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三秒間、奇跡に見惚れて

UNISON SQUARE GARDENとNICO Touches the Wallsが交わった瞬間

今、活動しているロックバンドのなかで1番好きなのはUNISON SQUARE GARDENだ。

そう自信を持って断言できる。

僕の人生において、大切なことをたくさん教え、気づかせてくれたバンド。

生きる意味のひとつといっても過言ではない。

自分のために誠実に音楽を鳴らしている。

ドン底にいた僕を救ってくれた存在だ。
 

でも、もし好きなバンドのライブをひとつだけ見ることができると言われたら…

僕は迷わずNICO Touches the Wallsを選ぶと思う。

ロックバンドという最高にカッコ良い存在を教えてくれた。

僕のライブ人生の原点だ。

新しい世界へ飛び込むことを恐れていた僕に、ゆっくりだが確実に生きがいを与えてくれた。

そして、うまくいかないばかりの人生で、同じようにもがく姿を見せてくれた。

僕にとって、生きることの”象徴”の様なロックバンドだった。

けれども、もう彼らの曲をリアルタイムで聞くことはない。

それは昨今の情勢と関係なく容赦なしに現実として降りかかっていた。

昨年、活動終了を発表した彼らはそれぞれの道を歩んでいる。

いつか…という希望はあるが、現状ライブをしてくれる可能性は極めて低い。

だからこそ、望んでしまう。

突然の発表を受け入れられなかったからこそ、せめて一度だけ彼らの曲を聞きたい。

そんな諦めにも近い願いは、思いもよらない方法で実現した。

僕にとっては最高のカタチで。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

この春に予定にされていた「LIVE HOLIC extra vol.4」…昨今の情勢により中止になってしまったが、「-another edition-」として、配信によるアコースティックライブが先日開催された。

出演予定だった各バンドの代表者が主に集まり、UNISON SQUARE GARDENからは斎藤宏介(Vo&Gt)が出演した。

それぞれソロ活動をしているが、UNISON SQUARE GARDENとしては珍しい1人での出演である。

どんなライブになるか予想がつかないなか、斎藤は周囲の期待や緊張を意に介さないように、”いつも通り”のパフォーマンスを行った。

ユニゾン特有の揺さぶりと多幸感に満ちたライブを。

1曲目の「meet the world time」、バンドとしても近年まったく披露していない曲を、”改造”という言葉が相応しいアレンジで暴力的なまでのカッコ良さに仕上げていた。

アコースティック公演と銘打ったライブを、あえてエレキギターで成り立たせる姿は、”変化球をスタンダードにした”バンドだからこそ為せる技だった。

「友だちの歌を歌います」

そんな言葉から始まったのは「Lovers」…斎藤とも親交の深い片岡健太が所属するsumikaの代表曲だ。

あえて他バンドの楽曲を選んだのは、ユニゾンの音楽を3人で作り上げた拘り故だろうか。

斎藤の歌声から発せられるストレートな歌詞に自然と顔がほころんでしまった。

原曲のメロディに沿いながらも、彼にしかできないパフォーマンスを見ることができ、まさに極上の時間であった。

そんなソロだからこそ実現した夢の演奏曲たち。

斎藤が「友だちの歌を歌います」と言ったとき、僕の頭には”あのバンド”が思い浮かんでいた。

同時にこの季節だからこそ出てくる”あの曲”も

同期で凌ぎを削ってきた間柄なので、友だちの資格は十分満たしているはず。

とはいえ、斎藤もロック界隈では顔も広いし、何年も前の曲なので、正直期待は薄かった。

おそらくここからUNISON SQUARE GARDENの曲が続くだろう。

そんな予想が上回っていた。

演奏を終え、斎藤が楽譜を入れ替える。

「sumikaのLoversという曲でした」

続けて口にしたのは…

「もう1曲、友だちの曲を歌います」

予想外のセリフに驚きながらも、斎藤と親交の深いバンドを思い巡らす。

数秒間の沈黙…どこか既視感のある沈黙。

斎藤の歌声と演奏でそれは確信に変わる。

“言葉に出来ない願いに 目を背けたことが 何度あっただろう”

思わず喜びの歓声が小さく漏れてしまった。

披露されたのは、NICO Touches the Wallsの「夏の大三角形」。

この時期にピッタリの選曲であるが、発売されたのは今から8年以上前の話だ。

それが”友だちの曲”という縁で、時間を超えて演奏される。

何年経っても、どんな状況になっても変わらない繋がりが嬉しかった。

何より大好きなバンドのボーカルが、同じぐらい大好きなバンドの曲を歌う。

音楽ファンでこの幸運に出会える人はそう多くない。

ただ、その幸せを噛み締めていた。

“三秒間、君に見惚れて”

何度その言葉を聴いただろうか。

そのたびに少しだけ生きる実感を得ることができた。

奇跡は二度と起こらないはずだったのに。

様々な要因が重なり合って、今この空間で実現した。

三秒間が永遠にも感じられる時間、僕は画面越しの斎藤宏介に見惚れてしまった。

“いま時間よ 止まれ”

何度酔いしれても物足りない…奇跡に出会ってしまったから、僕の心にもそんな願いが芽生えてしまった。

斎藤がこの曲に込めた思いは誰も知ることはできないし、想像することも難しい。

活動終了を知ったとき、一体どんな気持ちになったのだろうか。

今、何を考えて演奏しているのだろうか。

きっと言葉しない感情はたくさんあるんだろうけど、多分答えは一生わからないままなんだと思う。

だからこそ、もう二度と聴けないはずの曲と出会わせてくれたことに、ただ感謝の言葉を述べたい。

ありがとう。僕の宝物を大切にしてくれて。

ありがとう。二度と忘れない景色を見せてくれて。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

このライブは語るべくことが数多くあった。

それでも「夏の大三角形」は、自分にとってはそのどれをも凌駕するぐらい人生で重大な出来事となった。

ラストは、UNISON SQUARE GARDENの「黄昏インザスパイ」で締められた。

この曲で最も好きなのが

“今日が辛いから明日も辛いままだなんて思うな”

というフレーズだ。

今の現状は決して楽しいものでない。

ライブを開催することは容易ではないし、今まで通りのやり方ではうまくいかないこともたくさんある。

生きることに対して不安になる事実もそこら中に転がっている。

それでも、何かを残そうと模索していった結果がこの「-another edition-」だ。

苦しい道のなかにも、信じられないぐらいの楽しさや幸運が待っている。

このライブは僕にとってそれが証明された時間となった。

配信という形態は、生の音楽に触れることができないし、1人でいることに寂しさを感じてしまう場合もある。

けれど、今回のアコースティック形式では、アーティストと1対1になれたような不思議な感覚を味わっていた。

それはライブハウスでは、絶対に得ることができない感覚だと思う。

「配信」というものがライブ人生で避けては通れないものになるとすれば、その事実は今後も参加するための大きな魅力となった。

音楽業界には、これからも理不尽なことが続いていくのかもしれない。

だけど、進んだ道は望むものじゃなくても、”楽しい”は至るところに転がっている。

それだけで前を向いて進んでいけるはずだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

僕にはちょっとした後悔がある。

それはライブ人生で最も音楽から離れていた時期に遡る。

2015年2月25日、大阪のなんばHatchでの「ニコ タッチズ ザ ウォールズ ノ フェスト’15」にて、NICO Touches the WallsとUNISON SQUARE GARDENが対バンをしたのだ。

残念ながら、将来と現在を天秤にかけた僕は、このライブに参加することを諦めた。

自分の選択に後悔はないが、時折どんなライブだったのか無性に気になってしまうことがある。

だから、今回の出来事は小さな希望だ。

どんなカタチでも良い。また一緒のステージで演奏する彼らが見たい。

そんな思いが改めて再燃してしまった。

叶うかどうかはわからない。

ただ、”友だち”という繋がりを再発見したからこそ、まだNICOの居場所は完全には消えていない。

そう、強く感じてしまった。

願わくば全ての事態が収束した際に、本来ないはずのバンドの名前が世に出てきていることを期待したい。

奇跡を垣間見たからこそ、そんな荒唐無稽な夢も口に出てしまう。

音楽の力ってやっぱり偉大だ。

何はともあれ、僕の好き同士が交わった瞬間、この大事件は生きるための最大限の幸福を与えてくれた。

出口が見えないからって関係ない。

まだまだこの世界を歩むことができるから。

さあ、次はどんな”楽しい”が待っているんだろうか。

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