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2017年9月22日

わったん (42歳)
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大人とは? 子供とは? 自分とは

~ wacci「感情百景」に存在する "わたしたち" ~

2~3歳ぐらいだろうか? 慌ただしく行き交う駅のトイレ前で、やっと歩けるぐらいの男の子が泣いていた。 結構な大声で大粒の涙と鼻水を垂らし 「ママ~!!」 と叫んでいる。
その子の手は父親と結ばれているのに… 僕が理由を考えてる間もなく、母親が慌てて女子トイレから出てきて落ち着かせていた。
たった2~3分間いないだけで、咳き込むほどの泣ける子を見て、羨ましいなと思った。

僕は男子トイレから出てきた足を止めずに音楽の再生ボタンを押したが、心の中ではずっと立ち止まっていた。

 ”今、なんで僕は羨ましいと思ったんだろう?”

イヤフォンからはwacci(わっち)の新しいアルバム。 「感情百景」が流れていた。
 

wacciとは「わたしたち」の意味を込めて。 ボーカル橋口 洋平を中心とした、ギター村中 慧慈、キーボード因幡 始、ベース小野 裕基、ドラム横山 祐介 の、「わたしたち」がおくる5人組バンド。

前回作のアルバム「日常ドラマチック」でも 「何気ない日常に詰まった、でも本当は一瞬一瞬がドラマチックな出来事なんだよ」 を、1つ1つ大事に拾って歌にしていた。
今回のアルバム 「感情百景」 は、さらに自分自身や、1人でも多くある感情の豊かさを見せてくれている。
 

あなたは、高いビルや山に登って夜景を見た時、こう思ったことはありませんか?

 「あの1つ1つの窓に誰かが住んでて、たくさんの日常と、たくさんの感情を抱えて生きてるんだよなぁ」

僕はそう思うと、その後にお腹の周りに白でも黒でもない、灰色の感情がグルグルと廻りだす。 夜景を見て素敵だね! と思えばいいだけなのに、豪華な家を見ては 「隣の芝生は何故こうも青いのか?」 と見えてしまうし 「自分、何をやってるんだろう? こんな生活でいいの?」 と考えてしまう。
その窓明かりにいるほとんどの人が、生きていさえすれば、たった20年でイヤでも訪れる ”大人”と言われてる人達で、僕も立派な(立派でない)大人だ。

曲を聴く度に wacciは 「大人なんだから」 と思う僕自身の言葉に 「大人とは?」 と疑問を投げかけてくれる。 「大人とは?」 えっとなんだっけ… あれ?

 「大人の定義」とは、実際には ”大人になった自分自身が植え付けた「らしさ」”

1曲目「僕らの日々」でも、たくさんのハテナマークを手渡してくれた。

< 強くなるには 弱さを知ること > 
< 才能なんていう言葉で片づけないで 結末だけ見た誰かが言いたいだけ > (僕らの日々)

何かを目指したければ、涙は流していいから、その後は笑って目指していけばいい。
実際、ボーカルの橋口洋平含め、バンドメンバーも色んな職についてた元会社員やラーメン屋店長、エンジニアだった。 どうすれば強くなれるか? どうすれば結果が出るか?
結果が出ない苦悩と、過ぎていく現実に突き付けられ、自分自身とやりたい事がペリペリと剥離していく音が聞こえたのかもしれない。 苛立ちはどこにも向けられない。

 だって大人なんだから。

「大人なんだから、やりたかった夢を我慢すること」
「大人なんだから泥をかぶる事も受け入れること」
誰もが持ちそうな負の感情に、またハテナマークの付箋紙をペタペタと貼り付けた。

2曲目 「Ah!Oh!」でも、軽快なリズムと素敵なダンス(?)と共に歌っている。
でも内容は 「これ、バラードでもよくない?」 と思うほどの大切なことを歌う。

< どうしてこの星では この時代では 気持ちと真逆な顔 裏腹なセリフ
 嫌われたくなくて 強がって 平気なフリしてno no no? > (Ah!Oh!)

橋口氏は、FM横浜のレギュラー番組「YOKOHAMA RADIO APARTMENT ドア開けてます!」でも、アルバムの曲達のように、誰もが通り過ぎるような出来事を拾い集め、あらゆる角度から自分なりに受け入れるかどうかを考える。 毎週のように 「そんないちいち細かい事(笑)」 と、ラジオスタッフがヤジる。 でも、そう言えばそうだなぁと思う事ばかりで、そこに気づくとは! といつも感心する。

ゲストへの洞察力も鋭い。空気を読めない男の真逆で、
”瞬時で反応する高精度な人間空気清浄機”
「この言ったらきっと相手はこう思うかもしれない」 という先読みの言葉。
「あ、違う反応、これはマズい領域だ」 と思うと、サッと引き下がる。

思いやりが超えすぎて、裏を返せば、どうすれば自分が傷つかないか? そう。

 < 嫌われたくなくて 強がって 平気なフリ >(Ah! Oh!)

きっと、シミのように付着した、自分を守ろうとする今までの経験なのかもしれないし、それは橋口氏だけではなく、誰でもあるからこそ感情移入できる。

それはタイトルのキー曲である3曲目 「感情」で、最初から言ってくれていた。

< 喜怒哀楽 上手いこと表に出せなかった僕に
四文字じゃおさまらない 色んな気持ちをくれたね > (感情)

曲の主人公や、あなた自身。 そして橋口少年は、今でもずっと思っていやしないだろうか?
トイレ前で大声で泣いてたあの子も、やがて成長し、小学生から大学生へと時が過ぎるにつれ泣かなくなるだろう。
そして「大人」という部類に入ると、泣くのはダメだと自分に言い聞かせる。
泣くのもダメ。 寂しいというのもダメ。 苦しいなんて、もっての他。
感情を自ら削いで、削いで、削ぎ切って、圧縮された気持ちを、どこに捨てるでもなく閉じ込める。 「ほら、これが大人なんでしょ?」

結果 「羨ましい」 だなんて思う

よく言えば、世渡り上手。 悪く言っても 世渡り上手。
空気清浄機でもなく、自分は存在しない空気としてみてくれていいと思っていやしないか?
それって大人でなくても、子供や学生でも、そうやって気持ちを塞ぐ人がいて。
 実はうまく世を渡ってない人ほど、守る術を固めて、ヘラヘラと笑っている。
誰からも傷つけられないように 誰も傷つけないように。

その、一番泣けない、笑えない、我慢しなきゃいけない時期に 「感情を捨てちゃうの?」 と言ってくれた人がいたら、僕はどれだけ支えられるだろう?

人を導く時、何が正解かなんてわからない。

「ほら行くぞ」 と前から手を引っ張っていく事。
「よし行けよ」 と後ろから背中を押す事。
どちらも正解だ。 でもwacciの音楽は横。 隣にいる。

隣で「大丈夫? 歩ける?」 とつかず離れず、そばで寄り添ってくれる人。
「僕もそんな強くないんだよね」と、笑いながら弱さを知る人。
これがもし好きな相手なら、きっと喜怒哀楽4文字以上の感情が生まれる。 愛だ。

< あの日手に入れたかった恋は 身を投げても守りたい愛に 変わったんだ > (感情)
< 誰もがもっと臆病で 誰かの愛を欲しがって> (ピアノ線)
< あいのうた 君に届け いつだって一人じゃない> (あいの唄)

曲には、たくさんの愛がある。 愛情を知ると、鎧のようなトゲは、ポロポロと涙と共に落ちていく。 だから本当は、今でもwacci自身も、今でもずっとハテナマークを貼り付けているのかもしれない。

「大人とは? 子供とは? 友人とは? 自分…とは?」

取れないハテナマークをつけたまま、誰もがこれからも歩んでいく。
自らを剥離させないように、葛藤と戦うため日々を生きてく。

優しい人ほど少し生き辛く感じると思うので、アルバム「感情百景」を聴いて、そしていつかライブに足を運んで欲しい…と思うのです。 終演後、僕はいつも自分という名前のスタート地点に立てた気分になるから。 

ライブで初めて「感情」を聴いた時に、僕は周りにバレないように泣いた。
”バレないように” と言ってる時点で、ずっと弱さとも共に歩くのだろう。
周りも泣いていたけれど 「男なんだから」という気持ちには負けた。
ただ… 「羨ましいな」 と思える気持ちがなくなった。

wacciのプロフィールにはこう書いてある。
「泣いたあとにちょっと笑えるような、笑ったあとはもっと笑えるような歌を届けます。」

あなたの、喜怒哀楽の四文字以上に押し殺させない感情百景が必ず見つかります。
きっと 「わたしたち」のwacciの5人は、いつでも暖かく迎えてくれますよ。

「ようこそ! wacciです!」

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