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TKに刺されたと思ったら浄化された夏の夜

TK from 凛として時雨 Studio Live for “SAINOU”を観て

こんなにも優しく温かい配信ライブを観たのは初めてかもしれない。

激しさと静寂を繰り返す、色鮮やかな、音のお祭りみたいだった。
あるいは、TKと、この日のバンドメンバーによる、極上の音のおもてなしを受けているみたいだった。

TK from 凛として時雨によるスタジオライブ配信、「TK from 凛として時雨 Studio Live for “SAINOU”」を観た感想だ。

TK from 凛として時雨のライブは、いつも緊張感に溢れている。
ステージ上に緊張感が漂っているのはもちろん、客席にもただならぬ緊張感が漂っている。
TKがステージ上から「みなさん緊張していますね……」と微笑むほどである。

そんな緊張感の溢れるライブが、配信でどう表現されるのだろうと思っていた。

配信スタート。ライブ同様SEが流れ、ライブ同様TKが下手側から歩いてくる。
自分の部屋にいるのに、なぜか緊張してくる。もはや条件反射である。
やはりいつもの、緊張感溢れるライブだ。そう思った。

しかし、一曲目の『Fantastic Magic』を聴いて、不思議な気持ちになった。
いつも通り、突き刺さるようなTKのギターとボーカル、バンドメンバーの隙のない凄まじい演奏、TKを怪しく照らす照明。
なのに、なんだかとても、優しくて温かい、と思った。

普段、ライブ終盤に演奏されることも多く、客席を煽るように演奏されるこの曲。
しかしこの日は、「これから魔法にかけるよ」という、TKの、画面越しに観ている私たちへの想いが詰まったメッセージのように思えた。

ライブ延期のもどかしさを乱暴に発散させる訳ではなく、ライブ再開の渇望を煽る訳でもなく、画面越しの一対一(厳密には四対一だが)という条件がこのうえなく贅沢に思えるような、そんなライブを用意してくれたのだと思った。

実際、二曲目の『kalei de scope』で、万華鏡のように画面いっぱいに舞った黄色い照明を観て、「蛍みたい……夏だなぁ」としみじみしてしまった。
おそらく、ライブ会場で観ていたら出てこなかった感想だと思う。不思議な感覚だった。

TKの書く歌詞には、一見して刺激的な言葉が目立つ。
しかし、刺激的な言葉ほど、今にも壊れそうな繊細さと優しさが潜んでいる。

この日のライブには、TKのそういった部分が溢れていたように感じた。

ちなみに配信終了後、TKがSNSで、ライブを観たお母様の言葉を紹介していた。
このライブを「癒し系だね」と形容したお母様に対し、TKは「本当に僕のライブを観たのか不安です」というチャーミングなコメントを寄せていた。
癒し系だね、というお母様の感想に、思わず頷いた。理由は言わずもがな、である。

この日のラストソングは『katharsis』だった。
カタルシス――精神の浄化。
日々の息苦しさを、音で浄化するようなライブ。
ライブの定番人気曲や、最新アルバム『彩脳』収録曲を織り交ぜた全13曲。画面の中だからこそ、画面の中でしか成立し得ない空間を作り上げ、鋭い音で、優しい音で、この日常で疲れた心を浄化してくれた。

こんな配信の在り方があるのだ。
最後の音の余韻に浸っていると、気付いたらTKの姿は画面から消えていた。
それでもステージの上には何かが残っているような気がしたし、エンドロールが流れても、しばらく動けなかった。

ステージ上の余韻だけは、画面越しでも変わらないのかもしれない。
ただ、余韻すらもほんの少し、優しく感じた。

8月8日。
TK from 凛として時雨の世界に優しく包まれた夏の夜だった。

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