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2017年9月21日

布瀬夢軸 (19歳)
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蒼き日々の夢

plenty 最後のフェス

私たちはplentyという大きな夢を見ていたのだろうか。
 

plentyが解散した。人が毎日どこかで生まれてどこかで死ぬように、バンドも毎日どこかで結成されて、どこかで解散している。バンドが解散することは、そのバンドのファンにとってはバンドの“死”に等しいと考える。
一部の曲は前から知っていたが、解散までの時間で、私がplentyを好きでいた時間はごく僅かだった。しっかりplentyの様々な曲を聞き始めて一年経つか経たないほどだ。長年聞いているファンからしたら私などひよっこだろう。しっかり興味を持ち始めた矢先に解散が決まり、ラストツアーも日比谷野音の解散ライブもチケットが取れないと悟った私は、plenty最後のフェスに目を向けた。SWEET LOVE SHOWERだ。
 

昼間は強い陽射しが当たり、フェスらしいフェスを誰もが楽しんでいたが、plentyの出番が近づくにつれ、少しずつ厳かな雰囲気が漂い始めた。FOREST STAGEに向かうとその厳かさは更に大きくなった。既にリハーサルを行っているplentyをじっと見守る人々。一音も聞き逃さまいという集中力が遠目からでも伝わってくる。
橋の向こうの賑やかさとは違う世界のようだった。

ステージに現れた三人を迎える拍手は、他のステージで聞いた拍手より大きく聞こえた。
一曲目は『ひとつ、さよなら』。江沼の歌声とギターが暗くなった空に響き渡っていく。

<かげりゆく八月の夕暮れの、不在 夢のあと 永久にいて>
『ひとつ、さよなら』

この状況で聞くにはあまりにも残酷な歌詞。早くも別れを意識させられる。

二曲目は『ETERNAL』。この日のplentyのステージの山場はここだったのではと思う。ステージの上空に浮かんでいた月が、流れる雲に埋まっていく。完全に黒くなった空から雨粒が落ち始めた。

<瞳の前の風景は 僕を落ちつかせない まばたきの後ろには 二度と戻れない>
『ETERNAL』

この一瞬一瞬が最後であること、二度と戻らないこと。儚くも強い音がこちらの悲しみを抱えて雨に流れる。「未来」を「ゆめ」と読むこの歌が、もう見ることのできないplentyの未来を見せてくれたら。

「雨だ」
曲が終わってから、マイクを通さない、雑談のように軽い江沼の声がした。こんな日でも変わらない彼の穏やかな雰囲気に安心感を覚える。

こちらの寂しさを振り切るように『待ち合わせの途中』『枠』『最近どうなの?』と曲が続き、ライブは盛り上がりを見せていく。マイクを通さずに叫ぶ江沼の声が熱を煽り、これが最後などではないような、しかしこれをライブで聞くのは最後なのだという、不意に訪れる悲しみのジレンマに襲われる。
特別なMCはなく『傾いた空』で本編は終了した。

アンコール一曲目は『よろこびの吟』。美しいファルセット、寂しさを温かい光で満たしていくレクイエム。雨の上がった静かな空が吸収していく。
二曲目は『手紙』。ドラム・中村一太加入後の三人体制になって出したアルバム『空から降る一億の星』のリード曲だ。この曲が発表された時、以前からthe cabsが好きだった私は、plentyに中村一太が加入したと聞いてとても喜んだものだ。中村一太のドラムを叩く姿を、叩く音を生で聞く夢を叶えてくれたのは紛れもなくplentyだ。

三曲目に入る前に江沼は
「スペシャ、SWEET LOVE SHOWER、お世話になりました。ありがとうございました。さようなら!」
と明るい声で挨拶した。田舎に遊びに来た子が帰る時のような快活さと切なさが、余計に胸に刺さる。

最後となる三曲目は『蒼き日々』。
この曲に何度救われたかは数えきれない。

<どこでも行けると信じてたなら どこにも行けないはずはない>
<朝が来るまでは僕だけが正義。>
『蒼き日々』

胸の奥の妬み、僻み、刃物のように鋭い厳しさ、だがどこかふてくされたように背中を叩いてくれる。こんなに鬱屈としてもどかしいのに、何故か頼りになる曲を私はこれ以外に知らない。
一人で戦う誰かにずっと寄り添ってきたはずだ。
そして、これからも。
 

plentyとは、長く不思議な夢のようだったと感じる。
だが夢と呼ぶには妙に現実的で、心の奥底に近い。音として具現化されたもう一人の自分のようなところがあった。
plentyに限らず、解散というものに対して、「解散しても音楽は残る」という主張をよく耳にする。
しかし、plentyの解散は紛れもない“別れ”だった。勿論CDを再生すれば曲は聞けるし、動画を探せばライブ映像も見れる。だが、plentyの先を見ることはできない。「解散しても音楽は残る」という言葉では埋めることのできない大きな“別れ”がそこにあった。それが夢から覚めた際の虚しさにどこか似ているのだ。

では、plentyの曲と過ごした日々も夢だったのだろうか。
答えはplentyに支えられてきた、己の体と心が知っている。

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