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負けっぱなしのきみへ

Hump Back「拝啓、少年よ」に勇気をもらった話。

悔しくて悔しくて悔しくて、涙が滲むのさえ悔しくて汚れた拳でその滴を力任せにぬぐったことのある人に聴いてほしい曲がある。
Hump Back「拝啓、少年よ」である。
この、軽快なギターサウンドのイントロから始まる爽快感あふれるファイトソングを、「ああ~ガールズバンドのよくある耳さわりのよいおきれいなポップスね」と侮るなかれ。
全然違うのである。
まず、その衝撃的な歌い出し「夢はもう見ないのかい?」にどきりとした人、いませんか?
ハイ、ここにいます。
しかし、夢をみるみない、はわたしではなく息子の話。
小5になる息子は剣道ボーイ。このHump Back「拝啓、少年よ」がFMラジオのヘビロテでくるくるまわっている頃は2年生だったかな。
経験ある方はご存知だと思うけれど、剣道の試合というのは残酷で、力の差が歴然としている剣士の試合というのはものの2秒もあればカタがついてしまう。
「はじめ!」「めーん!」「面アリ!」で1秒。「はじめ!」「コテー!」「コテあり!」で2秒。終了!といった具合。
しかも大きな大会ともなれば、わりと遠方へと出向くので朝がとてつもなく早い。朝4時半集合なんてザラ。朝4時半に集合なんて日は、はっきり言って寝られない。
もちろん当の息子はぐぅぐぅ寝ているが、母は寝坊するのが怖すぎて緊張してとても寝らんないのだ。
それでも眠気に耐えつつお弁当を作り、車を運転し、弱気が顔を出す息子を叱咤激励し、試合に送り出す。
そして、いざ試合!2秒!ハイ負け!といった具合。そんなのしょっちゅうだ。
わかっている。息子が悪いわけじゃない。息子はじゅうぶん頑張って練習してる。毎日毎日必死で。強くなりたい。勝ちたい。その一心で。
足の裏はいつだってボロボロだ。手だってマメだらけ。真剣なんだ。必死なんだ。まだちいさいのに。
わかってる。わかってるよ。でも。
なんであそこでああしなかったの?なんでもうすこしこうしなかったの?言いたくてたまらない。絶対言っちゃだめなのに。だって息子がそんなの一番わかってるんだから。
そんなモヤモヤした気持ちをもて余す試合の帰り道、必ず「拝啓、少年よ」を聴いて帰ったものだった。
ちょっとハスキーで骨太で。でも高音は不思議な清涼感と透明感のある不思議な声。
「ああ、もう泣かないで」「きみが思うよりも弱くはない」「ああ、まだ追いかけて」「負けっぱなしくらいがちょうどいい」
なんてこというんだ、と思う。負けっぱなしってなんなんだ。負けっぱなしなんてイヤだよ。でも負けっぱなしだってまだ追いかけたいんだ。絶対に強くなりたいから。
助手席のしかめっ面、なにも言わない息子を見る。そうだよね。そのとおりだよ。
負けっぱなしくらいがちょうどいいなんて歌詞、どうやったら書けるんだろうと思ったが、作詞作曲された林さんは紆余曲折あった末、今の音楽表現の形にたどり着かれたとのことで、そう思うとなおこの詞は胸に響いてくる。
パンチのある歌声で挑むように始まるAメロに心揺さぶられているうち、Bメロなしに一気に伸びやかなサビへうつりゆくのは、ぐん、と思いきり背筋を伸ばすような気持ちよさ。本気の想いあふれるメロディと歌詞がちぢこまっていた勇気を奮い立たせてくれる。
負けっぱなしだっていい。夢がまだあるから。
そう言い聞かせ続けた息子は本当に強くなり、いまではわりと大きな大会でも表彰台に登れるようになったのである。嘘のようなほんとの話。
本気で最高だよ。この曲は。とっても勇気をくれるんだ。悔しくて悔しくてたまらない時に。
そこの泣いてるきみ、嘘だと思ったら聴いてみて。
負けっぱなしでも大丈夫なんだよ。
その悔しい想いは力になるし、その力はその時はもしかしたら目指すものをつかみとれなくても、絶対に無駄にはならない。
だからもう泣かないで。まだ追いかけて。負けっぱなしの「拝啓、少年へ」

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