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ロックバンドは今日を生きてる

UNISON SQUARE GARDENは小さな箱庭で歌い続ける

7月15日、「LIVE(in the)HOUSE」と銘打ち、UNISON SQUARE GARDENのライブが開催された。

昨今の情勢で人を集めることが難しいなか、生配信というかたちで。

会場は僕らの家。

ロックバンドは街にやって来ないけれど、僕らに音楽を届けてくれる。

何気ない日常風景が特別な空間に変わる瞬間だった。

彼らのライブを見ることができるのは約7ヶ月ぶり…期待感は否応なしに高まっていく。

開場後に映し出された時刻が進んでいくたびに、もうすぐライブが始まる現実にギュッと心が掴まれるような不思議な感覚に包まれた。
 

そうして開演時刻を迎え、現れたのはいつものステージ。

少しだけ異なるのは、ステージ裏で待機するメンバーが見れること。

3人が並んでステージ入りする姿に思わず感慨深くなった。

SEの「絵の具」も記念ライブでしか流れない特別なバージョン。

ライブとしては決して特別なものではないが、バンドの出来事としては特別な時間になることを思い知らされた。

「LIVE(in the)HOUSE」のロゴの後、ステージに立つ3人が続けて映し出される。

ライブで何度も見た光景だ。

そして…
 
 

“今日までの感情が明日を作るから イライラも後悔もまるごとミックスジュース”

“12時過ぎても解けない そんな魔法があっても欲しくない 早く帰って眠らなくちゃ”

鈴木貴雄(Dr)のドラム音からの始まったのは原曲とは異なる特別な歌い出し。

1曲目は「mix juiceのいうとおり」…嫌なことが目に入りがちな現在の世の中で、この曲を選んだことに何か意味はあるのだろうか。

少なくとも僕は、最初の歌い出しにちょっとだけ救われてしまった。自然と気持ちが前を向けたんだ

どんな世界になっても、ロックバンドは変わらず音を鳴らし続ける…その事実の安心感たるや。

斎藤宏介(Vo &Gt)の「おまたせ!」の一言で、何気ない特別な”いつも通り”が始まった。
 

「オトノバ中間試験」の楽しさや「桜のあと(all quartets lead to the?)」の多幸感はいつ聴いても変わることはないし、MCを「MCなし!」で終えるのも何ともユニゾンらしい。

特にこのご時世だからこそ響く「きみのもとへ」は画面越しだからこそ強く印象に残った。

そこから一転して「君の瞳に恋してない」は、ユニゾンの捻くれた愛情を感じることができて何だか嬉しくなってしまった。

どちらも共通するのは”君(きみ)”というフレーズ。

接し方は違っても、どちらも彼らなりの誠実さに溢れた曲たち…その対比が聴いていて心地良かった。
 

新しい時代の幕開けの様なセッションで始まった「オリオンをなぞる」から「I wanna belive、夜を行く」への繋ぎは芸術の域だった。

この2曲の関係性がわかる人はきっと多くはないだろう。

けれど、わかる人にとっては最高のご褒美みたいな組み合わせに思わず僕の顔はほころんだ。

何より曲の性質ゆえに、2019年以降に演奏される保証がなかった「I wanna belive、夜を行く」を聴けたことはファンにとっては嬉しい誤算だったに違いない。
 
 

配信という形態上、このライブは3人の演奏以外の音が極力聴こえないかたちになっていた。

そのため、普段は気づかない視点でライブを見ることができた。

それが顕著だったのは「スカースデイル」。

斎藤のソロから始まるアレンジもステージ全体を映しながら見渡すと、暗いステージのなかで、1人照らされる姿に儚い美しさを感じた。

“1.2.3僕の声を 初めて君がキャッチした”

田淵智也(Ba)と鈴木のリズム隊2人のコーラスも普段のライブでは、歓声にかき消されてしまうことが多い。

それが今回まったくないので、鮮明に2人の歌声を聴くことができた。

田淵のコーラスのうまさや鈴木の意外な歌声など…このライブで改めて発見できることがあった。

原曲からさらにかっこよさを増しているコーラスに、この10年間の積み重ねを感じた。
 
 

また今回ユニゾンとしては初の試みとなるリクエスト投票を行い、投票結果をもとにセットリストを作成した。

「mix juiceのいうとおり」も「I wanna belive、夜を行く」も「スカースデイル」も、ファンの思いが反映した結果セットリスト入りしたと言っても過言ではない。

ライブも終盤に差し掛かると、残りは上位曲を中心に演奏される可能性が高くなる。

自分が聴きたい曲は登場していなかったが、特別に順位も高くなかったので、演奏されることはないと諦めていた。

そんななかで鈴木がそれまでの流れを断ち切るように”1.2.3.4!!!”と雄叫びのような声をあげる。

「場違いハミングバード」、長年に渡ってユニゾンのライブで愛されている曲だ。

とはいえ、ここ1年はライブで登場することもなく、久々の披露となった。

僕自身も好きになった当時、欠かさずにライブで聞いていた曲なので、ユニゾンといえばこの曲…という思いも強かった。

それが配信という新たな環境でのライブで登場する…決して高い順位じゃなかったからこそ、終盤での披露にメンバーからの強い信頼を感じた。

田淵のステージを縦横無尽に駆け抜ける様や斎藤の最高にカッコ良いギターソロや舌打ちはいつ見ても多幸感で満たされてしまう。

自宅ということも一瞬忘れて、思わず叫んでしまうぐらいに幸せな瞬間であった。

余計な要因に左右されず、曲だけに集中して楽しめるのは、ユニゾンならではの強みだと思う。
 

楽しい時間はあっという間に終わってしまう。

このライブを締めたのは「箱庭ロック・ショー」からの「フルカラープログラム」というどこか懐かしさを感じる組み合わせだった。

「箱庭ロック・ショー」はミニアルバム1作目「新世界ノート」、「フルカラープログラム」は2作目「流星前夜」にそれぞれ収録されている。

どちらもその後の作品に改めて収録されているが、初期からユニゾンを支え続けた名曲である。

最近は滅多に登場することがなくなったからこそ、それが2020年のライブでのラストで続けざまに披露されるという事実は、控えめに言っても泣けてしまう。

「箱庭ロック・ショー」の1台のカメラで撮り切る手法も「フルカラープログラム」の斎藤のアカペラでの演出も、全てがそこに集約していくような。

きっと彼らは”小さな箱庭”で”完全無欠のロックンロール”を鳴らし続けるんだろう。

そう思わせるには充分すぎる出来事だった。
 
 

待ち望んだライブは終了した。

ライブを生きがいとする彼らがひたすらに大きな音を鳴らしていく。

その姿を見るだけで死にかけていた心が蘇るようだった。

欲を言えばまた生で音楽を聞きたい気持ちはある。

けれど、それが難しい世の中でも、こうやって楽しい時間は存在している。

いつどんなときでも今出せる最高潮を届けてくれるから。

ロックバンドは今日を生きてる。

どんな状況でも変わらずに。

その事実だけで僕が生きていく理由にもなり得るんだ。

次はどんなライブになるんだろう…今からそんなワクワクが抑えられそうにない。
 

そして、9月30日に8thアルバム「Patrick Vegee」のリリースも決まった。

止まっていた時間が少しずつ動き出し、新たな楽しみがこれからも生まれていきそうだ。

ライブの最後には、おまけとして「Patrick Vegee」の楽曲が披露された。

ステージに映るのは「弥生町ロンリープラネット」という文字。後の映像で曲名であることが明かされた。

孤独から脱却し、何気ない繋がりが日常を彩っていく様をどこか聴き馴染みのある優しげなメロディで包み込んでいた。

自分の世界から抜け出した先にあるのは”冬の終わり”

凍えるような日常はもうすぐ生まれ変わる。

僕らの側には今日もロックバンドが立っているから。

どんなに歩みは遅くても、それを止めることはない。

“そして、僕らの春が来る”

そこにはいつも僕を励まし救ってくれた存在が。

遅咲きの桜が舞って、新たな季節が訪れた。

“新しいページに絵の具を落とす”瞬間だ。

進んだ未来は間違っていないはず…そう言ってもらえた気がした。

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