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僕には何も残せないかもしれないけど

玉置浩二の歌う「野に咲く花」のように

この記事を、いま世界のあちらこちらで、いじめられている人、自分で自分をいじめてしまっている人に、何とか届けたいと願います。まだ自分が成熟してはいないゆえに、もしかすると共感してもらえる部分があるかもしれない。その微かな期待を胸に、キーボードを叩いています。

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<<こんな僕でも やれることがある>>

玉置浩二さんの楽曲「MR.LONELY」、そのワンフレーズだ。

この部分を聴くと涙がこぼれそうになる。それは「僕にも何かできるのかもしれない」という希望の溶けた涙であり、「僕にできることなんて本当にあるのだろうか」という疑いの混じった涙でもある。

できないこと、苦手なことを数え上げたらキリがない。僕は劣等感の塊のような人間だ。他人様に対してなら「短所は長所の裏返しだよ」などと、それらしいことを言える(あながち間違った考え方ではないと思う)。それでも、いざ自分を観察する段になると、本当に厭なところしか見えてこない。

あるいは、みんなそうなのかもしれない、なかなか自分のことを認められないという意味では、あらゆる生きものが孤独なのかもしれない。この世はミスター・ロンリーや、ミス・ロンリーであふれているかもしれない。

それでも(あらためて「それでも」と書く)、そういった一般論をこえて、僕は本当に、自信がない。<<笑って 元気でいる>>、ただ、それだけのことさえ難しい。

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学生時代、得意な教科は国語(作文)だけだった。英語や社会の成績も悪くはなかったけど、それは血がにじむほどの努力をしたからである、才やセンスのようなものは全く持たなかった。理数系科目の成績は壊滅的にひどかった。球技をやれば動きのぎこちなさをバカにされ、図画作品を親にまでこきおろされ、年を重ねるごとに(どういうわけか)歌がヘタになっていった。

何とかしてマトモな文章を書けるようになりたい、それしか自分がアカデミズムの世界で生き残る道はない、そう思って懸命に修行をしたけど、上には上がいるのが「その世界」である。栄冠には無縁の青春だった。

何かしらの成功体験がないと、若者が飛躍することは難しい(と思う)。負のスパイラルのなかで、みじめに、もがきつづけるだけで、青年期が終わってしまった。

学校の成績なんて社会に出たら関係ないよ、気にすることはないよ、そう言ってくれる人もいるかもしれない。でも社会に出てからは、ますます僕は(言葉がよくないかもしれないけど)落ちこぼれた。悪意ある人間は、相手に抵抗するアビリティがないと分かると、えてして増長するものだ。20代は金切り声で叱られたり、露骨な苛めに遭ったり、不当な扱いを受けたりしているうちに過ぎてしまった。

<<バカなやつだって 笑われたって 涙こらえて>>

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あなたが取り上げているのは「能力の不足」ばかりなのでないか、そんなものより大事なものが人間にはあるのではないか、そう言ってくれる人もいるかもしれない。たしかに僕も思うことがある、スキルよりはハートが大事なのだと。でも、それなら僕が「優しさ」や「誠実さ」といったものを備えているかといったら、相当に怪しい。ようやく「この世には優しさというものが、どうやらあるらしい」と実感できた程度のものだ。

優しくされなかった、いたぶられた、そんな20代のダメージを心身から抜き、ようやく出発点に戻るのに、30代のほとんど全てを費やしてしまったように思う。ゼロだ。マイナスではないだけいいのかもしれないけど、ゼロで40歳を迎えようとする虚しさは、恐らくは同じ境遇の人にしかご理解いただけないだろう。

いま僕は、若い人や幼い人を、褒めたり労ったり、時には諭したり思いとどまらせたり、そういうことができる中年でありたいと思っている。自分が過ごしたような少年期・青春期、そして青年期を、過ごしてはほしくないと願うからだ。しかしながら残念なことに、地位や発言力といったものは、僕にとって、あまりに縁遠いものである。そしてマイクを向けられたとしても、余計なことや間違ったことを口走ってしまいそうな気がする。

<<むだなことだって 言われたって かまわないから>>

そんな風に腹を括ることは、僕には難しい。「勇気」や「ポジティブさ」も備わっていないことになる。

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そういう僕に、何かを伝える権利が与えられているのだとしたら、結局のところ「それでも何とか生きてはいるよ」、それくらいしかないかもしれない。そして、そんな声が案外、若い人たちに、あるいは若き日の自分に届くのかもしれない。これほどに世渡りが下手でも、山のような課題を抱えていても、そして人間的に成熟していなくても、何とか生きて駄文を書いてはいる。

<<何もないけど 君のために 野に咲く花のように>>

僕は野草のような逞しさは持ち合わせていない、そして花のような美しさを備えてもいない、「君」に遺すべき財産を探し出すことも難しい。それでも生きてはいる。そして遅まきながら、「優しさ」という実体のないもの、それを宿した人と出会うことができた。それは僕が、仮にこの歳まで生きてはこなかったとしたら、果たせなかったことだ。だから敢えて偉そうなことを言ってみる、玉置浩二さんの歌詞を借りながら伝えてみる。

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<<むくわれないことが 多いだろうけど>>、いつか優しい人に巡り合うことを、あきらめないで下さい。いつの日かその胸に、優しさが芽生えるかもしれないことを、どうか忘れないで下さい。僕は「優しい人」ではありません、優しい人に出会えた人、それに過ぎません。もしかすると僕は、優しくなれないままに短い人生を終えることになるかもしれません。だから今、未成熟ではあるけれど今、バトンを手渡そうと思います。あなたと<<遠く離れていたって>>、それでも<<願いをこめて>>、この腕を伸ばします。受け取ってもらえるでしょうか、信じてもらえるでしょうか。

きっと何年か先、あなたは孤独ではありません。その「何年か」を、何とかして、やり過ごして下さい。がんばれはしなくても、走れなくても、それで、<<かまわないから>>。

※<<>>内は玉置浩二「MR.LONELY」の歌詞より引用

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