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「コロナ禍での『ハイテンションなコミュニケーション』」

2020年7月7日HEREワンマンライブ

 「HEREワンマンライブやります」
 新型コロナウイルス感染拡大を受け、多くのバンドが予定していたライブを延期や中止にしているなか、2020年7月7日、日本で最もハイテンションなロックバンドHEREがTSUTAYA O-Crestにてワンマンライブを開催した。もともとこのライブは、4月に行われる予定だった「HEREのハイテンションなコミュニケーションツアー」のファイナル公演だったが、コロナウイルス感染拡大を受けて延期となっていた。未だに多くのバンドが観客を入れてのライブを開催できずにいるなか、HEREは他のバンドに先駆けて、観客を入れてのワンマンライブを敢行したのだ。しかし、これまで通りのライブでは、3密が避けられない。そのために、今回のライブでは、大きく分けて6つの感染防止対策が施された。
 1つ目は、入場時に検温を行い、発熱者は入場不可とする入場制限である。開演前に非接触型の体温計を使用し、全ての観客を検温した。熱がないとされた人には、「検温済み」の紙が渡され、入場時にチケットと一緒に提出することとされた。
 2つ目は、ソーシャルディスタンスの確保である。もともと1公演であったライブを2部制にし、チケットの整理番号を奇数と偶数に分けることで、1回の公演に入る観客の人数を絞った。さらに当日は、待機列やフロアに目印が貼られ、観客同士が密になることを防止した。
 3つ目が衛生対策である。観客はマスクの着用が義務付けられ、入場時のチケットはスタッフではなく、観客自らがもぎる。さらに、手指のアルコール消毒や、物販では観客が使い捨てのビニール手袋を着用するなど、徹底的に衛生対策が実施された。
 4つ目はライブ中の換気である。MC中に窓を開け、ホール内の換気を行う。人が密集し、フロア内の空気が薄くなる感じすらライブの醍醐味であるが、密閉空間を避けるためにも、換気は欠かせないのだろう。
 5つ目が観客のリスト化である。チケットの半券に名前と連絡先を記入し、来場者リストを作成することで、万が一、コロナ感染者が出てしまった場合に備えるものであった。
 6つ目がライブ中の観客の発声禁止である。HEREのライブは、ステージとフロアが一体となるコール&レスポンスが魅力の1つである。そのコール&レスポンスが禁止となると、ライブの盛り上がりに欠けるのではないかと心配したが、なんとHEREは観客による打楽器の持ち込みを許可したのだ。そう、声ではなく、各自の打楽器によるコール&レスポンスを実施したのである。さらにはサイリウムやうちわなどの持ち込みも可とするなど、どんな状況でも真剣に楽しむ、まさにHEREらしい試みである。
 このような感染防止対策が行われるなか始まったHEREワンマンライブ。このライブはネットで有料配信され、ライブハウスに集まったファンだけではなく、全国から声援が送られた。メンバーがステージにあがると、ボーカル尾形が「みんなおかえり!」とフロアを見渡す。フロアからは、観客が持ち込んだ様々な打楽器の音が響く。ライブが始まると、おなじみの曲から、初披露された新曲まで、爆音がライブハウスを包み込む。ステージにはラインが引いてあり、これ以上前には出てはいけないという制限があるなか、ギターの武田・三橋の2人も、魅せるギターでフロアを湧かせる。コール&レスポンスで盛り上がる『ギラギラBODY&SOUL』では、観客が大きく腕を上げ、持ち込んだタンバリンや、メンバーカラーに染まったサイリウムなど、声に代わり思い思いに表現する。メンバーに負けないくらいファンが個性的なのもHEREならではである。MC中には窓を開け、換気タイムを実施。窓の外には渋谷の街が広がり、新鮮な空気がフロアに入ってくる。さらにステージ上のメンバー自らが消毒液を使用するなど、感染防止対策でさえ1つの演出とする様は、さすがであった。
 本来ならばこのツアーで販売予定だったシングルCDから『ハイテンションなコミュニケーション』そして『いらっしゃい』も披露された。これもまたコール&レスポンスが魅力な楽曲であるが、観客が声を出せない分、メンバーのハイテンションな声が響く。さらに未発表の新曲も披露。初披露にも関わらず、そのメタル調なギターに、フロアは盛り上がりを見せた。
 ライブは終盤にさしかかる。「歌に 歌に 歌に祈りを」という歌詞から始まる『HELLO』では、先の見えないこの状況のなか、その力強いメッセージが心に刺さる。『死ぬくらい大好き愛してるバカみたい』では、観客が持ち込んだ造花のバラが咲き誇り、ツインギターの演奏にも熱が入る。最後の曲、『己STAND UP』では「つまらないウイルスやこの雰囲気に負けるなよ」という尾形の言葉から、熱い気持ちが伝わってくる。その気持ちに応えるようにフロアも思い思いの形で盛り上がり、「HEREのハイテンションなコミュニケーションツアー」東京公演は幕を閉じた。
 観客同士が密着し、演者がフロアをあおり、それに大きな声で応えるといった、これまでのライブを開催するのは、まだ難しいだろう。ライブ中に尾形が言っていたように、感染防止対策をしながらライブは「ロックの新しい生活様式」となっていくのかもしれない。人との直接的なコミュニケーションが制限されているなか、HEREの『ハイテンションなコミュニケーション』はまだまだ続く。

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