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綺麗ごとだけじゃない、だから信じられる

BUMP OF CHICKENの唄は時として現実的で辛辣で鋭く、酷く優しい

孤独に寄り添う、辛さごと抱擁してくれる、涙を愛してくれる、どんな最悪な時でも、必ず側にいてくれる。
BUMPの唄は多くのリスナーにそんな気持ちを与えるものが多い。
現実の生活では誰にも話せなかったような、或いは話しても相手には届かなかったような、深い心の底まで彼らの音は飛び込んでくるし、安心感に近いような例えようのない安堵を与えてくれる。
そして、孤独であればあるほど、辛ければ辛いほど、その存在はレアだし、心の奥底に染み入って浸透していくような感覚がある。
 

その一方で、BUMPの唄は決して『優しくて暖かくて心地よくて綺麗なことば』で癒してくれる『だけ』ではない。
時に辛辣に、酷く的確に鋭く、前述した心の奥底に染み入る優しさとは真逆に、心の奥底に潜んでいた醜いところや痛いところを貫くような、冷や水を浴びせるような言葉だって彼らは真っ直ぐに唄う。

だからこそ、私は彼らを信頼している。
綺麗なだけの、やさしいだけの、正しいだけの、耳心地の良い言葉だらけの歌い手なんて逆に猜疑心に苛まれてしまう。
勿論、BUMPの優しさもきれいなことばも大好きなのだけど、それが届くのは、綺麗な部分だけでなく人には打ち明けられないような醜い部分までも見つけてくれている、彼らの唄の「真実を見つける鋭さ」があるからこそではないだろうか。
 

その歌詞の例をあげていく。
 
 

──ハンマーソングと痛みの塔
「どんどん高く もっと高く 鳥にも届く痛みの塔 そのてっぺんに よじ登って 王様気分の何様」

孤独と痛みを抱えながらも、自分からは多くの人ができるような打ち明け方もできず、どれだけ辛いのかを間接的にいやらしくアピールして。
気付かれなければもっと過剰にアピールして、誰かに気付いて貰うのを待っているひと。
心の内側を見せるのが上手な人から見れば酷く滑稽かもしれないし、野次馬から見れば指さしてあざ笑うかもしれないし、多くの人は無視するかもしれない。
だけれども、この唄は嘲笑も無視もせず

「皆アンタと話したいんだ 同じ高さまで降りてきて」
(ハンマーソングと痛みの塔)

と、声を届けてくれる。
たとえ多くの人に見放されたとしても、彼らの唄は声を届けようとしてくれるのだ。
これは、この唄が、人の一番痛くてカッコ悪いところを抉るような描写をしたからに他ならない。
辛辣な言葉で的確に描写したからこそ、その渦中にいる人にはちゃんと届いてしまったし、そしてその唄を受け取った人に対して最後に愛情を届けてくれる。
“気付かれてしまった”という恥ずかしさを覚えさせる歌詞であるのに、そんな恥ずかしい自分と”話したいんだ”と言ってくれる結末は、どれだけ多くの人の救いになったことだろう。
 
 
 
 

──レム
「狂ったふりが板について 拍手モンです 自己防衛 それ流行ってるわけ? 孤独主義 甘ったれの間で大ブレイク」
「意味は無いとかごまかすなよ 汗まみれでよくもまぁ 爪先まで理論武装 何と張り合ってるんだか 誰と戦ってるんだか」

人の知識を借りて、言い訳と言い負かすことに必死で、尚且つ知識豊富ぶって見えない誰かと必死に戦うひと。
クールぶって見せているが、その正体は汗まみれで必死でカッコつけで。
弱い自分を守る為に攻撃すべき対象を見つけては諍いを起こしたり、或いは陰口を言う様子が目に浮かぶ。
私だってそんな人種は最も苦手なタイプだが、じゃあ自分が100%レムの彼とは違うかというと、そうとも言い切れない。
言い当てられた、と感じる人もいるかもしれないし、私みたいに心に引っかかる人もいるかもしれない。
とにもかくにもレムという唄はあまりにも辛辣な言葉で、現実を冷酷に突き付けてくる。
なのに、この唄はラストでこう結ばれる。
「走り疲れたアンタと 改めて話がしたい 心から話してみたい」
(レム)
そんな人にだって、BUMPは話したい、心の奥底を知りたい、と語ってくれるのだ。
この唄を聴いた時に、まるで鏡を見ているようだと感じてしまった人は、きっと一瞬でも自己嫌悪に陥るかもしれないが、そんな人にこそ手を差し伸べる。
そして”心から話がしたい”という言葉を渡された人は、自分自身で自分の本当の心の中を覗くきっかけをこの唄に与えられるのだろう。
 
 
 
 

──ほんとのほんと
「尖った言葉がいくつか 壁にぶつかって 転がって冷えた ざわついたまま 静かになって 時間だけがすり抜けた」
「誰かが誰か傷つけて だからどちらも 傷ついて お揃いの気持ちで 離れながら お揃いの気持ちで側にいた」

ほんとのほんとは、大切な誰かとすれ違いが起きた時の痛々しく遣る瀬無い諦めと、その時の空気感を客観的に見つめながら擬人法を用いて描写していく唄だ。
多くの人が経験したことがあるであろう、言葉や心のぶつけ合いが起こる時の心境を的確になぞっていく歌詞は、あまりにも見事だし、あの時の痛々しい気持ちを反芻すら出来てしまう。
やわらかいメロディかつ淡々とした歌い始めから、サビでは悲鳴にも似た唄い方になっていく様は、より一層心を抉る。

「今が終われば今までに戻って それでもいいよ 今の続きなら 守っていく ほんとのほんとが 一度でもちゃんと 抱き合えた」
(ほんとのほんと)
そしてやはりこの唄も、自分自身で感じてしまった痛々しさを的確に再現させられたところで、こうやって着地点を置いてくれるのだ。
いつの間にか唄が他人事ではなく自分ごととなり、聴き手の心の奥底までじんじんと響かせて共感させた後で、喧嘩した後の続きだってあることを教えてくれる。
やはり、BUMPの歌詞の描写がなまぬるくやさしい言葉だけを使っているわけではないからこそ、痛みを伴い続ける現実に寄り添っているからこそ、こうして伝わるのだ。
 
 
 
 

──太陽
「このくらい寒い方がいい 本当の震えに気付かないで済む 不愉快も不自由も無い その逆も初めから無い」
「君がライトで照らしてくれた 暖かくて 寒気がした 光の向こう側の君の姿が 僕には見えないと知った」

太陽では、完全に心を閉ざして内に籠ってしまった誰かの、もはや絶望感すら放棄したくらいには虚無な状態を描写していく。
孤独感や寂しさを歌った唄は多くあるが、太陽ほど”何もかもを自分から閉ざして、自分の感情すらも棄てた状態”を示した唄はあっただろうか。
スローなテンポと美しいメロディの中に描かれる漆黒の世界は、もはや辛さすら感じない程の途方もない虚無感を感じるのだが、そこに”君”という光が差し込んでくることによって、闇の存在にはっきりと輪郭ができる。
しかしながら、勿論そんな”何もかもから心を閉ざした状態”であったがゆえに光となった君を拒否してしまう心情は察するに余りあるし、当たり前だがやがて君は消えてしまう。
再びすべてを失ったところで、本当は君が見たかったんだと気付く。
そして、心を閉ざしてしまった人の共感を与えると同時に、最後にこのような気付きを齎してくれるのだ。
「ドアノブが壊れかけていて 取れたら最後 もう出られはしない 出れたら最後 もう戻れはしない」
(太陽)
閉じ籠ったままもう闇の中から出ないのか、二度と戻れないけれど閉ざされた扉を開けるのか、決めるのは自分自身だということを教えてくれるのだ。

どんなに良い人たちが、”外に出てきなよ、こっちに来なよ”と誘ってくれても頑なに拒んでいれば、そのうち相手は諦めて自分の前からは消えてしまう。
失った時にやっと気づくのは、誰しも経験があることだろうし、気付いた時にこの後どうしたらよいのかといえば、もう自分の手と足で出ていくか否かを決めるしかない。
太陽は、暗闇の中にいるひとへの、メッセージに思えてならないのだ。
 
 
 
 
 
 

その他にも、彼らはこんな歌詞を届けている。
 

──才悩人応援歌
「ずっと前から解ってた 自分のための世界じゃない 問題無いでしょう 一人くらい 寝てたって」
 

──butterfly
「全部嫌いなままで 愛されたがった 量産型」
 

──キャラバン
「自分嫌いな自分が好き」
「感動にシビアな訳じゃない 感情に脂肪が付いただけ 食べてきたご馳走は 全て用意された物」
 

──good friends
「だけど自分が無いから 誰かが気になっちゃって仕方ない」
 

──ギルド
「誰か構ってくれないか 喋らないで 思っているだけ」
 

──Title of mine
「人に触れていたいと 思う事を恥じて 嗚咽さえも 噛み殺して よくもまぁ それを誇りと呼んだモンだ」
 

どれもこれもかなり辛辣だ。

以上のことからわかるように、BUMPの唄は決してやさしくきれいで美しく正しいだけじゃない。
孤独感、寂寥感、涙、哀しさ、辛さ。そういった類の感情を包み込んでくれるのはBUMPの十八番ともいえる部分だが、それだけでもない。

人間の持つカッコ悪い部分、人には見せられない恥ずかしく醜い部分、幼稚だったり攻撃的だった部分、過去の暗い記憶、そういったものを残酷なほど鋭く的確に指摘する。
それは綺麗ごとや孤独を認めることだけでは決して捉えられなかった、聴き手の美しくも優しくも素晴らしくもない本質を見つけてくれる手段でもあり、同時にそのある種の醜い本質すら認めて丸ごと受け入れてくれる「本当の優しさ」でもある、と私は感じている。

あまりカッコよくも正しくも真っ直ぐにも生きられない私たちへ、BUMPの唄が届く理由はこういった側面を持ち合わせている非常に稀有なバンドだからではないかな、と思った次第だ。

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