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リアルから逃げない

flumpool 5thアルバム『Real』発売から月日が経った今感じること

flumpoolは葛藤を抱えながら常に「何か」と戦っているバンド、というのが私の第一印象だった。それは、彼らと出会ってずいぶん年月が経った今でも変わらない。彼らの2016年の7th TOUR「WHAT ABOUT EGGS?」では、山村隆太(Vo・G)の「一緒に殻破っていこうぜ!!」とライヴで叫ぶ姿が今でも忘れられない。同じく2016年に発売されたアルバム『EGG』を引っ提げたライヴであり、アルバムのジャケットにも表現された〝卵の叫び″のように、自分の想いを叫び出し、殻を破っていこうではないか、とそこには強い覚悟と決意が感じられた。2017年の8th TOUR「Re:image」では、ツアータイトルに込めた想いを、〝イメージし直す″という意味で付けたということ。デビューしたときに想像していた僕らにはまだ届いていないと思うからこそ、一緒に未来をやり直してくれないか、ということを私たちに語ってくれた。そこには、何もしなければ、自分が今想像することのできる自分にはなれるだろうが、変化を求めることで、理想とする自分になれるかもしれないという、挑戦することや変化を恐れずに前に進んで行きたいという想いを感じた。どれも彼らがその時に感じた想いと真剣に向き合い、葛藤があったからこそ生まれた作品であり、言葉であり、ライヴだったのだろう。人は常に「何か」と葛藤している。仕事、恋愛、人間関係とさまざまだろう。私自身も様々な葛藤を抱え、これまで生きてきたからこそ、彼らの想いに、言葉に、音楽に、心惹かれ好きになったのだと思う。

 そして、彼らは2020年5月、5thアルバム『Real』を発売した。『Real』と聞くと、やはり彼らの1stミニアルバム『Unreal』を思い出さずにはいられないのだが、同じく裸のジャケットとなっており、再びこの衝撃的なジャケットのアルバムを手にする日がくるとは想像もしていなかったので、不意を突かれ、非常に驚いた。

タイトル『Real』という言葉を辞書で調べると、「実在する」や「現実の」「本物の、本当の」という意味で使われる。『Unreal』から12年の月日を経て発売された『Real』には、彼らの12年間の歩みがしっかりと詰め込まれた、まさに「今」のリアルなflumpoolを表す作品になっていると感じた。その『Real』に収録されている曲について書いていきたい。

まず1曲目にSEが入っているのは珍しい。が、この〝20080701″のSEが、2曲目の〝NEW DAY DREAMER″をより際立たせる。〝NEW DAY DREAMER″のストーリー性がより強く感じられ、歌の魅力が引き出されている。SEがあるとないとで〝NEW DAY DREAMER″の聞き方は大きく変わってくるだろう。また、ベースやドラムを完全に打ち込みで作った〝ディスカス″は、今までのflumpoolにはなかったサウンド面での挑戦があっただろう。しかし、今作りたいものを自分たちから発信していく、歌に合う音作りをしていくという新たな扉を開けたflumpoolのサウンドは、とても心地良く、非常にかっこいい。完全に打ち込みの部分が、ライヴでバンド感の出たサウンドに変化した時の曲にも、今からとても楽しみで仕方ない。

そして、心の奥底をさらけ出すような歌詞が印象的な〝不透明人間″。これほどまでに心の内面をさらけ出した歌があっただろうかと思い返していると、彼らのベストアルバムである『The Best2008-2014 「MONUMENT」』に収録されている〝明日への賛歌″を思い出した。デビュー5周年の節目に発売されたベストアルバムに、それまでの既存曲に加え、新曲として収録された〝明日への賛歌″。《何度だって 殴りつけてよ/もう忘れられないように》や《僕を 縛り付けてよ もう逃げられないように》とそれまでのflumpoolにはないほどの生々しい言葉たちは、どこにも逃げないようにここで生きていくのだという強固な思いを訴えてきた。〝不透明人間″も《傷ひとつない 透明人間になって/守りたかったのは 綺麗な夢》自分の思い描いた理想とする姿ではなく、醜くカッコ悪い姿ならば、透明人間のように見えなければ、自分の描いていた夢は守れるのではないか。誰もが抱えてしまいそうになる思いが痛いほど伝わる。しかし、《不透明だって〝僕″という人間だから》にどんな姿だろうと自分でいる、という強い決意を感じる。自分は自分以外の何者にもなれない。失ったものがあるのなら、失ったものを見るのではなく、「今」の自分にあるものと向き合い、「今」できることを考える。それがどんなに醜い姿だろうが、それが自分だ。そんな思いを力強く訴えるように歌う山村の歌声も心に突き刺さる。〝明日への賛歌″もベストアルバムを発売するまでの、彼らの歩みとこの先の決意を感じさせた楽曲だったが、〝不透明人間″もこのアルバムに、より人間臭さを感じさせるいいアクセントを加える楽曲であり、個人的に2曲は何かリンクするものを感じさせる。

また、両親への思いを綴った〝初めて愛をくれた人″。仲間への想いを綴った〝ほうれん草のソテー″。どちらもある程度年齢を重ねてきたからこそ、伝えられるものではないかと思う。環境も心情も変化してきたからこそ、今ここに立てているのは自分だけの力ではなく、周りの大切な人たちの支えのおかげだと感じられる。仲間との絆の変化を感じつつ、それでもこの友情がずっと続いてほしいという願いを持つ。まさに「今」のリアルが詰め込まれた曲だと感じた。

そして、『Real』の最後は活動再開後、最初のリリースとなった〝HELP″だ。このアルバムを締めくくる曲として、この〝HELP″以外には考えられないと個人的に強く思う。〝HELP″は山村自身の「歌唱時機能性発声障害」になったときの心情について綴られた楽曲である。誰もが不安や葛藤を抱えながら、自分の本当の声を押し殺し、心を削りながら日々戦っている。時には、自分自身も自分の本当の声に耳を傾けることができず、自分が一番自分を傷つけているかもしれない。この曲は山村が感じた想いが、赤裸々に書かれているからこそ、同じように苦しむ人の一番の理解者として寄り添ってくれる。《心つないで 境界線超えて/心つないで Help yourself, help myself》での力強くも温かい合唱は、どんな暗闇の中にいてもひとりではないのだと思わせてくれる。活動休止から復活までの歩みを知る人には、特に心に響く作品かもしれないが、誰もが感じる挫折や孤独感に、そっと寄り添ってくれる曲だからこそ、今までのflumpoolのことを知らないリスナーにも強いメッセージ性を感じさせる曲であり、多くの人に救いの手を差し伸べてくれる一曲だ。だからこそ、『Real』の最後はやはりこの曲しか考えられない。

 ここで、再びタイトル『Real』という言葉について考える。「実在する」「現実の」「本物の、本当の」。
これまでもflumpoolの楽曲を聞いてきて感じていたのは、今回のアルバムに『Real』というタイトルがついたが、彼らはデビューからその都度、常に自分たちのリアルを表現してきたと思う。1stミニアルバム『Unreal』は「非現実的な」「架空の」「想像上の」という『Real』とは正反対な言葉であるタイトルをつけた作品も、デビューで自分たちを取り巻く環境が大きく一変した、と彼らが当時のインタビューなどで語っていた自分たちが非現実的に思う現実の世界で、その時の自分たちが表現できるリアルな音楽を届けていたと思う。「殻を破っていこう」「〝イメージをし直し、未来をやり直そう」という想いも、彼らが現実の世界で、音楽と真正面からぶつかってきたからこそ生まれた気持ちであり、それが『EGG』というアルバムやこれまでの数々のツアーで表現されてきたものだと思う。その瞬間、瞬間に感じた「今」のリアルを彼らは常に届けてくれたのだと思う。これまでの作品にも『Real』とタイトルをつけても文句のないものだったのかもしれない。ただ、1stミニアルバムやデビューした当時の覚悟や葛藤を、誰よりも彼らは大切に想って活動してきたからこそ、『Unreal』と切っても切れない関係性にある『Real』は、彼らにとって気安くこのタイトルをつけることができないくらい重い言葉だったのだと思う。では、なぜこのタイミングでこの『Real』というタイトルをつけたのか?それは12年の月日を経て、弱いところ、足りないところを気負わず、カッコつけず、より等身大の自分たちを表現できるようになった今だからこそ、このタイトルをつけたのだと思う。頑張れないときは頑張れないという。泣きたいときは我慢せず大声で泣く。簡単なようで実はとても難しい。人は、年を重ね大人になったとしても、傷つかない方法を見つかられない。ただ、傷ついていないふり、傷を隠す方法を見つけ出すだけだ。しかし、心の声を押し殺し、強がっていては誰にも気づかれない。傷をさらけ出すことを今のflumpoolは恐れない。強がらず弱さを見せるという本当の強さを手にした彼らだからこそ、自分たちの気持ちに正直に、自分たちの今やりたい音楽を届けることができる。今の彼らから作られた歌たちは、今までよりも人間臭さが色濃く表現され、心に訴えかけてくる強さが増し、非常にカッコいい。このことから、このアルバムの『Real』の意味として、「現実の」という言葉よりも「実在する」「本物の、本当の」という言葉の意味合いが強さを増すのかもしれないと思った。あるがままの、そのままのflumpoolが『Real』にある。『Real』という言葉はなかなか奥が深い。

『Real』には、これまで歩んできた中で感じた、喜びや悲しみ、挫折に葛藤、まだ諦めたくない希望や夢への想い、そして決して一人だけではここまで歩めて来られなかったからこその大切な人への感謝の気持ち。まさに、過去でも未来でもなく「今」を生きるからこそ感じることのできるすべてがこのアルバムに詰め込まれている。どんなに辛く悲しいことにも決して意味のないものは何もない。当時はとても辛かったことでも、「あの出来事があったから今の自分がある。」「あの出来事があって良かった」と思えるのはその瞬間、瞬間を必死に生きたからこそ思えることだと感じた。悲しみや痛みを経験したからこそ人に寄り添うことができる。「今」の自分はすべて今まであったことでできている。喜びも悲しみも醜さもすべてが「今」の自分だ。「今」という瞬間の大切さをこのアルバムを通して教えてもらったように思う。

 『Unreal』から12年経ち、彼らは『Real』に辿り着いた。
彼らは今までの自分たちの道のりをどう思っているのだろうか。山村の喉のポリープ摘出手術や活動休止などさまざまな出来事があっただろう。ファンが知っている彼らのストーリーはごく一部で、彼らが直面した悲しみや辛さ、これまでの道のりは想像以上のものだろう。ただ、彼らが歩んだ道のりの中で感じた葛藤があったからこそ『Real』が生まれた。そして、『Unreal』から「人に寄り添うことのできる歌を届ける」という芯となる部分は、何も変わっていない彼らだからこそ、変化を怖れず新しい扉を開いた。歌と真剣に向き合って葛藤し戦う彼らの姿に、これまでもこれからも私は心動かされ、勇気づけられる。私も一歩を踏み出したいと力をもらえる。

さぁ 命の炎燃やせ
We are new day dreamers
希望の灯よ照らせ 向かう先に 何がある

                        (〝NEW DAY DREAMER″)

1歩を踏み出したいとき、〝NEW DAY DREAMER″のこの歌詞を心に刻む。

私は、これからもさまざまな葛藤を抱えながら進んでいくだろう。向かう先に何があるのか、誰もわからない。例え、踏み出した先が暗闇だとしても決して一人ではない。もうこれ以上前に進めない、立ち上がれないと思う時は、差し伸べてくれる手をただ握り返したらいい。辛さを笑顔で隠して強がらなくていい。また歩めるようになったときにそれぞれの歩幅で前を見て歩けばいいのだと思う。どんなことがこの先起きようとも「リアル」から逃げない。

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