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2017年9月27日

アフターゼロ (20歳)
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佐藤千明のボーカルとしての最後の使命

赤い公園での最後のライブ「熱唱祭り」より

ライブが終ってからしばらくの間余韻に浸ることは多い。その日のライブの興奮や感動をライブのセットリスト通りに並べた音楽プレイヤーから蘇るのが自分のいつものパターン。それでもライブから1ヶ月ほど経った今でも、あの日のライブはすごかったと断言できる。
 

それは8月27日の赤い公園のライブである。この日のライブはVo.佐藤千明の脱退前のラストライブという特別なライブであった。私自身も初めてのライブではないのに普段とは違った緊張感があった。会場のZepp DiverCity Tokyoに入るとファン一同から佐藤千明へ向けた花が飾られており、最後の日ということを実感した。ライブの開始までの間も依然として緊張感はなくなっていなかった。刻々とライブ開始の時間が近づき、聞こえてきた佐藤による場内アナウンス。この時になって、この人の最後に涙は似合わないと思い泣かないと決めた。

そして始まった赤い公園の佐藤千明としてのラストライブ。新アルバム『熱唱サマー』の1曲目の”カメレオン”をホーン隊を加えて幕が開けた。1曲目から力強さ、独特の表現で歌詞を伝えてくれる佐藤千明の歌声がビシビシと刺さっていく。もちろんそれを際立たせるのはメンバーの演奏力の高さがあってこそ。ポップな曲調が印象的な曲から、この日の6曲目”西東京”から8曲目”絶対的な関係”までの3曲でも披露されたような、これぞロック!という曲まで、幅広い曲をやってのけるのが赤い公園の魅力だと思っている。その魅力はこれでもかと伝わった。

生で初めて聴いた”journey”は音源以上に響くものがあった。津野米咲から佐藤千明へと、そして佐藤千明と赤い公園から私たちへのメッセージなんだと思わずにはいられなかった。赤い公園に名曲がまた一つ増えたと言って間違いないだろう。
また、この日のライブはこれまでに見た赤い公園とは明らかに違った。観ている側の気持ち的なものももちろんあったとは思うが、いつも以上にメンバー4人が楽しそうに見えた。”勇敢なこども”でのメンバーそれぞれの歌声からも、そしてこの日の演奏全体を通しても終始楽しそうなのを見てこちらまで楽しくなる。

MCもほとんどなく一気に18曲を駆け抜け、ライブ開始から約80分が経過していた。ここでこの日初めてのMCが入ったことで我に返り、自分は今すごいものを見ていたんだと気づいた。MCでも4人でラストだからといって寂しさのようなものは微塵も感じなかった。

ライブも後半戦になると会場のボルテージをこれでもか!と上げ、会場全体で拳を突き上げたり、手拍子をしたりと盛り上がっていた。そしてある曲の歌詞が突き刺さる。

〈誰もが自分のことで/本当はいっぱいいっぱいなんだ/寂しさに負けそうになって明日がこわくて/それでも優しさを振り絞ってゆく〉
(KOIKI)

“KOIKI”で歌ったこの歌詞が全てのような気がした。津野米咲が作りあげた曲、歌詞を歌い手として咀嚼して自分のものにして歌い、曲に命を宿し続けてきた日々。

『思えば、津野の作る音楽を表現したい一心で、バンドで歌ってきましたが、そこに迷いが生じた以上、赤い公園のボーカルとしてステージに立つことはできません。』

(佐藤千明脱退発表コメントより一部抜粋)

このコメントからもボーカルとしての難しさ、生じてしまったズレが曲にどれだけの影響を与えるのかを知っているからこその決断だったのだろう。もしかすると、楽器をほとんど演奏することはせず、佐藤千明は歌い手という表現者として、本当にいっぱいいっぱいだったのかもしれない。

アンコールででてきた4人の顔からも寂しさはまだ感じられなかった。それよりは楽しさが圧倒的に勝っていたように思う。だからこそ”楽しい”では本当に楽しそうに歌い、演奏していたように見えた。もちろん見ているこちらもそれ以上に楽しんでいた。だからこそ、心の底から「楽しい!」と思っていたし歌ってくれていると感じた。そして赤い公園の佐藤千明として本当に最後の曲は”NOW ON AIR”。フロアに飛び込み歌い、終わったあとは全てを出し切ってたというような表情に見えた。エネルギッシュな佐藤千明らしい形でのラストだった。今後ライブを見た時にもうあの人がステージの中心にいることはないのかと思うと、実感がわかず今でも信じられない。

ライブ後は花束を受け取り、本当に終わってしまうのかという寂しさがようやくこみ上げてきた。本人は涙はなく、最後まで笑顔だった。実に佐藤千明らしい終わり方だった。それでも再びステージにでてきてくれることを望んで手拍子は鳴り止まず、何度も場内アナウンスで「本日の公演は全て終了致しました」と聞いたことか。それだけ多くの人に佐藤千明が、そして赤い公園が愛されている証拠だ。
 

この日のライブをもって佐藤千明は赤い公園を脱退した。まだ全く実感はないのだが、きっと次にライブを見たときに痛いほど感じるのであろう。ボーカルという存在だからなおさらである。寂しさはあるが、4人で歩き続けた時間が消えるわけではない。

〈日本中の耳に/異論のないグッドチョイスな/いなたいビートを/いつもありがと/この先もずっと〉 (NOW ON AIR)

最後に歌ったこの歌詞の通り佐藤千明が気持ちを込めて歌い上げた曲たちはこれからも色褪せることなく私たちの耳に、心に残り続ける。この先もずっと。

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