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最後のジェット風船

フジファブリックの描く青春

僕がフジファブリックに出会ったのは去年、大学1年生のこれから夏が始まるなんとも言えない高揚と待ち遠しさが匂い始めた頃だった。

大学に入り軽音サークルに入った僕は先輩のコピーバンドで初めてフジファブリックに触れた。そして忘れることもできないその年のロッキンジャパン最終日大トリのパークステージ、最後の最後で3人が演奏した若者のすべて、それを聞いたとき満員の客席が広がっているはずなのに僕の目には高校最後の学校祭のフィナーレの映像が映っていた。
 

残暑の厳しい9月初めの夕暮れ時、少しオレンジがかった真っ青な空には840個ものジェット風船が飛んでいた。自分たちにとって最後の景色。長いようで短すぎた3年間。そして受験へのなんとも形容しがたい不安感。それらすべてをぐちゃぐちゃにして飲み込んだような不思議な気持ちが胃のあたりに渦巻いていた。気をぬけば涙がこぼれそうで友達に見られれば恥ずかしいので必死に笑っていたと思う。しかし、その周りの友達と意味の無いことを言って笑い合える時間はもう残り少なかった。その事実に気づいてるようで気づいてなかったのだと今になれば思う。

気がつけば曲は終わり歌詞通り最後の花火が上がっていた。なんとも言えない気持ちになりながら一人暮らしの家に着き帰り道で作ったその日のセトリのプレイリストを聞き返していた。

「いつだって こんがらがってる 今だって こんがらがってる」

ステージを見ている時はただ楽しくて全力で走っていたのに改めて聞くとメッセージにはっとさせられた。

いつだって付きまとう悩みと興奮、けどその反対に冷静な

「36度5分の体温」

ふとあの体の奥からわけも分からず噴き出していたあのエネルギーはどこに消えてしまったのか、そんな思いが込み上げてきた。大学に入る前のこれから何にでもなれるんだという気持ちと自分の目標に向かっていたエネルギーはいつのまにか見えなくなっていた。自分の目標への想いは濁っている訳では無い。やらなければならない事は見えてる。でもどこか高校生のときの毎日部活にあけくれていた日々や受験勉強をしていた時のようなエネルギーは見当たらなくなっていた。そんなとき聞こえてきた

「変わっていくことは誰の仕業でもないから」

この言葉に救われた。変わってしまったものはあるけどそれは仕方がない。変わるものがあれば変わらないものもある。その変わらないものを大事にしながらも変われることが大事なんだと思わされた。

そしてセトリの最後の「若者のすべて」。この曲が流れた瞬間それまでのたくさんの物が溢れかえってきた。何度も泣いてやめようとも思った高校の部活や友達と一緒にバカ騒ぎして遊んだ日々、彼女と一緒に行った高2の夏の花火大会、そしてそれまで住んでいた小さな町から飛び出し、少しだけの

「世界の約束を知って」

それまで自分は何にでもなれると思ってたけど、その想いは若いからこそ持っていたのだと、まだ何者でもない自分の可能性を信じて止まなかったから出来たことだと、分からされた。そこから

「また戻って」

それなりの存在だと分かった自分がまた次の夢を描く、今の自分にできる最高到達地点を目指して。

“若者のすべて”

この曲のタイトルが別のものであればここまで心動かさられることは無かったかもしれない。フジファブリックに出会っていなかったかもしれない。この曲のタイトルと歌詞にはTEENAGERを通しても描かれているような志村さんの若者に対する興味や感性が映し出されているように感じる。この曲を聞けば青春と呼ばれる底抜けに楽しくて、瞬きするまに終わってしまって、切なくて、そして思い出して少し恥ずかしくなってしまうような思い出が溢れかえってくる。楽しいことばかりではないけど思い返せば死ぬまで忘れられない大切なものだ。きっといつまでも離すことはない。

「最後の花火に今年もなったな」

今年は新型ウイルスが猛威をふるい、予定していたフェスやライブは中止が相次いだ。最後の花火をあの丘で見ることが出来なかった。夏に地元に帰れるかも分からない。それでも、地元に帰ることができた時は必ずあのメンバーで集まり、2020年最初で最後の花火をしたいと思う。20歳、もう少しで若者の時間も終わる。けど、いつもの顔を見ればいつだってTEENAGERになれるのだ。

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