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2017年9月19日

安田 理恵 (27歳)
68
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待ち焦がれた、『新世代』。

Tempalay(テンパレイ)が提示する新たなJ-POP

9月に入ってすぐ、それはあまりに突然の遭遇だった。
通勤途中、動画サイトの自動再生で流れてきた曲とMVに耳も目も奪われた。

少しこもったようなローファイなサウンドに、怪しげなシンセの音が光る。
現代にはふさわしくない狭い画角、宇宙感とバブル感漂う
良い意味でチープなギラギラした背景に薄紫の絶妙な照明。
柄シャツを着たボーカルが中央にどんと構え、
その横のバンドメンバーであろう2人は、絵に描いたような縦乗りでビートを刻んでいる。

「久々にヤバイのが来てしまった!」と思わずニヤリとしてしまい、
間もなく職場だというのに画面とそこから流れてくる音楽に釘付けになっていた。

ラップ調かと思えばユラユラした心地よいサイケ調になったり、
サビではどっしりとしたバンドとしての側面を見せたりと
3分ちょっととは思えないくらいの展開の多さで忙しい曲だが、
キャッチーさもしっかりある。なんなんだこれは。
そしてすべての展開についていけてしまうボーカルの声も素晴らしい。
とてもクセになる。

MVも曲と同様に、コミカルな部分、急に出てくる宇宙人、
バンドパート、アニメーションと、短い時間の中で実に多彩な顔を見せる。
目が離せないのと同時に、理解が追いつかず混乱もした。
(後から分かったが、冒頭の3人での表現や宇宙人の登場は彼らの過去のMVにもあった。)

そんな、全くもって理解が追いつかないその曲の名は『新世代』で、
一瞬で私の興味をかっさらっていった彼らの名は、『Tempalay(テンパレイ)』。
3ピースに、サポートを加えた4人で活動しているバンドだった。

実は彼らの名を聞いたのは初めてではなくて、
アパレルブランドとのコラボ曲『革命前夜』には数ヶ月前に既に出会っていた。
曲もMVも格好良くて何度か聞いたのだが、その時点では恥ずかしながら
「オシャレなバンドがまた出てきたなあ。」それくらいの認識で深追いはしなかった。

というのも、近頃日本の音楽シーンはいわゆるシティポップが流行している気がしていて、
それ自体は好きだが、なんだかオシャレで格好が良すぎて、ついていけない部分があった。
かといって正統派の邦楽ロックを鳴らすバンドにも10代の頃ほど夢中になれず、
突出して熱を注げる対象を私は発見できずにいたのだ。

そんな中、突如として目の前に現れてしまった『新世代』。
シティポップなんて言葉でくくれるものではなかった。
ヘンテコなのに、ちょっと土臭いのに、抜群に格好良くて気持ち良いのである。

MVを見るにきっと同年代か少し下なのだろうが、どんな音楽を聞いて
どんなアートを体感してきたら、こんな曲とこんなMVにたどり着くんだ!?
止まらない興味が私を突き動かし、MVに遭遇したその日のうちにCDショップへ向かい、
同曲が収録されている彼らの新譜『from JAPAN 2』を購入した。

ジャケットのどことなく懐かしい感じ、LPを思わせる帯コメントやフォント、
全てがツボだったし、1stから地続きになっているアルバムタイトルも良いなと思った。
正直、フロムジャパンという割には『新世代』にしても『革命前夜』にしても、
彼らのサウンドからはとてつもない日本っぽさのようなものは感じない。
むしろ洋楽っぽいと言われても否定はできないだろう。
だが、国内外あらゆるサウンドから影響を受けた上で、今の日本で、
このタイトルで、この音楽を発信する意味を訴えようとしている気がした。

CDを開封し、歌詞カードを開く。
正確に聞き取れず、気になっていた『新世代』の歌詞がやっと判明する。
《MP3 フリーダウンロードされちゃう/ああ まあそうゆう時代よ》
《一周先を感じたいよ/一体いつになれば僕らに追いつくの?》
現代の音楽のあり方への危機感、憂い、諦めを歌いつつも、
「自分たちは最高の音を鳴らしているのに、シーンは何故全く追いつかないんだ?」
「早く見つけてくれよ!」そんな野心と希望に満ちているようにも思える。
もしくは、一周先は360度先で、音楽の原点に立ち返ろうぜという意味もあるのだろうか?
あまり文学的な歌詞ではないから、推測は無限だ。そこもまた面白い。

《さらば UFO乗り継ぎ最先端に/君はなんてユーモアに踊るのだろう》
《気分はどうです?新しい音ほしいでしょ/そう新世代》
この曲に遭遇してしまった私は、ちょっと悔しいが
「最高の気分だ」「新しい音をもっとくれよ」と答えるしかない。

音楽の楽しさや表現の楽しさを忘れかけて必死にカテゴライズし、
フェス文化ばかりが加速し、一種の飽和状態にある(ようにも思える)現代の音楽シーン。
彼らがチラつかせる最高のエサに、食いつかずにはいられない。

あぁ、待ち焦がれていた新世代の表現者たち。
その名は、Tempalay(テンパレイ)。

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