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記憶と音楽の話

なんでもない平日の夕方に銀杏BOYZが考えさせてくれたこと

2020年、夏が始まった。大学4年生の僕にとっては学生最後の夏だ。しかし、学生最後の夏は新型コロナウイルスの影響によりどんよりと暗く、今日も部屋でひとりぼっち銀杏BOYZを聴いている。イヤホンをつけ、部屋着にしている京都大作戦のTシャツを着たままコンビニまでビールを買いに行くと、高校生の男女集団が楽しそうにアイスを食べながら談笑している。キラキラした制服姿を見てなぜか心が痛くなった。「あ、これが青春コンプレックスってやつなのか」イヤホンで峯田和伸が絶叫する中、僕は気が付いた。
 

どうして僕は銀杏BOYZを聴きながら見た高校生たちによって心を痛めてしまったのだろうか。僕の高校生活はそれなりに充実していたので、自分の高校生活を思い出し、それと銀杏BOYZを照らし合わせて悔しくなったという訳ではない。おそらく〝キラキラ輝く高校生の姿〟と、〝来年から社会人になることによって学生生活という青春が終わってしまう自分〟を銀杏BOYZが歌う情けない青春が繋ぎ合わせ、そのギャップに心を痛めたのではないだろうか。その痛みの中には、今まで自分が過ごしたもう帰ってこない青春を懐かしむ気持ちも存在している。一方で、気が狂いそうなどうしようもない夜に銀杏BOYZを聴くような輝かしくない大学生活では過ごすことができなかった悔しい青春の時間を考えさせられている。もしも僕が銀杏BOYZのことを好きじゃなかったら輝かしい大学生活を送れたのか、逆に順風満帆のキャンパスライフを送っていたら銀杏BOYZなんて好きじゃなかったのかなんて。だけど銀杏BOYZが好きじゃなかったらこんなこと考えすらできなかったので好きでよかったのかな。「そんなことを考えることなんて無駄だな」なんて思いながらビールで流し込んだ。
 

音楽を聴いて懐かしいと感じることはどんな人にも訪れる瞬間だと思う。「この曲中学生の時流行ったよな〜」「カラオケでよく歌ってた!」なんて思った瞬間、実は音楽自体を懐かしむことよりも聴いていた時間や、カラオケに行った記憶の方が頭に浮かんでいるのではないかと思う。また、昔住んでいた街の景色や香りなど聴覚以外から情報を取り入れながら音楽を聴くとその頃の気持ちを思い出すことができる。逆に音楽を聴いてその頃の風景や香りを思い出すこともある。また、今日の僕のように過ごせなかった時間を過ごしたり、音楽に触れなければ考えることができないこともある。音楽と記憶の間には根強い関係が存在している。
 

これから長い人生を送ることができたとして、たくさんの出来事が起こる分、懐かしいと思う時間が増えて行くだろう。そして、悔しいことに忘れてしまうことも増えてしまうに違いない。ただ、そんな時に音楽を聴いて少しでも自分の中から消えてしまっていたことが再び戻ってくることがあれば、どれだけ素敵なことなのでしょう。と今は思う。
ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2004で峯田和伸は「あんたが幸せを掴んだ時、やっとあなたが幸せを掴んだ時、そん時、こんな歌なんて忘れてくれ」と言った。
何十年か経って、もしも僕が幸せになれた時には銀杏BOYZを聴かなくなるのかな。そして、久しぶりに銀杏BOYZを聴いた時に今の時間を思い出せるのだろうか。はたまた、「これ若い頃好きだったな」なんて鼻で笑いながら停止ボタンを押すのだろうか。

“未来はないけど 泣いちゃだめさ”
銀杏BOYZ-NO FUTURE NO CRY

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