜怒哀楽」を噛みしめてきた。それでもここまで、歩みを止めずにやってきた。
どうにも、彼らの旅は止まらない。
真戸原さんが、中原さんが、谷口さんが、私たちファンが。まだまだ笑って歩き続けるんだ。
これからどんな道があるか、楽しみなんだ私は。

バンドが生まれたあの日から、
デビュー曲「ツバサ」で旅立ったあの日から、
3人でまた歩き始めたあの日から、ずっと。
“僕らは変わらずに、変わり続ける旅をする。”
 
 
 
 

※文章中の曲のタイプ分け・代表例曲の選定は、筆者個人の見解によるもの。
※文中のメンバーの言葉はライブ中の発言であるため、一言一句同じではなく、覚えている限りの正確性で引用。

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