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漢・細美武士

彼はなぜ"憧れ"で居続けるのか

私が6年間追い続けている男性の話をしよう。
細美武士、47歳。ELLEGARDENやMONOEYES、the HIATUSのボーカルを務める。長いこと追いかけてきたが、私は彼について1文字も綴ったことがなかった。正確に言えば、それが出来なかった。それほど私は、彼に“憧れ”ていた。
 

細美武士は、なんと言っても「男らしい」という表現が似合う。
純粋なロックサウンド、鍛え抜かれた身体、一貫した精神性。このご時世、古臭いと言われてしまいそうだが、私は彼にバンドマンとしてのロマンを感じてならない。そして、このように感じているのが私だけではないという事が彼の人気から見て取れるのだ。つまり、細美武士はELLEGARDENを結成して以来22年間、私たちの“憧れ”で居続けた男なのである。
 

私が細美武士に対し、「男らしい」または「魅力的」だと感じる要素は様々だ。前述した点も含め、ライブでは特に彼のスター性が輝いて見える。そして、その中でも私が特筆したいのは「ライブMC」である。彼をライブで観たことがある人ならば誰でも共感できると思うが、彼のMCは良い意味で「力が抜けている」のだ。このMCがたまらない。私は今まで様々なアーティストのライブMCを見てきたが、細美武士のMCはやはり常軌を逸している、と自信を持って言える。このように私が恍惚としてしまう理由として一番に挙げられるのは、MCに「熱いメッセージ」がない点だ。もちろんこれは良い意味で言っている。バンドマンらしくオーディエンスを煽りながら熱く語りかける-なんて事は滅多になく、彼は伝えたいことを雑談と交えながら実にナチュラルに伝えてくれるのだ。細美武士のペースに飲まれて聞き惚れているうちに、いつの間にか涙が頬を伝っていることに気付く。その言葉が私たちの心を掴んで離さないのだ。
一体、私はなぜMCの魔法にかかってしまうのだろうか。細美武士の話すことは一見ふざけているように見える。例を挙げるならば、彼のMCの中でお決まりになっている「うっせぇブス」だ。これはライブ中、「かっこいい!」などと声をかける女性ファンに対して細美がお決まりのように言うセリフである。女性ファンの中にはこれを言ってもらいたくてわざと話しかけている人も多いだろう。私だって、正直、羨ましい。…それは置いておくとして、細美のMCはこの他にもくだけた部分がとても多い。下ネタは定番だし、どうでも良いような雑談も頻繁にある。しかしそれが漏れなく面白いため、ファンは聞き入ってしまうのである。そして、そのくだらない話を上手く「伝えたいこと」に繋げるのが細美武士という男である。3年前のロッキンで私がとても印象的だったMCでは、彼はお決まりの「うっせぇブス」から、こんな発言をした。

「まあお前らがブスだろうとそうじゃなかろうとここでは関係ねぇからな、一旦辛いこととか嫌なこと全部忘れて思いっきりブスな顔して泣けばいいし歌えばいい。俺らはライブをそういう場所にして欲しいからさ」

これが細美武士のトドメの一撃である。なんてことない様子で、こんなにも多くの人を救える言葉をさらっと言ってしまう彼には脱帽だ。魅せられた。
 

やはり細美武士の「男らしさ」は、見た目や音楽からだけでなく多様な側面から溢れ出ている。くだらない話の中、さらりと救いの言葉を紛れ込ませるスマートさには誰もが憧れてしまうだろう。22年間、多くの人の“憧れ”で居続けているだけある。

ここで一度考え直してみるとする。やはり人気の秘訣とは、彼の「男らしさ」だけが故であろうか。-いや、そうとも思えない。ELLEGARDENが2005年にリリースしたアルバム「RIOT ON THE GRILL」に「Marry Me」という曲が収録されている。この曲の歌詞からは、細美武士の少し意外な面が垣間見える。
 

Won’t you marry me if I could be a rich boy
〈僕と結婚して 金持ちの子供になれたら〉
Won’t you marry me if I could be very handsome
〈僕と結婚して すげーハンサムになれたら〉
Won’t you marry me if I could be a tall guy
〈僕と結婚して 背が高い男になれたら〉
Don’t you marry him if I could be in the next life
〈そいつとは結婚しないでよ 今度の人生でそうなれたら〉
【Merry Me/ELLEGARDEN】
 

前述したような細美の「男らしい」印象とは打って変わって、弱気な面が顕著に表れている。この曲はELLEGARDENの曲の中でもかなり人気があり、細美武士に“憧れ”の念を抱く者なら誰でも知っている曲だと言っても過言ではないだろう。このように、特にELLEGARDENの曲には細美が弱気な面を出している歌詞が見受けられることがある。これを考慮すると、細美武士の人気は「男らしさ」だけが原因ではなさそうだ。確かに、彼の歌声はデビュー期から現在までを通して見ても、力強く男臭いというよりは少年のように透き通った印象を受ける。

それでは、私たちは細美武士の何に憧れているのだろうか。
私は、6年間彼を見続けてきて、一つの答えに辿り着いた。それは「正しさ」である。
「正しさ」とは何か。それは彼が貫いている信条、またその信条を貫いている様子を指す。彼はいつでも自分に誠実で、決してブレない。「俺はこう思ってるんだ」と、反対意見があるも承知で多くの人を前に堂々と意見を述べるのだ。その姿勢こそ、私たちが細美武士に惹かれている最大の理由なのではないか。していいこととダメなこと、その線引きが自分の中ではっきりとしていて決してブレない。私たちがしたくてもなかなか出来ない「正しく生きること」を実現している彼の姿に、ある種の羨ましさもあり恍惚としていたのかもしれない。

ここ最近の「自粛期間」においても、細美の「正しさ」に魅せられたことがある。それはTwitter上でミュージシャンがバトンを回していた「うたつなぎ」である。
もともとTwitterなどのSNSに干渉することが無く、インターネット上に現れるときはいつも「ブログ」という形をとっていた細美だが、今回は特例としてHAWAIIAN6の安野さんのアカウントから動画を投稿した。それは、MONOEYESの名曲「明日公園で」の弾き語りだった。コロナウイルスの流行により家にいることを余儀なくされ、いつライブにいけるかも分からないまま過ごしていた日々に、思ってもいなかったプレゼントが届いたのだ。この動画に救われた人はどれだけいるのだろうか。
細美はSNSを利用しないというスタンスを貫いていたが、なぜ今回動画をアップしたのだろうか。ここには彼の信条が垣間見える。新型コロナウイルスの流行という、誰にとっても特例の事態において、「正しいこと」とは何だろうか。細美は恐らく、「SNSに現れない」という自分のスタンスを貫くことよりも「ファンを勇気づける」ことの方が大切だと考えたのだろう。これは、単に信条を貫くことだけが正義だと考えていない証拠であり、私たちは彼の「正しさ」をまたもや実感することになった。やはり細美武士はどこまでも“憧れ”の存在なのである。決して裏切らない。
 

6年間細美武士に憧れ続けてきた私は、ようやく彼を文字で表すことが出来た。ここに書いてあることが、私の思う「細美武士」のすべてである。

私の6年間には、いかなる時も傍には彼の音楽があった。憧れ続けた。きっとこれからもそういう風に私は生きていく気がする。
細美武士の背中に「正しさ」を見続けていけたら、それだけで生きていく理由の一つになりそうだ。

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