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新未来の音楽体験、ここにあり。

UNISON SQUARE GARDEN生配信ライブ「LIVE(in the)HOUSE2」を観て

居ても立っても居られなくて、テレビの画面を見上げては必要以上に瞬きをしてみたりした。

20:00。

開演を告げるカウントダウンが終わり、束の間の空白。
逸る鼓動を感じながら、私は全神経を画面に注いでいた。
 

2020年8月22日、UNISON SQUARE GARDEN生配信ライブ「LIVE(in the)HOUSE2」。配信ライブ2回目にして類を見ない完璧なエンターテインメントが、そこにあった。
 

映ったのは、斎藤宏介(Vo/Gt)のお馴染みストラトキャスター。
MVを観ているような錯覚に陥ってしまいそうなカメラワークだ。来たるべき第一音に向けて、画面の中でも外でも張り詰めた空気が流れていることがよく分かる。

ピンっと緊張の糸が最大まで張った、そう感じた瞬間に、ロックバンドが息をした。
 

イントロのギターが鳴った瞬間に度肝を抜かれた、1曲目は「マスターボリューム」だ。
小さなライブハウスで3人が向き合いながら音を鳴らしている。すぐに気付いてしまった、これはMVの再現ではないか。田淵智也(Ba)と鈴木貴雄(Dr)の顔がほとんど映らないカメラワークで、その疑念は確信に変わった。冒頭から配信ライブの特権を振りかざして来られた、完全に不意打ち。1回目のようにホールからの中継とばかり思っていたからだ。そして洗練された音色が実にクリアに、ダイレクトに耳まで届くこの感覚が心地良い。特に田淵のベースの音作りが耳に残る。乾いたような、指使いまで感じ取れる音なのだ。こんなにも聴いていて安心感があり、聴く度にグレードアップするバンドはいるだろうか。生配信ライブ1回目では思うように歌えなかったと無念がっていた斎藤だが、今回は十分と言って良いほど仕上がっている様子だ。MVに映る若かりし頃の3人の姿と重なって、より一層力を付けた彼らの魅力が浮かび上がる。

「描いていけ時代の彼方」

そう歌いながら目に光を宿す斎藤は、あの頃の彼自身はもちろん、前回のライブでの彼自身までも間違いなく凌駕していた。1曲目にして、息をするのを忘れてしまうくらいの迫力に圧倒されてしまった。画面を通しているという前提を超えて、UNISON SQUARE GARDENに空間を支配されたようだ。
 

1曲目の選曲及び演出に意外性が強く、余韻に浸りたいところだったが、間髪入れずに2曲目が始まってしまった。UNISON SQUARE GARDENとは、そういうバンドである。自分たちの世界に引きずり込んで離さない、完全に彼らのペースだ。そうして始まったのが「MIDNIGHT JUNGLE」。一瞬も休む隙を与えない、攻めのギアに合わせたUNISON SQUARE GARDENだ。鮮やかに錯綜するカラフルな照明が曲調にぴったりである。とにかく画面から目が離せない、身を乗り出してしまっていたことに気付く。
「MIDNIGHT JUNGLE」は比較的新しいアルバム曲だが、1曲目の「マスターボリューム」は10年ほど前のシングル曲である。この2曲を全く違和感なく繋げ、ライブのオープニングとして急な坂道を登るような演出が出来ていることにまず脱帽だ。彼らが音を出している時は、完全に無双しているのだと、心からそう感じる。
 

一瞬たりとも息をつけないパフォーマンスを繰り広げる3人、まさかとは思ったが3曲目にも間髪入れずに突入、「fake town baby」である。涼しい顔をしながら超絶技巧のギターに複雑な歌詞をいとも簡単そうにこなす斎藤、彼を中心に1ミリたりともズレない完璧なサウンドが気持ち良く響く。完全無欠のロックンロール、彼らを表すのにこれほどぴったりな言葉はないだろう。

『UNISON SQUARE GARDENです』

曲が終わったと同時に斎藤が口を開いた。

『今日もMCなし』

正直、予想通りだ。そして私はそれを期待していた。音楽だけを、信じられないほどのレベルで私たちに届けてくれるのがUNISON SQUARE GARDENというバンドだ。そういうバンドだから、好きなのだ。対面じゃなかろうが、関係ない。彼らの音楽を堪能できると思ったら胸騒ぎが収まらないのだ。
 

「Friday 君を待ってる時間 待ってる時間は辛くないけれど 冷静さは保ってらんない!冗談飛ばせる練習を続けなくちゃ」

本当にMCなしのバンドなのかと疑ってしまうほど可愛らしい歌詞から始まったのは4曲目「フライデイノベルス」。
ここで少しステージのレイアウトが変わる。先ほどよりもスペースを大きく使い、斎藤と田淵が向かい合って歌う形になったのだ。こんな風に色々なレイアウトでライブを観れるのはやはり配信ライブの特権である。UNISON SQUARE GARDENは媚びないバンドだが、こういう所で観客の満足度を上げてくれるのだ。

懐かしさを感じるイントロに心臓がきゅうっと縮んだのが分かった、5曲目は「ライトフライト」だ。シンプルな構成と飾らないバンドサウンドが切ないメロディーを引き立たせる名曲。ライブで聴いたのは初めてだった。目を瞑りながら歌う斎藤の横顔が映る度に、コーラスをしながら少し上を向いて優しく微笑む田淵が映る度に、真剣な表情と温かい表情を行ったり来たりしながらしなやかにリズムを刻む鈴木が映る度に、涙が込み上げてきてしまう。いいバンドだな、すごいバンドだな、一音ずつ噛み締めるのに精一杯だった。
 

余韻はそのままに、6曲目「サンポサキマイライフ」7曲目「like coffeeのおまじない」へと突入する。
なんて楽しそうに音楽をする人たちなのだろう。この2曲はポップ全開、フレッシュなサウンドに可愛らしい歌詞が揃ってユニゾン節大炸裂だ。彼ら自身はもちろん、観ている私までもが自然と笑顔になってしまった。冒頭でバリバリにロックサウンドを鳴らしていたバンドと同じだなんて信じ難い、UNISON SQUARE GARDENの二面性にはいつも驚かされる。
 

ポップな雰囲気から一転、爽やかなギターの音色が聴こえたかと思えば、ステージ横に置いてあった時計が突然映される。時刻は23:25。8曲目、「23:25」だ。
予想もしていなかった演出に声が出るほど感激した、また不意を突かれてしまった。ずっと前から配信ライブをしてきたバンドなのかと疑ってしまうほどの完璧な演出だ。
雲が晴れていくような爽快なメロディー、そして田淵の満面の笑みと気持ち良さそうに演奏する姿が印象的だ。彼は身体全体から音を出しているのだろう。音楽への愛、そしてUNISON SQUARE GARDENへの愛をひしひしと感じてならない。音楽と共に生きる彼らの、音を鳴らしているその瞬間を観ることができるなんて、とんだ贅沢だ。
 

斎藤の手元がアップで映され、彼はアコースティックギターに持ち替えた。そしてだんだんとズームアウトしていくと、3人の周りには大量のキャンドルが。先ほどとは全くの異空間が、そこにはあった。とても生配信を観ているとは思えないほど、映像作品のような仕上がりである。
そんな中始まったのは、しっとりとしたセッションだ。田淵が奏でる和音を中心に展開していき、流れ込むように9曲目「ぼくたちのしっぱい」へ。このバンドは表情豊かすぎるのではないか。こんなにも優しい音色までもお手のものなのだ。この曲は個人的に大切にしている曲で、まさか聴けるなんて思ってもみなかったのでイントロから涙が込み上げてしまった。

「時はいたずら 風はいたずら いつの間にか霞んだ 都合は良すぎるけど本当なんだってば」

慰めの曲としてこれほど優れたものに私は出会ったことがない。この曲は無責任な励ましではなく、本当の優しさと愛が詰まった一曲なのだ。「今は立ち止まっておこう」「有耶無耶さえもありがたいね」…慰めの曲というものは、聴いて励まされる曲というものは、現実と向き合って誠実に自分がかけて欲しい言葉を選んでくれているものを指すのだと、この曲を聴いて思い知った。田淵智也は、純粋で綺麗な歌詞を書く。やはり天才だ。
 

次の曲はまたもや予想外、「チャイルドフッド・スーパーノヴァ」だ。この曲のアコースティックバージョンとは、希少価値がすごい。そして続く「未完成デイジー」もこれまた名曲。

「いつか僕も死んじゃうけど それまで君を守るよ」
「呼吸のような幸福を誓うよ」

どんな飾った言葉よりも、「永遠に君を守る」なんて大それた言葉よりも、ずっと信頼できる言葉が並ぶ。等身大で素直、信頼できる歌詞がストンと心に落ちる。綺麗、この言葉が一番似合う曲。
 

斎藤はストラトキャスターに持ち替え、再びロックモードに切り替えのようだ。その合図として斎藤がキャンドルを吹き消す演出が入る。
華麗なドラムソロから、ロックバージョンでのセッションが始まった。息がぴったりの彼らを観るのはとても気持ちが良い、いつまででも観ていたい。そうして画面に釘付けになっている間にセッションから繋がったのは12曲目「マイノリティ・リポート(darling, I love you)」、13曲目「何かが変わりそう」。
「何かが変わりそう」は、大好きなアルバム「Catcher In The Spy」からの一曲ということもあり、胸の高鳴りが最高潮だった。

『ふいに響く誰かの声 他でもない優しい声でした 「一人だけど 独りじゃない」 鮮やかに鮮やかに 涙がこぼれそうな夜だ』

重なる3人の歌声、星空を思わせるようなサウンド。部屋を暗くして観ていたこともあり、感動の波がザブンと押し寄せる。
 

感傷的になっていたら、前曲をなかったことにするような勢いのポップサウンドが響く。14曲目「10% roll, 10% romance」だ。冒頭から動き回る田淵の姿に、斎藤が笑ってしまう場面が目立つ。なんて温かい映像なのだろう、痛快なポップミュージックに乗せてユニゾン節が大炸裂だ。…なんて考えていたら続いて15曲目「Catch up, latency」、ポップに追い打ちをかけてくるスタイルだ。これでもかと言うほど幸せそうな笑顔を見せる3人の表情が全てを物語る、ライブを純粋に楽しんでいる姿が眩しい。

「純粋さは隠すだけ損だ」

その通り、そして有言実行である。
 

ライブもいよいよクライマックスに差し掛かってきた、ここでまさかの「crazy birthday」。メンバーのテンションも最高だ。間奏からマイクスタンドで暴れ回る田淵、最終的には斎藤の真下で寝ころびながら演奏するが、それを見て笑いながらも

「大正解 なんだか今日は 大正解 そんな気分だし」

と歌い上げる斎藤が大正解だ。
このライブを観ている全ての観客が笑顔になれた瞬間だろう。意図せずとも完全にエンターテイナーとしての位置を確立している3人に感服だ。
 

始まった瞬間に感じ取った、これがきっとラストだ。17曲目、「オーケストラを観にいこう」。最後はいつもどおりのレイアウトでの演奏だ。やり切ったと言わんばかりの3人の表情は、この上ないほどに綺麗だった。

「吐息も聞こえる10センチ ねえ僕の気持ちに気づいてるの?」

鼻の奥がツンとするような、胸の奥が痒くなるような切なさを孕む歌詞とメロディー。そして壮大なオーケストラサウンドが感情をかき回す。ラストにはぴったりの曲だ。新型コロナウイルス感染症の流行という非常事態においても、UNISON SQUARE GARDENが生きていて、音を奏でていてくれて、本当に良かったと心から思った。

ライブが終わり、次回のライブの宣伝画像が現れた。しばらくは余韻で頭が回らなかったが、ようやく落ち着いてきたと思った瞬間にパッと画面がライブ会場に切り替わり、斎藤が口を開いた。

「おまけ」

そう一言告げ、サプライズで始まったのは「Phantom Joke」だ。これは、もしかしたらリベンジなのかもしれない。前回の配信ライブで思うように歌えなかった斎藤が、特に苦戦していたように見えたのがこの曲だったのだ。それに気付いた私は応援したい気持ちがどっと溢れてしまい、じとっと画面に貼り付いて演奏を観ていた。いつも通り演奏は耳を疑うほど完璧、斎藤の声もしっかりと出ている。これぞプロ根性、脱帽だ。

「まだずっと愛していたい」

最後のフレーズを歌い切った時、安堵のため息が出てしまった。完璧だった、ありがとう。やっぱりUNISON SQUARE GARDENは私のヒーローだ。いつでも最高に格好いい。
 

ライブが終わって今回のライブを冷静に振り返ってみると、革新的なことばかりだった。配信ライブという不自由な形式にも関わらず、配信ライブの特性を活かした凝った演出が散りばめられていた点がなんとも素晴らしい。私はその柔軟さが何よりも衝撃的だった。確実に1回目のライブよりも進歩しているし、エンターテインメントとして確立されている。対面ライブの代替としての配信ライブではなく、配信ライブという新しいジャンルの音楽体験がここに誕生していたのだ。UNISON SQUARE GARDENとは、物凄くパワーを持ったバンドだなと、思い知らされた。どんな状況下でも、UNISON SQUARE GARDENは輝く完全無欠のロックバンドとして存在し続ける。私は今回のライブで、新時代の幕開けを観たような気分になった。音楽は終わらない、ロックバンドは生きている、信じたかった言葉が、信じられる言葉に変わった。ありがとう、UNISON SQUARE GARDEN。
彼らはきっと、これからも新未来を願う空前絶後のロックバンドとして、最高に格好良い音楽を鳴らし続けていくのだろう。その快進撃を見届けきった頃には、彼らが創った新時代の音楽の形が当たり前な世界になっているのだろうか。
絶望ばかりしていても仕方ない、音楽を止めずに走り続けてみよう。

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